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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様
52、オリビアVSレオン2
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「そう。この古代魔法研究クラブなんだけど、もちろん今はメンバーが一人もいない。クラブとして認められるためには加入生徒が三名以上必要だから君たち二人の名前を貸してほしくて。僕の護衛たちは生徒じゃないから……」
レオンが少し困ったような表情でオリビアの顔を覗き込んだ。
彼に関わるのは良くないが、クラブに名前だけ貸すなら他のクラブからの勧誘も断りやすいし煩わしい思いをしなくていい。
さらには彼に恩を売ることができるのではないかと、頭の中でデメリットよりメリットが勝った。
「名前だけということでしたら構いません。ジョージもいいわね?」
「はい。お嬢様がいいならいいですよ」
「オリビア嬢、ヘマタイト君、ありがとう!」
オリビアとジョージの返事に、レオンは満面の笑みで喜びを表現していた。
そして「早速だけどこれに記入してね」と入部届を差し出した。オリビアはジョージと入部届にサインし、レオンに返す。
「これで入部決定だね。オリバー、急いで職員室に持って行って」
レオンが入部届を護衛のオリバーに渡すと「かしこまりました」と言って彼は外へ向かった。その背中を見送り、今度はオリビアに視線を移して微笑み、金色の簡素なつくりの鍵を手渡した。
「さあ、これで僕たち三人は古代魔法研究クラブのメンバーだ。あ、まずはこれ教室の鍵だから好きな時に使ってね。名前貸しの君たちは週に一回の会議の時だけ集まってくれればいいよ。これからよろしくね!」
「え? 週に一回?」
聞き捨てならない言葉にオリビアは思わず眉を顰めた。
クラブによっては毎日のところもあるが、ほとんどが週に二回程度のところがほとんどだった。これではあまり他のクラブと変わらない上に、毎週放課後に彼に質問攻めにされる可能性もあり不安だ。
そんなことを考えていると、レオンが何かを見透かすように小さく息を漏らして微笑する。
「来てくれるだけでいいから。仕事があるならこの部屋でしてくれて構わないよ。もちろん、お礼も考えているよ」
「お礼ですか?」
途端にオリビアの目が輝いた。商売をしているせいか損得勘定が働きやすく、得になりそうな話には食いついてしまう癖があった。貴族の令嬢としてはいささか恥ずかしい癖である。
「そう。オリビア嬢は王都でも店を経営したいんだよね? 王都での出店は貴族院の担当者が許可しないといけないんだけど、場所や出店内容によっては他の後ろ盾も必要になるんだ。けどアレキサンドライト家の後ろ盾は正式に結婚するまでは難しい。だから僕が友人としてその後ろ盾になるよ。それなら君の変わった趣向の飲食店なんかも王都のどこにでも出店できるはずだよ。どうかな?」
オリビアは大きなため息を吐いた。
お礼などと言いながらも、後ろ盾がないと執事喫茶などの奇抜な店舗は出店できないと脅されているのだ。
これで強制的にクラブ活動に参加するしかなくなった。彼の「お願い」はそのための罠だったのだ。
「わかりました。週に一回は参加いたします」
返事をするオリビアの唇は小さく震えていた。レオンは「よろしくね」と言って笑みを深めた。その余裕さえもオリビアには悔しくてしょうがない。
五歳年上の兄と対等の立場で店を経営し、領地の制度の見直しもして、部下の雇用についても様々な改革を行ってきた。その結果領地が観光地としても注目され始めた。自分も一人の商売人として、大人とでも充分に渡り合っていけると思っていた。
しかし今、王子とはいえ同級生に完全に負かされたのだ。この駆け引きにおいて、彼の方が一枚も二枚も上手だったことが本当に悔しかった。
>>続く
レオンが少し困ったような表情でオリビアの顔を覗き込んだ。
彼に関わるのは良くないが、クラブに名前だけ貸すなら他のクラブからの勧誘も断りやすいし煩わしい思いをしなくていい。
さらには彼に恩を売ることができるのではないかと、頭の中でデメリットよりメリットが勝った。
「名前だけということでしたら構いません。ジョージもいいわね?」
「はい。お嬢様がいいならいいですよ」
「オリビア嬢、ヘマタイト君、ありがとう!」
オリビアとジョージの返事に、レオンは満面の笑みで喜びを表現していた。
そして「早速だけどこれに記入してね」と入部届を差し出した。オリビアはジョージと入部届にサインし、レオンに返す。
「これで入部決定だね。オリバー、急いで職員室に持って行って」
レオンが入部届を護衛のオリバーに渡すと「かしこまりました」と言って彼は外へ向かった。その背中を見送り、今度はオリビアに視線を移して微笑み、金色の簡素なつくりの鍵を手渡した。
「さあ、これで僕たち三人は古代魔法研究クラブのメンバーだ。あ、まずはこれ教室の鍵だから好きな時に使ってね。名前貸しの君たちは週に一回の会議の時だけ集まってくれればいいよ。これからよろしくね!」
「え? 週に一回?」
聞き捨てならない言葉にオリビアは思わず眉を顰めた。
クラブによっては毎日のところもあるが、ほとんどが週に二回程度のところがほとんどだった。これではあまり他のクラブと変わらない上に、毎週放課後に彼に質問攻めにされる可能性もあり不安だ。
そんなことを考えていると、レオンが何かを見透かすように小さく息を漏らして微笑する。
「来てくれるだけでいいから。仕事があるならこの部屋でしてくれて構わないよ。もちろん、お礼も考えているよ」
「お礼ですか?」
途端にオリビアの目が輝いた。商売をしているせいか損得勘定が働きやすく、得になりそうな話には食いついてしまう癖があった。貴族の令嬢としてはいささか恥ずかしい癖である。
「そう。オリビア嬢は王都でも店を経営したいんだよね? 王都での出店は貴族院の担当者が許可しないといけないんだけど、場所や出店内容によっては他の後ろ盾も必要になるんだ。けどアレキサンドライト家の後ろ盾は正式に結婚するまでは難しい。だから僕が友人としてその後ろ盾になるよ。それなら君の変わった趣向の飲食店なんかも王都のどこにでも出店できるはずだよ。どうかな?」
オリビアは大きなため息を吐いた。
お礼などと言いながらも、後ろ盾がないと執事喫茶などの奇抜な店舗は出店できないと脅されているのだ。
これで強制的にクラブ活動に参加するしかなくなった。彼の「お願い」はそのための罠だったのだ。
「わかりました。週に一回は参加いたします」
返事をするオリビアの唇は小さく震えていた。レオンは「よろしくね」と言って笑みを深めた。その余裕さえもオリビアには悔しくてしょうがない。
五歳年上の兄と対等の立場で店を経営し、領地の制度の見直しもして、部下の雇用についても様々な改革を行ってきた。その結果領地が観光地としても注目され始めた。自分も一人の商売人として、大人とでも充分に渡り合っていけると思っていた。
しかし今、王子とはいえ同級生に完全に負かされたのだ。この駆け引きにおいて、彼の方が一枚も二枚も上手だったことが本当に悔しかった。
>>続く
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