可愛いΩのナカセカタ

117 Ω

　番相手を求めるΩの発情期は、三ヶ月に一度、一週間程度続く。途中で終わらせるには、番を得るか、抑制剤を使用しなければならない。一人のαが相手をするには、長すぎる期間だ。記憶には残らなくても、他のαを連れてこられるのは、嫌だな。

　夏休みの宿題、数学や国語のテキストを埋めている背中を見ながら気持ちは沈んでいく。発情期が近づいたΩは、これから起こる自分の変化を思い気が沈む。

　嫌なことばかり考えてしまうな。

　手元の洗濯物を畳んでいた手が、すぐに止まってしまう。嫌なことは、考えるな。発情期が来てしまえば、記憶が飛ぶんだ。
　自分は、暴君に抱かれることだけ考えればいい。

　元々発情期にはいい思い出なんてひとつもない。初めての、予測も出来ずに訪れた発情期は、同期のαだった訓練生をフェロモンレイプ。周りのβが力付くで引き剥がさなければジムにもいられないところだった。

　あのΩ狩りに合うまでは、発情期が近づくと部屋に内側からも外側からも施錠。番避けを首につけ正気に戻るまで籠っていた。

　自分の意志に関係無く、無差別にαを求めてしまう発情期。強いαに抱かれたいと自覚した今、このΩの習性は自分にとって残酷過ぎる。