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神宮寺家の当主
足元の光が途切れ、空間を渡る暗闇から現世へ肉体と精神がスライドされる。
慣れるまでは平衡感覚が狂ってしまい、立っていられずに倒れるものもいる。
鬼走りは、時空をねじ曲げる捕縛師の移動手段だ。
地面が、背景が、一変する。
鬼走りの終点。
着いた先は。
お師匠様の住処でも有り、私の修行場でもあった御山という予想は裏切り・・・
「やあ、彰ちゃん待ちくたびれたよ~」
そこは十二畳ほどの座敷。
床の間にも物がなく、どこかガランとした印象。
けれど。
この部屋には不釣合いなほど、華がある容姿と間延びした声で出迎えたのは。
座敷の上座中央で寛ぐ御方。
扇子をヒラヒラと遊ばせながら、ふんわりと微笑み。
赤銅色の髪も、ふわふわ揺れてるこの男性は。
神宮寺家を統べる現当主、ですよね?
普段、師匠の代わりに年に一度の挨拶に伺っているものの。
ずらずらと前には先輩の捕縛師が座られていて。
実際には、頭と頭の隙間からちらちらとしか見たことありませんけど。
あ、あきちゃんって??
聞き間違い???
「お待たせ~」
パチンッ
二人の手が目の前で重なる。
蹴落とした前当主の愛娘とハイタッチ、している。
どころか。
ハグしてるぞ!
いや、膝でお姫様抱っこまで始めたぞ!
言葉を無くし、とりあえず視線を座り込んだままの瑠璃丸の旋毛にずらした。
この二人・・・敵同士だと、思い込んでいた。
年に一度の挨拶の場でさえ。
前当主派が現当主をどう蹴落とすか。
未だに画策している雰囲気を隠す気もなく、ギスギス感丸出しだし。
初めて見た。
二人が同じ場にいるところ。
そして、まさかのこの状況。
ハイタッチで、ハグで、お姫様抱っこって・・・
お師匠様相手に、こんなこと誰が想像できた?
いやいや、目の前にしても、信じられない。
絶対、他の人は知らないはずだ。
前当主派の人から、事あるごとに、お師匠様を次当主に推薦したいから説得しろと私はガンガン責められてるんだから。
なのに。
現当主と、なんで、そんなに、いちゃいちゃしてるんですか、お師匠様??
5年前、突如当主争いに名乗りを上げ、一族を真っ二つに分けたいろいろの元凶だった現当主。
それまで、当主はほぼ世襲制。
平和的に、計画的に、代々お師匠様の本家かその分家辺りが、形式だけの『鬼比べ』を立候補者を数合わせで集めて取り仕切っていた。
いわば、出来レース。
それを突然、戦線にも立たないアイテム作り担当の技術者が名乗りを上げ、優勝。
『鬼比べ』は、捕縛師が契った元鬼である契り鬼の能力を競わせ、勝敗を競う。
捕縛師の許容量にもよるけれど、鬼との契りは無限じゃない。
許容量を超えると、捕縛師自身が『鬼落ち』・・・鬼になる。
最大数は、一角なら8体、二角なら3体、三角なら2体が常識化していた。
前当主、上野 良治(うえの りょうじ)さんは、元一角を3体と元三角を2体。
他の捕縛師より数で圧倒、元鬼の能力も高く、顔見せだけで長年相手に敗北宣言をさせていた。
いつもそれの繰り返し。
だから、五年前の『鬼比べ』
はじめは現当主であるリアンさんの快進撃に、観客は刺激されて楽しんでいる節もあった。
けれど、徐々に立候補者同士の総当りで『鬼比べ』を進めるうちに。
異変に気づく者が出始める。
元一角5体だけで、ぎりぎり勝ち進んでいるように見えたリアンさん。
その契り鬼が、毎回違うと会場がざわめきだす頃に。
時を見計らっていたとしか思えないタイミングで。
5体から10体、10体から20体・・・
神宮寺一族の常識を覆し、その数を膨らませ。
顔見せだけで、残り候補者から敗北宣言を得ると。
ついに最終戦。
当主への挑戦で、百体以上の元一角をその場に出して見せたのだ。
前当主は、烏合の衆だとそのまま戦いを挑み。
容赦なく、瞬殺。
観客席を埋め尽くした捕縛師の前で。
自分の鬼を叩きのめされ、敗北を認めざるを得なくなった。
その頃には、会場中が静まり返り。
それ以降、『沈黙の鬼比べ』と今でも語りづかれている。
慣れるまでは平衡感覚が狂ってしまい、立っていられずに倒れるものもいる。
鬼走りは、時空をねじ曲げる捕縛師の移動手段だ。
地面が、背景が、一変する。
鬼走りの終点。
着いた先は。
お師匠様の住処でも有り、私の修行場でもあった御山という予想は裏切り・・・
「やあ、彰ちゃん待ちくたびれたよ~」
そこは十二畳ほどの座敷。
床の間にも物がなく、どこかガランとした印象。
けれど。
この部屋には不釣合いなほど、華がある容姿と間延びした声で出迎えたのは。
座敷の上座中央で寛ぐ御方。
扇子をヒラヒラと遊ばせながら、ふんわりと微笑み。
赤銅色の髪も、ふわふわ揺れてるこの男性は。
神宮寺家を統べる現当主、ですよね?
