ヘタレαにつかまりまして

三日月

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SS(書き下ろし)

友達デート 22

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「僕は、大丈夫ですからぁ」


男性は、のんびりした樟葉の言葉にほっと肩から力を抜いた。
野次馬で集まっていた人間も、騒ぎが収まったのを見届けると散開。
対応に当たっていたスタッフも、頭を下げてその場を去っていく。


「そう言って頂けると助かります。
ありがとうございます、りゅう様」


男性は、もう一度樟葉に向かって頭を下げた。
リュウサマ?
樟葉の名前は、命だぞ?

礼をされた樟葉の顔が、一瞬で厳しいものに変わった。


「僕の名前は、命、ですよ」


普段の柔らかい話し方ではなく、突き放すような冷たさ。
こんな樟葉の顔は、初めて見る。


「・・・失礼しました、命様」


男性は、何故か冷ややかな表情。
先程まで樟葉にも頭を下げていた人間とは思えない。
まるで人が変わったような冷めた目で樟葉を見下ろしている。
言葉通り、謝っているというわけでは無さそうだ。
命は、真正面からその眼差しを受け止め一歩も引かない。
普段のおどおどした頼りなさが、全くなかった。

シン、とその場が静まり返る。
施設の賑やかなBGMは流れているし、客も流れ出しざわめきが戻っているのだが。
俺達の周りだけ、空間が切り取られたような錯覚。
息苦しい。


「・・・名前間違ってはるけど、みこちゃんの知り合いなん?」


三枝は、恐る恐る樟葉に声を掛ける。
こんな重苦しい雰囲気の中、凄いな!


「僕の知り合いじゃ、ないよぉ。
神社にね、関係してる人、だよね?」


語り口調が戻りかけたが、男性への言葉は冷たい刃を含んだもの。
だが、Ωをまともに相手にするαはいない。
男性は樟葉を相手にせず、俺に矛先をあっさりと変えた。


「申し訳ありませんが、お連れ様には三階のカフェテリアコーナーでお待ちいただいております。
是非、このあとお立ち寄りください」


それで話は終わったとばかりに背を向け立ち去っていく。


「助けて貰ってなんやけど。
なんか、態度悪い人やったなぁ」


三枝にしては、珍しい他人への厳しい評価。
俺も「そうだな」と同意。
だいたい、お連れ様って誰なんだ?
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