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第四章 ふたりは恋人! オリビア&リアム
101、オリビア、怒りの咆哮(後編)1
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「それって……リアム様とは婚約できないということでしょうか?」
リアムの言葉が聞こえはしたが、頭の中で状況を理解するのに時間がかかった。しばらく黙ったあと、自分で解釈し言葉にして彼に問いかける。
俯いていた深緑の瞳がオリビアを見つめた。いつもと違いその瞳は落ち着きなく揺れているように見えた。オリビアの心もそれに誘発されたようにざわつく。
「正式には……婚約保留なんだ」
「保留……ですか?」
オリビアは首を傾げた。数年に一度、複数の令嬢と婚約しようという不埒な輩がおり却下される場合はある。
しかし、オリビアとリアムのように双方合意の上での申し出に対し許可が降りないという事案は聞いたことがない。それに保留というのは過去一度も聞いたことがなかった。一体どういうことなのか。
その疑問についてはリアムの弟、サイラスが答えてくれた。彼は自分が今回の件の原因になったと思っているようで、俯いて鼻を啜っている。
「きっと僕のせいなんだ……ごめんなさい」
「サイラス様、どういうことでしょうか?」
「うん、僕、先週みんなと別れた後、友達の家に行ったでしょう?」
「そうでしたわね」
「それね、王宮なんだ。僕の友達って……レオン殿下なんだ。シャーロット姉さんがレオンのお兄さんのアイザック殿下と婚約してるし、歳も近いから昔から仲がいいんだ。オリビアお義姉様は学院で同じクラスなんでしょう?」
「はい……」
まさか、ここでレオン殿下の名前が出てくるとは。その上サイラスが彼を名前で呼んでいるのを聞いて、ふたりの仲の良さが窺えた。頷きながら、オリビアは話の続きを静かに聞く。
「それで、兄様が婚約するのが嬉しくて話しちゃったんだ。実は兄様が裏庭でプロポーズするのは予想していたから、あの日僕もこっそり裏庭にいて……覗いてて……」
「え! あれをですか?」
「うん。プロポーズするところも、兄様がお義姉様を抱き上げて……」
ゴホン! とサイラスの言葉を遮るようにリアムが咳払いをした。オリビアもそのシーンについては思い返せば恥ずかしいので触れないで欲しかった。
「サイラス様、とにかくあのとき裏庭にいたのはわかりました。それと今回の件がどう関わるのでしょうか?」
「そうだ、サイラス。本題を話してくれ」
オリビアはうまく余計なシーンは省いて本題へ誘導しようと促す。同じ気持ちであろうリアムも同調している。サイラスが頷いて話を続けた。
「それでね、僕もプロポーズのシーンとかいろいろ感動して……ついレオンにも話しちゃったんだ。そうしたら、レオンがある言葉に反応して……」
「ある言葉?」
「うん。何か外国の話をしていなかった?『遠いどこか、遥か彼方の異国』って。その話をしたら、レオンはそのことを詳しく知りたがったんだ。けど僕も遠くから見ていたから全部聞こえたわけじゃないし、答えられなくて……。その後も話はしたけど、レオンはなんだか上の空って感じだった。本当はその日は王宮に泊まって遊ぶはずだったのに『用事ができた』って言われてレオンはどこかに行ってしまった。僕はそのまま姉さんに会ってタウンハウスに帰ったんだけど……どうやら、そのときレオンは陛下に会っていたみたいなんだ」
>>続く
リアムの言葉が聞こえはしたが、頭の中で状況を理解するのに時間がかかった。しばらく黙ったあと、自分で解釈し言葉にして彼に問いかける。
俯いていた深緑の瞳がオリビアを見つめた。いつもと違いその瞳は落ち着きなく揺れているように見えた。オリビアの心もそれに誘発されたようにざわつく。
「正式には……婚約保留なんだ」
「保留……ですか?」
オリビアは首を傾げた。数年に一度、複数の令嬢と婚約しようという不埒な輩がおり却下される場合はある。
しかし、オリビアとリアムのように双方合意の上での申し出に対し許可が降りないという事案は聞いたことがない。それに保留というのは過去一度も聞いたことがなかった。一体どういうことなのか。
その疑問についてはリアムの弟、サイラスが答えてくれた。彼は自分が今回の件の原因になったと思っているようで、俯いて鼻を啜っている。
「きっと僕のせいなんだ……ごめんなさい」
「サイラス様、どういうことでしょうか?」
「うん、僕、先週みんなと別れた後、友達の家に行ったでしょう?」
「そうでしたわね」
「それね、王宮なんだ。僕の友達って……レオン殿下なんだ。シャーロット姉さんがレオンのお兄さんのアイザック殿下と婚約してるし、歳も近いから昔から仲がいいんだ。オリビアお義姉様は学院で同じクラスなんでしょう?」
「はい……」
まさか、ここでレオン殿下の名前が出てくるとは。その上サイラスが彼を名前で呼んでいるのを聞いて、ふたりの仲の良さが窺えた。頷きながら、オリビアは話の続きを静かに聞く。
「それで、兄様が婚約するのが嬉しくて話しちゃったんだ。実は兄様が裏庭でプロポーズするのは予想していたから、あの日僕もこっそり裏庭にいて……覗いてて……」
「え! あれをですか?」
「うん。プロポーズするところも、兄様がお義姉様を抱き上げて……」
ゴホン! とサイラスの言葉を遮るようにリアムが咳払いをした。オリビアもそのシーンについては思い返せば恥ずかしいので触れないで欲しかった。
「サイラス様、とにかくあのとき裏庭にいたのはわかりました。それと今回の件がどう関わるのでしょうか?」
「そうだ、サイラス。本題を話してくれ」
オリビアはうまく余計なシーンは省いて本題へ誘導しようと促す。同じ気持ちであろうリアムも同調している。サイラスが頷いて話を続けた。
「それでね、僕もプロポーズのシーンとかいろいろ感動して……ついレオンにも話しちゃったんだ。そうしたら、レオンがある言葉に反応して……」
「ある言葉?」
「うん。何か外国の話をしていなかった?『遠いどこか、遥か彼方の異国』って。その話をしたら、レオンはそのことを詳しく知りたがったんだ。けど僕も遠くから見ていたから全部聞こえたわけじゃないし、答えられなくて……。その後も話はしたけど、レオンはなんだか上の空って感じだった。本当はその日は王宮に泊まって遊ぶはずだったのに『用事ができた』って言われてレオンはどこかに行ってしまった。僕はそのまま姉さんに会ってタウンハウスに帰ったんだけど……どうやら、そのときレオンは陛下に会っていたみたいなんだ」
>>続く
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