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第三章 アレキサンドライト領にて

78、感動の再会3

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 オリビアが笑顔で頷いて快諾すると、セオはこれまでの経緯をゆっくりと話しはじめた。
 その表情はうっとりとしていて、当時を思い出しているのだとリタにもよくわかった。彼は足の怪我の治療時からオリビアに心酔していた。

「足の怪我の治療のため、私はあのままクリスタル家に残ることになりました。その間、オリビア様は王都への引っ越しまで毎日、私の様子を見にきてくださいました。そして、私の今後についても相談に乗ってくださいまして……」

「ふふ。辺境の我が家ではお客様の長期滞在なんてめったにありませんから、セオには話相手になって貰っていたのです。実家がパン屋だと聞いて、いろいろ質問をしていました」

 小さく笑いお茶を一口飲むオリビア。リタはそれが主人の照れ隠しだと知っている。
 セオがひとり領地に残ると決まったとき、彼が不安にならないようにと彼女は毎日時間を作っては話しに通っていた。

「はい。どの道騎士団は退団しなくてはいけないので、実家の手伝いをしつつ仕事を探そうかと考えていたのです。すでに実家は兄が継いでいて人手は足りていましたから……。さらに兄の子供たちの中に病弱な者がおり、治療費も必要でした。焦る私を見て、オリビア様は素晴らしい提案をしてくださったのです」

「素晴らしい提案?」

 リアムの問いかけに、セオが嬉しそうに目を細め頷いた。

「はい。治療後、クリスタル家で従者として働かないかと声をかけていただきました」

「たまたま、人員を補充する予定だったのです。他の者と一緒に試験も受けてもらいました。合格したのはセオの実力ですわ」

「それでも、この身体ですから体術の試験は免除していただきましたし、ずいぶん優遇してくださったと感謝しています。それに、家族のことも……」

「家族?」

「はい。甥の病気は空気の澄んだ場所だと良くなると教えていただき、家族全員をクリスタル領に呼び寄せてはどうかと。しかもパン屋を任せてくださるとのことで……。静養のため一足先に甥を呼び寄せたのですが、体調を崩すことなく過ごしています」

「そうか……。それは良かった」

 リアムが小さく息を吐き安堵の表情を浮かべた。
 オリビアはたまたまとは言っているが実は内情は違った。
 クリスタル領では年に一度、屋敷や事業に携わる人間を募集し採用試験を実施する。領地で育った者が優先で、外部からはほとんど採用しない。
 しかも今年は学院入学のため、オリビア付きは募集しない予定だった。

 リタはオリビアが領主である父親に無理を言って彼女の専属を募集したこと、自分の持っている物件からパン屋の出店に適したところの選定、セオの家族の住まいの確保、彼の甥の治療について医師との相談、それらを全て引越し前に段取っていたことを知っている。

 自分やジョージももちろん協力したが、ほとんどはオリビアが実行したことばかりだ。

 セオもそれを察したのだろう。オリビアが王都へ引っ越す頃にはもう彼は命をも彼女に捧げる覚悟だった。自分も数年前に同じ覚悟したことをリタは懐かしく思った。

「オリビア様には言い尽くせない感謝でいっぱいです。このご恩は一生をかけて返していきたいと思っています」

>>続く
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