普段、師匠の代わりに年に一度の挨拶に伺っているものの。
ずらずらと前には先輩の捕縛師が座られていて。
実際には、頭と頭の隙間からちらちらとしか見たことありませんけど。
あ、あきちゃんって??
聞き間違い???
「お待たせ~」
パチンッ
二人の手が目の前で重なる。
蹴落とした前当主の愛娘とハイタッチ、している。
どころか。
ハグしてるぞ!
いや、膝でお姫様抱っこまで始めたぞ!
言葉を無くし、とりあえず視線を座り込んだままの瑠璃丸の旋毛にずらした。
この二人・・・敵同士だと、思い込んでいた。
年に一度の挨拶の場でさえ。
前当主派が現当主をどう蹴落とすか。
未だに画策している雰囲気を隠す気もなく、ギスギス感丸出しだし。
初めて見た。
二人が同じ場にいるところ。
そして、まさかのこの状況。
ハイタッチで、ハグで、お姫様抱っこって・・・
お師匠様相手に、こんなこと誰が想像できた?
いやいや、目の前にしても、信じられない。
絶対、他の人は知らないはずだ。
前当主派の人から、事あるごとに、お師匠様を次当主に推薦したいから説得しろと私はガンガン責められてるんだから。
なのに。
現当主と、なんで、そんなに、いちゃいちゃしてるんですか、お師匠様??
5年前、突如当主争いに名乗りを上げ、一族を真っ二つに分けたいろいろの元凶だった現当主。
それまで、当主はほぼ世襲制。
平和的に、計画的に、代々お師匠様の本家かその分家辺りが、形式だけの『鬼比べ』を立候補者を数合わせで集めて取り仕切っていた。
いわば、出来レース。
それを突然、戦線にも立たないアイテム作り担当の技術者が名乗りを上げ、優勝。
『鬼比べ』は、捕縛師が契った元鬼である契り鬼の能力を競わせ、勝敗を競う。
捕縛師の許容量にもよるけれど、鬼との契りは無限じゃない。
許容量を超えると、捕縛師自身が『鬼落ち』・・・鬼になる。
最大数は、一角なら8体、二角なら3体、三角なら2体が常識化していた。
前当主、上野 良治(うえの りょうじ)さんは、元一角を3体と元三角を2体。
他の捕縛師より数で圧倒、元鬼の能力も高く、顔見せだけで長年相手に敗北宣言をさせていた。
いつもそれの繰り返し。
だから、五年前の『鬼比べ』
はじめは現当主であるリアンさんの快進撃に、観客は刺激されて楽しんでいる節もあった。
けれど、徐々に立候補者同士の総当りで『鬼比べ』を進めるうちに。
異変に気づく者が出始める。
元一角5体だけで、ぎりぎり勝ち進んでいるように見えたリアンさん。
その契り鬼が、毎回違うと会場がざわめきだす頃に。
時を見計らっていたとしか思えないタイミングで。
5体から10体、10体から20体・・・
神宮寺一族の常識を覆し、その数を膨らませ。
顔見せだけで、残り候補者から敗北宣言を得ると。
ついに最終戦。
当主への挑戦で、百体以上の元一角をその場に出して見せたのだ。
前当主は、烏合の衆だとそのまま戦いを挑み。
容赦なく、瞬殺。
観客席を埋め尽くした捕縛師の前で。
自分の鬼を叩きのめされ、敗北を認めざるを得なくなった。
その頃には、会場中が静まり返り。
それ以降、『沈黙の鬼比べ』と今でも語りづかれている。
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