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が、排気口から4階のエレベーター前に戻るとそこは乱闘騒ぎの真っ只中。
池内が孤高奮戦。
見覚えのある男四人相手に大立ち回りをしていた。
小柄な公安部エースは、身長差を諸共しない。
既に一人は廊下中央に倒され、血の気が溢れる雄叫びを上げて向かってきた男の頭を廊下の窓に冴え渡る蹴り一発でふっ飛ばしていた。
「だ、大丈夫ですかっ」
「あー、わりぃ。
カメラの見落としがあったみたいでさ」
池内は肩で息をするものの、大きな負傷を抱えている様子はない。
エレベーター前のスペースが狭いため、壁を背にした池内相手に、四人で一斉に襲い掛かることは出来なかったようだ。
三谷は、天井裏を移動中に慌てて出ていく気配は感じていた⋯すぐにそれが今の状況と結びつかなかったことに申し訳無いと平謝り。
自分がその時急いで戻れば、こんな足止めをして貰わずに一緒に逃げる事もできた筈だ。
起こったことは仕方ないだろうと、池内に「そんな場合じゃねぇ」と睨まれ、慌てて三谷も身構える。
二対三。
先に狙われたのは、体力を消耗している池内だった。
三谷が引き受けようと前に出たが、武術の心得がある男から止まっていたエスカレーターの中に引きずられてしまう。
エレベーターが閉まらないよう、三谷は上着を脱いで扉に噛ませながら男の拳を避けて反撃の様子をうかがう。
外では、池内が羽交い締めにされ正面から頭を消火器で殴打されていた。
三谷の視界に、咄嗟に目眩で動けない池内の首に散々手こずらせた礼だと初老の男の懐から出てきた注射器が刺さるのが見える。
「おいっ、やめろっ」
「メチャクチャ気持ちよくなる薬だぜ。
お前にも打ってやるぜっ」
目の前でせせら笑う男の腹を蹴り上げ、ひるんだ隙に腕を捩じ上げながら体重をかけて床に倒す。
男の肩がボキッと嫌な音を立て、その腕がダラリと伸びて悲鳴が上がったが知ったことか。
三谷は池内を守るため、即座に踵を返したが間に合わない。
池内の首に注入された薬が何か、注射器の保護材が針先から落とされた時点で三谷には匂いでわかってしまった。
開放された池内が、首を掻きむしり倒れる。
戦力外の池内に背を向け、エレベーターの中の三谷に襲いかかる二人。
絶望で動きが止まった三谷に喝を入れたのは、他ならぬ池内だった。
「マトリが、クスリに負けるかぁあっ」
根性で踏み止まり、背を向けた男目掛けて拾った消火器を投げつける。
薬による興奮状態で、力のセーブが効いていない。
投げつけられた男は転倒し沈黙。
驚いて振り返った男目掛け、全力のラリアート。
「ゲヘェッ」と奇声をあげた男は、白目を剥いて仰向けに倒れた。
「おい⋯無事か⋯?」
フラフラと三谷の前まで歩いて来た池内は、尋常ではない汗を全身から吹き出し呂律も怪しかった。
三谷は池内を抱き留め、止めどなく溢れそうになる謝罪の言葉を飲み込み歯を食いしばった。
死かΩか。
選択の時間は、この人に僅かも残されていない。
※ ※ ※
池内が孤高奮戦。
見覚えのある男四人相手に大立ち回りをしていた。
小柄な公安部エースは、身長差を諸共しない。
既に一人は廊下中央に倒され、血の気が溢れる雄叫びを上げて向かってきた男の頭を廊下の窓に冴え渡る蹴り一発でふっ飛ばしていた。
「だ、大丈夫ですかっ」
「あー、わりぃ。
カメラの見落としがあったみたいでさ」
池内は肩で息をするものの、大きな負傷を抱えている様子はない。
エレベーター前のスペースが狭いため、壁を背にした池内相手に、四人で一斉に襲い掛かることは出来なかったようだ。
三谷は、天井裏を移動中に慌てて出ていく気配は感じていた⋯すぐにそれが今の状況と結びつかなかったことに申し訳無いと平謝り。
自分がその時急いで戻れば、こんな足止めをして貰わずに一緒に逃げる事もできた筈だ。
起こったことは仕方ないだろうと、池内に「そんな場合じゃねぇ」と睨まれ、慌てて三谷も身構える。
二対三。
先に狙われたのは、体力を消耗している池内だった。
三谷が引き受けようと前に出たが、武術の心得がある男から止まっていたエスカレーターの中に引きずられてしまう。
エレベーターが閉まらないよう、三谷は上着を脱いで扉に噛ませながら男の拳を避けて反撃の様子をうかがう。
外では、池内が羽交い締めにされ正面から頭を消火器で殴打されていた。
三谷の視界に、咄嗟に目眩で動けない池内の首に散々手こずらせた礼だと初老の男の懐から出てきた注射器が刺さるのが見える。
「おいっ、やめろっ」
「メチャクチャ気持ちよくなる薬だぜ。
お前にも打ってやるぜっ」
目の前でせせら笑う男の腹を蹴り上げ、ひるんだ隙に腕を捩じ上げながら体重をかけて床に倒す。
男の肩がボキッと嫌な音を立て、その腕がダラリと伸びて悲鳴が上がったが知ったことか。
三谷は池内を守るため、即座に踵を返したが間に合わない。
池内の首に注入された薬が何か、注射器の保護材が針先から落とされた時点で三谷には匂いでわかってしまった。
開放された池内が、首を掻きむしり倒れる。
戦力外の池内に背を向け、エレベーターの中の三谷に襲いかかる二人。
絶望で動きが止まった三谷に喝を入れたのは、他ならぬ池内だった。
「マトリが、クスリに負けるかぁあっ」
根性で踏み止まり、背を向けた男目掛けて拾った消火器を投げつける。
薬による興奮状態で、力のセーブが効いていない。
投げつけられた男は転倒し沈黙。
驚いて振り返った男目掛け、全力のラリアート。
「ゲヘェッ」と奇声をあげた男は、白目を剥いて仰向けに倒れた。
「おい⋯無事か⋯?」
フラフラと三谷の前まで歩いて来た池内は、尋常ではない汗を全身から吹き出し呂律も怪しかった。
三谷は池内を抱き留め、止めどなく溢れそうになる謝罪の言葉を飲み込み歯を食いしばった。
死かΩか。
選択の時間は、この人に僅かも残されていない。
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