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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

61、リタの休日1(後編)

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 一方、休日を堪能するべく街に出たリタは、オリビアへの土産品や何か商売に役立ちそうなものはないかと、雑貨店や食品店、薬店など様々な店をまわっていた。
 そして、侍女仲間に教えてもらった見目麗しい店員がいるカフェで昼食をとり、英気を養い、店を後にした。

(店員の見目麗しさはまあまあだったな。また来よう。さて、今度はあちらの店をまわるか……)

 昼食前にまわっていた方角とは反対方向へ歩き出す。すると、つま先に軽く何かが当たる感覚したのでリタは足元に目を向けた。

「リンゴ? どうして……」

 つま先に当たっているリンゴを手に取り首を傾げていると、前方から「すみませーん!」と茶色い紙袋を持った人物が駆けてくるのが見えた。

 そして、その人物は石畳につまずいて転倒し、一緒に地面に投げ出された紙袋からはリンゴが転がった。

 リタは自分の元に転がってきたリンゴを全て拾い、持ち主の元へ駆け寄った。
 落ちた紙袋を拾い、手に持っているリンゴをしまいながら座り込んでいる持ち主に声をかける。

「大丈夫ですか?」

「はい……。あ、あなたは……」

 リタを見上げた持ち主は目を見開きハッとした表情を浮かべている。
 リタも彼の顔を見て同じ表情になった。

 灰色の髪に同じ灰色の瞳の美青年。いや、まだ少年かもしれない。王都で小さな食堂を経営している、どこか儚げで見目麗しいマスター、エルだった。

 彼は助けてくれたのが顔見知りだということに、心なしか嬉しそうな安心したような柔和な笑みでリタに礼を述べた。

「リタ様ですよね? リビー様の侍女の……。助けていただきありがとうございます!」

「エル。先日はご馳走様でした。ケガはないですか?」

 リタの気遣いに、エルはゆっくりと立ち上がり膝や腕についた砂や埃を払ってからにっこりと微笑んだ。
 その人懐っこくて、まるで天使のような愛らしい笑顔に興奮して思わず叫び出してしまいたい気持ちを必死に抑え、平静を装う。

「はい! 擦り傷程度なので平気です! 今日はお買い物ですか?」

「はい。リビー様にお休みをいただきましたので、せっかくだからと王都の店を見てまわっています。エルは買い出しですか?」

「はい! アップルパイを作ろうと思ってて……。あ、リタ様、夕方少しお時間はありますか?」

「ええ、夜までに戻っていれば問題ないですから……」

「それじゃあ、後で僕の店に来てください! お礼と言ってはなんですが、アップルパイを作っておきますから!」

 リタの右手はエルの両手に包まれた。

 彼の体温が伝わり、緊張から左手に抱えていたリンゴの入った紙袋を落としそうになるが、なんとか堪えることができた。顔や耳が熱くなって、胸の鼓動がどんどん大きく聞こえ、うるさいほどだ。

 エルが上目遣いで「ね?」と言うと、もうそれに抗うことなどできるわけがなかった。リタは真っ赤な顔で「はい」と言って頷いた。

「それじゃあ、後ほど。待ってますねー!」

 リタから紙袋を受け取ったエルは笑顔で手を振り、自分の店の方へと歩いていった。リタは彼の姿が見えなくなるまで、うっとりとした表情で手を振り続けた。
 

>>続く
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