80 / 230
第三章 アレキサンドライト領にて
81、アレキサンドライト公爵家の人々2
しおりを挟む
オリビアはリアムと一緒に一歩前へ踏み出した。そして、リアムがすでに着席している家族たちに挨拶する。
「皆さん、お待たせしました」
「リアム! 久しぶりだな! 元気にしていたか?」
「はい。父上もお元気そうですね」
リアムの視線の先には彼と同じ赤い髪に髭を生やした男性がいた。
リアムの父でアレキサンドライト公爵家の現当主、リチャードだ。オリビアの父親より少し年上と思われる彼は、リアムと同様に端正な顔立ちをしていた。
彼は席を立ち、入り口にいるリアムとオリビアの方に向かって歩いてきた。
オリビアは慌ててリチャードの前に頭を下げ、ドレスの端を持ちあげ挨拶をする。
「アレキサンドライト公爵様。初めまして、オリビア・クリスタルと申します。本日はお招きいただき、誠にありがとうございます。以後、お見知りおきを」
「やあ、リアムの父のリチャードだ。顔を上げてくれないか?」
「は、はい……」
恐る恐る、オリビアが顔を上げると、そこにはリチャードが柔らかな笑みを浮かべていた。オリビアと目が合うと、彼はその茶色い瞳の目をさらに細める。
「オリビア・クリスタル伯爵令嬢。ようこそ、アレキサンドライト家へ。どうかここを我が家だと思ってくつろいでくれたまえ。いつか本当にそうなるのだから。こんなに可愛らしいお嬢さんがお嫁に来てくれるなんて楽しみだよ」
「え! お嫁に……」
オリビアは改めて婚約の先に結婚があることを意識して、顔が熱くなった。言い淀んでいたのが気になったのか、リチャードが不安そうにオリビアとリアムに視線を送る。
「あれ? 婚約を了承したと君のお父上から返事がきていたんだが……。リアム、もしかしてまだ交渉中か?」
「ちゃんとオリビア嬢から承諾は得ています。父上が初対面でいきなりいろいろ話すから、彼女は圧倒されてしまったんです。皆さんも、興味津々なのはわかりますが、ほどほどにしてくださいね」
リアムが父や遠くから身を乗り出してこちらの様子を見ている他の家族たちに向かって言い放つと、彼らは各々席に行儀よく座り直した。リチャードも肩をすくめ苦笑している。
「いやあ、私たちが勧めた見合いを毎回ダメにしていたリアムが自分から婚約したいと言ったお嬢さんだからね。私たちも嬉しいし、どんなお嬢さんなのか興味津々なんだ。驚かせてすまないね」
「い、いいえ。お気になさらないでください。こちらこそ緊張してしまいうまくお返事もできずに申し訳ございません」
「いいんだ。さあ、食事をしながらゆっくり話そう」
「はい!」
リチャードに促され、オリビアは用意された席についた。
隣にはリアムが座って優しい笑顔を向けている。そして反対側の隣には先ほどゲストルームで会ったサイラスが座っていた。
「さっきぶり、オリビアお義姉様」
「サイラス様、改めてよろしくお願いします」
オリビアはサイラスに笑顔で挨拶を返すと、それを見ていたリチャードが眉を上げこちらに注目した。
「おや、サイラスはもう彼女に会っていたのか?」
「はい。先ほど待ちきれずにゲストルームに会いに行きました」
「いつの間に。お前は本当にせっかちだな。よし、全員揃ったから料理をいただこう。まずはようこそオリビア嬢ということで、乾杯!」
リチャードが葡萄酒の入ったグラスを上げると、他の家族たちもグラスを上げ声を合わせた。オリビアも一緒にグラスを上げる。
「「乾杯!」」
大きなシャンデリアに白いクロスのかかったリフェクトリーテーブル。銀でできた食器や燭台。そして煌びやかな公爵家の面々に囲まれながら、オリビアのランチタイムが始まった。
>>続く
「皆さん、お待たせしました」
「リアム! 久しぶりだな! 元気にしていたか?」
「はい。父上もお元気そうですね」
リアムの視線の先には彼と同じ赤い髪に髭を生やした男性がいた。
リアムの父でアレキサンドライト公爵家の現当主、リチャードだ。オリビアの父親より少し年上と思われる彼は、リアムと同様に端正な顔立ちをしていた。
彼は席を立ち、入り口にいるリアムとオリビアの方に向かって歩いてきた。
オリビアは慌ててリチャードの前に頭を下げ、ドレスの端を持ちあげ挨拶をする。
「アレキサンドライト公爵様。初めまして、オリビア・クリスタルと申します。本日はお招きいただき、誠にありがとうございます。以後、お見知りおきを」
「やあ、リアムの父のリチャードだ。顔を上げてくれないか?」
「は、はい……」
恐る恐る、オリビアが顔を上げると、そこにはリチャードが柔らかな笑みを浮かべていた。オリビアと目が合うと、彼はその茶色い瞳の目をさらに細める。
「オリビア・クリスタル伯爵令嬢。ようこそ、アレキサンドライト家へ。どうかここを我が家だと思ってくつろいでくれたまえ。いつか本当にそうなるのだから。こんなに可愛らしいお嬢さんがお嫁に来てくれるなんて楽しみだよ」
「え! お嫁に……」
オリビアは改めて婚約の先に結婚があることを意識して、顔が熱くなった。言い淀んでいたのが気になったのか、リチャードが不安そうにオリビアとリアムに視線を送る。
「あれ? 婚約を了承したと君のお父上から返事がきていたんだが……。リアム、もしかしてまだ交渉中か?」
「ちゃんとオリビア嬢から承諾は得ています。父上が初対面でいきなりいろいろ話すから、彼女は圧倒されてしまったんです。皆さんも、興味津々なのはわかりますが、ほどほどにしてくださいね」
リアムが父や遠くから身を乗り出してこちらの様子を見ている他の家族たちに向かって言い放つと、彼らは各々席に行儀よく座り直した。リチャードも肩をすくめ苦笑している。
「いやあ、私たちが勧めた見合いを毎回ダメにしていたリアムが自分から婚約したいと言ったお嬢さんだからね。私たちも嬉しいし、どんなお嬢さんなのか興味津々なんだ。驚かせてすまないね」
「い、いいえ。お気になさらないでください。こちらこそ緊張してしまいうまくお返事もできずに申し訳ございません」
「いいんだ。さあ、食事をしながらゆっくり話そう」
「はい!」
リチャードに促され、オリビアは用意された席についた。
隣にはリアムが座って優しい笑顔を向けている。そして反対側の隣には先ほどゲストルームで会ったサイラスが座っていた。
「さっきぶり、オリビアお義姉様」
「サイラス様、改めてよろしくお願いします」
オリビアはサイラスに笑顔で挨拶を返すと、それを見ていたリチャードが眉を上げこちらに注目した。
「おや、サイラスはもう彼女に会っていたのか?」
「はい。先ほど待ちきれずにゲストルームに会いに行きました」
「いつの間に。お前は本当にせっかちだな。よし、全員揃ったから料理をいただこう。まずはようこそオリビア嬢ということで、乾杯!」
リチャードが葡萄酒の入ったグラスを上げると、他の家族たちもグラスを上げ声を合わせた。オリビアも一緒にグラスを上げる。
「「乾杯!」」
大きなシャンデリアに白いクロスのかかったリフェクトリーテーブル。銀でできた食器や燭台。そして煌びやかな公爵家の面々に囲まれながら、オリビアのランチタイムが始まった。
>>続く
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
65
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる