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37 牙 side 渡

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俺の掌、腕、胸、陸と触れてるとこ全部から、俺の気持ちが伝わるように気持ちを込めて陸を抱きしめる。
陸も、おとんも、おかんも。
俺の知らへんとこで、俺が変異種Ωになってから悩んでくれてた。 
その悩んでくれてた時間分、今の俺はどれだけ幸せなんかちゃんと伝えようって思ってる。
何度も何度も繰り返し。
陸がもう分かったって観念するまで。
俺は陸のΩになれたこと、嬉しいんやでって。

だって、βやった俺が好きな人の番になれるなんて凄いことやん。
それは、運命の番って、魂で惹かれ合うαとΩの繋がりよりも俺の中では凄いことやねん。
たまたま巡り会えただけやなくて、俺がΩにならんかったら番になれへんかった組み合わせやねんもん。

陸がそういう血筋やなかったら。
俺がこの村に預けられへんかったら。
その引っ越しの日が陸のおる夏休みやなかったら。
おとんが転勤にならんかったら。
おじいちゃんがこの村に来てへんかったら。

そんなん、数えてたらきりがないくらい奇跡の連鎖。
運命の番以上の奇跡の番。

変異種Ωって、昔はほんまに嫌がられて怖がられてそうなった人が自殺することもあったらしい。
確かに、そんな人もおるんやろう。
でもな、俺は違うねん。
伝われ、伝われって抱き締めてたら、陸の手がおずおず背中に回って抱き返してくれた。


「陸のこと大好きや」

「・・・俺も、渡が好きだ」


嬉しくなって陸の頭にチュウ。
いっぱいいっぱい、伝われ、伝われ、俺の気持ち。
暫く陸と抱き合ってから、手を繋いで人生の分岐点、俺が変異種Ωになった場所へ向かった。



陸に川側を歩いて貰って、一緒に目的地向かって岸辺を下っていく。
川が増水したときに抉れてる際は、気を抜くと足を踏み外して川まで転がり落ちそうなくらい脆い。
雨でぐしょぐしょになってたんやったら、ひとたまりもないやろな。

やっぱり見てまうと怖いし、陸と繋がってる手に力を込めてどんなふうにそこに辿り着いたんか陸に話してもらった。
突然の豪雨って怖かったやろな。
外灯無いし、真っ暗やったんちゃう?
そんな中、俺を岸まで上げようとしてくれたり、服を絞った方がえぇとか思いついたり。
同い年やのに、陸って昔から凄かったんやなぁ。

テクテク歩いていくと、目の前に一際大きな木が見えてくる。
陸が話してくれた川面ギリギリに伸びた枝ってあれのことかな。
今は増水してへんから離れてるけど、この木の枝だけ川の方に何本も太くて立派な枝を伸ばして大きくなってた。
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