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第六章 事件発生
163、オリビアVSレオン最終決戦〜序章〜1
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週が明けて月曜日の朝、王宮内のレオンの部屋では彼が護衛のふたりに焦りを滲ませた声で指示を出していた。
「オリビア嬢との約束の日まであと二週間を切った。このままだと何の収穫もないまま彼女とリアムの婚約話が進んでしまう……。なんとかしなくては」
当初二ヶ月あったオリビアとリアムの婚約保留期間は気がつけば残り二週間となっていた。その間、トラブルはあったもののオリビアとは友人として親しくなり、彼女の警戒心を解くことに成功し、侍女リタの魔法も判明した。こうして狙いをオリビアに定めるに至ったが、もうゆっくり時間をかけることはできない。
「オリバー、ハリー、打ち合わせ通りに頼むよ」
「「はい。かしこまりました」」
「頼りにしているよ。さあ、行こう」
従順に頭を下げる護衛たちを促し、テーブルに置いていたクラブ棟の鍵を手にする。そして、レオンは美しいと称される金色の髪の毛をかき上げ、護衛たちが開けた部屋の出口に向かい歩き始めた。
「オリビア嬢、今度こそ君の正体を暴いてみせるよ」
一方、学院の寮ではオリビアが朝の支度に取り掛かっているところだった。リタに朝の身支度を任せながら、視線は彼女の唇に向いてしまう。
「オリビア様、どうかされましたか?」
「え、いいえ。なんでもないわ」
「そうですか……」
心配そうに自分を覗き込むリタから顔を逸らすオリビア。不可抗力かつ人命救助のためとはいえ、意中の相手と唇を重ねた彼女がずいぶんと大人に見えた。
「ねえリタ」
「はい、オリビア様」
「あなた、本当に覚えてないの?」
「なんのことでしょうか?」
リタが首を傾げる。オリビアはそれを白々しいとすら思った。
「エルとのことに決まっているじゃない」
「エルとのこと……!!」
リタが顔を真っ赤に染めている。オリビアはそんなときでもリタの唇から目が離せなかった。その視線の意味にも気づいたのか、彼女は少し顔を背けつつオリビアに反論する。
「もう、オリビア様! 覚えていませんしアレはそういうものではありません。エルはただ私を助けてくれようとしただけで深い意味などないのですっ!」
「まあ、そういうことにしておきましょうか」
「そういうことなのです!」
「はいはい」
ムキになっているリタをあしらいつつ、オリビアは寮を出てジョージと校舎に向かった。
「お嬢様、なんかぼーっとしてますね」
「そうかしら?」
オリビアはジョージに指摘されて、週末からずっとキスのことばかり考えていると気づく。あからさまにいつもと様子が違う自分が恥ずかしくなりごまかしてみたが、ジョージには通用しなかった。
「お嬢様、この前のこと考えているでしょう。エッチ」
「な、なによ! 私は別に……」
「なーに想像してたんだか」
口ごもらせながら頬を染め曖昧な返事をしたオリビアは、ジョージの表情が自分やリタをからかうときの不快なにやつきに変わるのを見て、彼に背を向け駆け出した。
「もう、ジョージ。そういうのは遠いどこか、遙か彼方の異国で『セクハラ』というのよ!」
「そんなこと言ったら最近のお嬢様なんて『パワハラ』ですからね!」
「なによ! 私のどこが……」
自分を追い越し意地悪な笑みを浮かべているジョージに顔をしかめ、オリビア小走りで校舎へ逃げていく彼を追いかけて走った。
>>続く
「オリビア嬢との約束の日まであと二週間を切った。このままだと何の収穫もないまま彼女とリアムの婚約話が進んでしまう……。なんとかしなくては」
当初二ヶ月あったオリビアとリアムの婚約保留期間は気がつけば残り二週間となっていた。その間、トラブルはあったもののオリビアとは友人として親しくなり、彼女の警戒心を解くことに成功し、侍女リタの魔法も判明した。こうして狙いをオリビアに定めるに至ったが、もうゆっくり時間をかけることはできない。
「オリバー、ハリー、打ち合わせ通りに頼むよ」
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「オリビア嬢、今度こそ君の正体を暴いてみせるよ」
一方、学院の寮ではオリビアが朝の支度に取り掛かっているところだった。リタに朝の身支度を任せながら、視線は彼女の唇に向いてしまう。
「オリビア様、どうかされましたか?」
「え、いいえ。なんでもないわ」
「そうですか……」
心配そうに自分を覗き込むリタから顔を逸らすオリビア。不可抗力かつ人命救助のためとはいえ、意中の相手と唇を重ねた彼女がずいぶんと大人に見えた。
「ねえリタ」
「はい、オリビア様」
「あなた、本当に覚えてないの?」
「なんのことでしょうか?」
リタが首を傾げる。オリビアはそれを白々しいとすら思った。
「エルとのことに決まっているじゃない」
「エルとのこと……!!」
リタが顔を真っ赤に染めている。オリビアはそんなときでもリタの唇から目が離せなかった。その視線の意味にも気づいたのか、彼女は少し顔を背けつつオリビアに反論する。
「もう、オリビア様! 覚えていませんしアレはそういうものではありません。エルはただ私を助けてくれようとしただけで深い意味などないのですっ!」
「まあ、そういうことにしておきましょうか」
「そういうことなのです!」
「はいはい」
ムキになっているリタをあしらいつつ、オリビアは寮を出てジョージと校舎に向かった。
「お嬢様、なんかぼーっとしてますね」
「そうかしら?」
オリビアはジョージに指摘されて、週末からずっとキスのことばかり考えていると気づく。あからさまにいつもと様子が違う自分が恥ずかしくなりごまかしてみたが、ジョージには通用しなかった。
「お嬢様、この前のこと考えているでしょう。エッチ」
「な、なによ! 私は別に……」
「なーに想像してたんだか」
口ごもらせながら頬を染め曖昧な返事をしたオリビアは、ジョージの表情が自分やリタをからかうときの不快なにやつきに変わるのを見て、彼に背を向け駆け出した。
「もう、ジョージ。そういうのは遠いどこか、遙か彼方の異国で『セクハラ』というのよ!」
「そんなこと言ったら最近のお嬢様なんて『パワハラ』ですからね!」
「なによ! 私のどこが……」
自分を追い越し意地悪な笑みを浮かべているジョージに顔をしかめ、オリビア小走りで校舎へ逃げていく彼を追いかけて走った。
>>続く
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