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第四章 ふたりは恋人! オリビア&リアム

108、レオンの策略(後編)2

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 父の言葉を思い出しながら今後の展開について考えを巡らせる。すると、コンコンとドアをノックする音が聞こえ、レオンはドアに向かって「どうぞ」と声をかけた。

「失礼いたします」

「やあ、オリビア嬢。待っていたよ。空いている席に座って」

「はい……」

 レオンはオリビアに笑顔を向ける。彼女は苛立ちを表に出すまいと唇を固く結び、一番遠くの席についた。

「早速ですがレオン殿下、お話ししたいことがございます」

「ああ、君の婚約の件だね?」

 自分を必死に睨みつけながら、いつもより低い声で話を切り出すオリビアを、レオンは余裕の笑みで受け止めた。彼女の苛立ちがまた募ったのを感じる。
 しかし今回は彼女を怒らせることが目的ではない。立ち上がり、オリビアに向かって歩き出す。

「わかっているということは、やはり……! レオン殿下?」

 レオンはオリビアの席まで歩くと深々と直角に体を折り、頭を下げた。王族が軽々しく頭を下げるなど、公の場では許されない行為だ。頭上から自分の名を呼ぶオリビアの声も狼狽え、わずかに震えていた。

「本当に申し訳ない! 父が君たちの婚約をすぐに許可しなかったのは僕のせいだ!」

「レオン殿下、頭を上げてください!」

「こうする以外、君に誠意を伝える方法が思いつかない……。殴っても罵っても構わない、本当に申し訳ない……。」

 ガタガタと椅子の揺れる音がする。オリビアが慌てて立ち上がったのだろうとレオンは予想した。つかみは上々だ。しっかり頭を下げながら、レオンは状況を冷静に分析していた。

「レオン殿下……。まずは頭を上げて、事情をご説明いただけませんか?」

「ああ、ありがとう、オリビア嬢。僕の話を聞いてくれるんだね?」

「はい。一体どういうことなのでしょうか?」

 レオンは目に涙を浮かべながら、オリビアの隣の席に座った。オリビアも席についたタイミングで、自分の用意した話を展開し始める。

「実は、先日君とリアム・アレキサンドライトの婚約申し込みの書簡が父の元に届いた。それで僕は父に呼び出しされたんだ……ちょうど、リアムの弟サイラスが遊びにきていた日だ。彼とは昔からの友人でね」

「はい、サイラス様からもそう聞いております」

「そう……。あの日、僕はサイラスと別れ父の書斎へ行った。そこで君のことを聞かれたんだ。父は僕が君とダンスしたことを知っていた。誤解がないように年頃の令嬢とは踊らないことにしているのも知っている。どうやらそれで僕が君を想っていると勘違いしたみたいで……。君のことをどう思っているのか聞かれたよ」

「そうですか……」

「それで、僕も「素敵な女性で興味深いですが、彼女はすでに婚約予定だから手が届かない」と言ってしまったんだ。そうしたら父が「それなら一旦婚約を保留にするから君にチャンスをもらえ」と……。本当にすまない! 父にもそんなことしなくていいと言ったが聞き入れてもらえなかったんだ」

「そんな……」

 レオンは目の前でやや俯き瞳を曇らせているオリビアを見て、自分の話を信じてもらえたことに安堵する。第一段階はうまくいきそうだ。引き続き昨夜から考えていたセリフを口にする。

「二ヶ月……。二ヶ月、待ってくれないか」

>>続く
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