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30 学園祭 side 陸
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「この空ちゃんにはわかんないのに、兄ぃにはわかるってことは・・・相当弱いんだね。
6時過ぎからここにずーっと居るけど、全然わからなかったし。
あと、発情フェロモン漂わせたΩが近くを通ってたら、自覚より先に身体が反応してもおかしくないもん。
きっと、まだ発情期には時間があるんだよ。
他のαに気づかれる前に、兄ぃ、絶対に見つけなよっ」
俺の右手を両手で握りしめた空は、息がかかる至近距離まで顔を近付けてきて背中を押してくる。
まるで自分のことのように嬉しそうだ。
俺が諦めきれていないことを知っていたのもあるが、同じ特化型に生まれたαとして、自分のΩがどれくらい特別で番にすることを熱望するものなのか痛いくらいにわかるからだろう。
周りに配慮して声を抑えても、興奮しているからフンフン鼻息が荒い。
対する菊川が、まるで何事もなかったかのように手元の資料をパラパラ捲りだしたのと対照的だ。
「おい、菊川、聞こえてんのかよ?」
「あぁ、聞いてるし理解した」
あっさり言ってのけてるが、これは俺にとってどれくらい重要か全然わかってねーだろうっ
「じゃぁ、俺は学園祭から抜けて探すからな」
「却下」
「・・・」
・・・はぁ?!
菊川は、俺の特性を理解して群れに受け入れてくれた。
それに、あれだけ自分の番、かなちゃんのことを大切にしてるんだからあっさり許可すると思っていた。
これは、予想外。
バッサリ容赦なく斬り捨てられ、咄嗟に声も出なかった。
今見失えば、次いつ会えるか。
他のαがいる前で発情期に入ったら、俺のΩが寝取られるんだぞ?!
なんで、学園祭を優先しなきゃならねぇんだっっ
怒りでヒクヒク口元が痙攣する。
あぁ、もう、群れなんかどうでもいい。
制裁を加えるってんなら、受けて立ってやる。
さっさと抜けて、俺はこの発情フェロモンを辿るぞ。
今にも見失いそうなくらい薄れた匂い。
校門の前を通り過ぎただけなのか。
それとも、学園の関係者なのか。
見かねた空が、菊川に自分と海が俺の分をカバーすると申し出たがそれも却下。
ふざけてんのか?!
「体育館張り付きの二人が、どうやって役目を兼任するっていうんだ?
笹部は、朝イチのここの見張りと最終の見回りだろう。
まぁ、どうしてもと言うなら見張りは免除しても人は足りてるが。
巡回の時間は、体育館じゃフィナーレと称して芝浦 凛のシークレットライブに入る。
それに、その後の終了宣言だってある」
「たかが学園祭だろうが。
俺にとっちゃ、一生の問題だっ」
そう吠えた内容に、菊川の目が平坦なものに変わる。
「たかが?」
俺の言葉を繰り返す菊川の、冷たく鋭く響く声。
いつも穏やかで、かなちゃん相手には甘ったるく話しかけてんのとは、別人。
つーか、別人格だな。
俺の手を握っていた空が、隣でカタカタ震え出す。
校門を行き来する生徒も、流石に菊川の異変に気付いて立ち止まる。
なんだよ。
そんなにマズイこと言ったかよ?
そう言い返してやりたいが、虚勢を張ることさえ出来ねぇ。
フェロモンを出してねぇのは、学園祭が始まる前に騒ぎを起こしたくねぇから。
だがそれも、かなちゃんの番として恥じないαでいたいだけ。
あぁ、これは俺がマズったんだな。
かなちゃん絡みの何か。
それに触れてしまったらしい。
6時過ぎからここにずーっと居るけど、全然わからなかったし。
あと、発情フェロモン漂わせたΩが近くを通ってたら、自覚より先に身体が反応してもおかしくないもん。
きっと、まだ発情期には時間があるんだよ。
他のαに気づかれる前に、兄ぃ、絶対に見つけなよっ」
俺の右手を両手で握りしめた空は、息がかかる至近距離まで顔を近付けてきて背中を押してくる。
まるで自分のことのように嬉しそうだ。
俺が諦めきれていないことを知っていたのもあるが、同じ特化型に生まれたαとして、自分のΩがどれくらい特別で番にすることを熱望するものなのか痛いくらいにわかるからだろう。
周りに配慮して声を抑えても、興奮しているからフンフン鼻息が荒い。
対する菊川が、まるで何事もなかったかのように手元の資料をパラパラ捲りだしたのと対照的だ。
「おい、菊川、聞こえてんのかよ?」
「あぁ、聞いてるし理解した」
あっさり言ってのけてるが、これは俺にとってどれくらい重要か全然わかってねーだろうっ
「じゃぁ、俺は学園祭から抜けて探すからな」
「却下」
「・・・」
・・・はぁ?!
菊川は、俺の特性を理解して群れに受け入れてくれた。
それに、あれだけ自分の番、かなちゃんのことを大切にしてるんだからあっさり許可すると思っていた。
これは、予想外。
バッサリ容赦なく斬り捨てられ、咄嗟に声も出なかった。
今見失えば、次いつ会えるか。
他のαがいる前で発情期に入ったら、俺のΩが寝取られるんだぞ?!
なんで、学園祭を優先しなきゃならねぇんだっっ
怒りでヒクヒク口元が痙攣する。
あぁ、もう、群れなんかどうでもいい。
制裁を加えるってんなら、受けて立ってやる。
さっさと抜けて、俺はこの発情フェロモンを辿るぞ。
今にも見失いそうなくらい薄れた匂い。
校門の前を通り過ぎただけなのか。
それとも、学園の関係者なのか。
見かねた空が、菊川に自分と海が俺の分をカバーすると申し出たがそれも却下。
ふざけてんのか?!
「体育館張り付きの二人が、どうやって役目を兼任するっていうんだ?
笹部は、朝イチのここの見張りと最終の見回りだろう。
まぁ、どうしてもと言うなら見張りは免除しても人は足りてるが。
巡回の時間は、体育館じゃフィナーレと称して芝浦 凛のシークレットライブに入る。
それに、その後の終了宣言だってある」
「たかが学園祭だろうが。
俺にとっちゃ、一生の問題だっ」
そう吠えた内容に、菊川の目が平坦なものに変わる。
「たかが?」
俺の言葉を繰り返す菊川の、冷たく鋭く響く声。
いつも穏やかで、かなちゃん相手には甘ったるく話しかけてんのとは、別人。
つーか、別人格だな。
俺の手を握っていた空が、隣でカタカタ震え出す。
校門を行き来する生徒も、流石に菊川の異変に気付いて立ち止まる。
なんだよ。
そんなにマズイこと言ったかよ?
そう言い返してやりたいが、虚勢を張ることさえ出来ねぇ。
フェロモンを出してねぇのは、学園祭が始まる前に騒ぎを起こしたくねぇから。
だがそれも、かなちゃんの番として恥じないαでいたいだけ。
あぁ、これは俺がマズったんだな。
かなちゃん絡みの何か。
それに触れてしまったらしい。
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