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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様
57、リタの休日1(前編)
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「いい天気……」
早朝、オリビアの侍女リタは自室のカーテンを開けた。差し込む光に目を細め、窓を開けて朝特有の澄んだ空気を大きく吸い込んだ。王都の春は辺境のクリスタル領より暖かい。
「こんな日に休みをくれたオリビア様に感謝だな」
主人であるオリビアの言葉に甘え、朝の準備には顔を出さないことにしていた。いつもより一時間遅く起きたが、外にはまだ生徒は歩いていない。何人かの侍女が自分のお嬢様の元へ朝の支度に出かける時間だった。
リタはオリビアの専属で学院に連れてこられたため、女子寮の隣の侍女控え棟の一室に住んでいた。主人の暮らす寮の部屋よりはずいぶん狭いが、過ごしやすくて気に入っている。
いつも通りコーヒーとパンの簡単な朝食を済ませると、侍女の衣装ではなく町娘に見える服に身を包んだ。耳にはクリスタルをあしらった耳飾りをつける。
「そろそろか……」
そういって昨夜と同じように耳飾りに手を触れ、淡く光ったところでこの声を聞くであろう同僚へ話しかけた。
「おい、ジョージ。起きているか? 準備を済ませて三十分後には女子寮の前に行くんだぞ」
『リタ、お前まずは「おはようジョージ、いい朝ね」くらい言えないかね。準備は済んでるから安心しろ。俺なんて昨日は飲み屋にも娼館にも行かなかったんだぞ。感謝しろよ』
リタは同僚のジョージの言葉に、朝から眉間に皺を寄せ苛立ちを覚えた。自分の態度が悪かったことは棚上げし、さらに言葉を吐き捨てる。
「遅刻するなよ!」
『へいへい』
気怠そうな返事とともに同僚との連絡が途絶え、耳飾りの光も消える。リタは大きく息を吐き、コーヒーを飲んで気を落ち着かせた。
それから一時間ほど部屋で読書をした後、窓から女子寮を眺めると、自分で身支度を済ませたであろうオリビアが入り口から姿を現した。
金髪よりも希少な美しい銀髪が、陽の光を受け輝いていた。彼女は自分では結えない髪をなんとなく髪留めで誤魔化している。本当は駆け寄ってあの美しい銀髪を結いたかったがリタはぐっと堪えた。
オリビアがすぐに待っていた護衛の元へ駆け寄り、二人並んで校舎へ歩いて行くのを見届け、その背中に向かって深々とお辞儀をした。
「いってらっしゃいませオリビア様。良い一日を」
呟いてから、コーヒーカップや本を片づけ、リタは自室を後にした。
>>続く
早朝、オリビアの侍女リタは自室のカーテンを開けた。差し込む光に目を細め、窓を開けて朝特有の澄んだ空気を大きく吸い込んだ。王都の春は辺境のクリスタル領より暖かい。
「こんな日に休みをくれたオリビア様に感謝だな」
主人であるオリビアの言葉に甘え、朝の準備には顔を出さないことにしていた。いつもより一時間遅く起きたが、外にはまだ生徒は歩いていない。何人かの侍女が自分のお嬢様の元へ朝の支度に出かける時間だった。
リタはオリビアの専属で学院に連れてこられたため、女子寮の隣の侍女控え棟の一室に住んでいた。主人の暮らす寮の部屋よりはずいぶん狭いが、過ごしやすくて気に入っている。
いつも通りコーヒーとパンの簡単な朝食を済ませると、侍女の衣装ではなく町娘に見える服に身を包んだ。耳にはクリスタルをあしらった耳飾りをつける。
「そろそろか……」
そういって昨夜と同じように耳飾りに手を触れ、淡く光ったところでこの声を聞くであろう同僚へ話しかけた。
「おい、ジョージ。起きているか? 準備を済ませて三十分後には女子寮の前に行くんだぞ」
『リタ、お前まずは「おはようジョージ、いい朝ね」くらい言えないかね。準備は済んでるから安心しろ。俺なんて昨日は飲み屋にも娼館にも行かなかったんだぞ。感謝しろよ』
リタは同僚のジョージの言葉に、朝から眉間に皺を寄せ苛立ちを覚えた。自分の態度が悪かったことは棚上げし、さらに言葉を吐き捨てる。
「遅刻するなよ!」
『へいへい』
気怠そうな返事とともに同僚との連絡が途絶え、耳飾りの光も消える。リタは大きく息を吐き、コーヒーを飲んで気を落ち着かせた。
それから一時間ほど部屋で読書をした後、窓から女子寮を眺めると、自分で身支度を済ませたであろうオリビアが入り口から姿を現した。
金髪よりも希少な美しい銀髪が、陽の光を受け輝いていた。彼女は自分では結えない髪をなんとなく髪留めで誤魔化している。本当は駆け寄ってあの美しい銀髪を結いたかったがリタはぐっと堪えた。
オリビアがすぐに待っていた護衛の元へ駆け寄り、二人並んで校舎へ歩いて行くのを見届け、その背中に向かって深々とお辞儀をした。
「いってらっしゃいませオリビア様。良い一日を」
呟いてから、コーヒーカップや本を片づけ、リタは自室を後にした。
>>続く
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