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26 体育祭 side 翔

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「あれな、めっちゃ可愛いやろ?
女の子達がな。
昼休みに、みこちゃんの番の芝浦君を囲んでな。
ジャージを奪ってみこちゃんに着せてんで。
芝浦君、わけわからへんって顔してたけどあれは断れへんわ」

「こらこら、渡君、言い過ぎ!
桂木君に、追い剥ぎする先輩って誤解されちゃうじゃない。
私達、奪ってなんかないわよ?
ちょっと作戦に必要だからってお願いして、ちゃんと同意を得て借りただけだからねっ」


三枝先輩がクスクス楽しそうに話していたら、背後から伸びてきた手にその頭を軽く叩かれていた。
叩かれても、三枝先輩は楽しそうに笑っている。
俺も三枝先輩と目が合って、つられて笑ってしまった。


「あのワンピに見えてしまうビックサイズが、みこたんの可愛さを更に引き立てて敵の攻撃を完全にガードしてるのよ。
私達の作戦勝ちよね」

「学園祭は、別の方向から攻めなきゃね!
あぁ~、早く帰ってラフ画を書きたいっ
みこたんってば、こんなに可愛いのをなんで今まで隠していたのっ」


三枝先輩の周りに座っていた女子生徒は、コートの中で決して強くは投げられていないボールから樟葉先輩の精一杯で逃げている姿にうっとり。

クラスメートとして応援していると言うより、樟葉先輩の動きを目で追い和んでいる。
俺が、さっきまでクラスの応援をしていたときとは随分雰囲気が違う緩さがあった。

クラスメート以外の、コートを取り囲む生徒の男女比率は圧倒的に女子生徒が多い。
その全員が、懐かしむような、憧れを含んだ眼差しを樟葉先輩に向けている。
どうやら、昔あのアニメを見たことがある女子がこのコートの周りに集まっているみたいだ。

正直、俺の中の樟葉先輩の印象は薄い。
顔もいつも前髪で隠れていて、誰かの影に引っ込んでいるようなイメージしかなかった。
こんな人だったんだなと、改めてその容姿を目にしている。

三枝先輩や桜宮先輩とお揃いの番避けをしているΩで、三枝先輩ととても仲が良い。
あとは、菊川生徒会長の群れの一員、くらいしか前情報はなかった。
他のメンバーに目が行きすぎて、樟葉先輩の存在はいつも霞んで埋没していたんだ。
一年生の男子の間で、話題になる先輩ではなかったし。

そんな樟葉先輩が、今は誰よりも注目の的だ。
ボールが当たっていないのに、なにもないところで躓いて畳の上に膝をつくと、四方から「がんばってっ」と声援が飛ぶ。
敵のクラスが、一番内野で動きの遅い樟葉先輩を狙い撃ちしようとしただけで悲鳴が上がる。
樟葉先輩にボールが回ると、敵味方関係なくハラハラと見守るからコート内の動きが止まってしまう。

・・・これって、試合と言えるんだろうか?

外野にいる桜宮先輩だけが、冷静にボールを処理して相手の内野を減らしていた。
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