【完結】婚約破棄はブーメラン合戦です!

睫毛

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婚約破棄後の公爵令嬢

王子の反省

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『ジョバンニ、フェリッリ男爵令嬢とぶつかる。』
  (好みのタイプだったので、親切に手を貸す)

『何度か廊下でバッタリ出会い、親しく会話をするようになる。』
  (お互い名前で呼び合うようになる)

『知らない間に側近候補の令息達も、フェリッリ男爵令嬢を名前で呼ぶようになる。』

『ナディア嬢に苦言を告げられ、邪険に扱う。』

『ナディア嬢に対して冷たくし、フェリッリ男爵令嬢とは距離を縮める。』

『フェリッリ男爵令嬢とお忍びデートを繰り返し、婚約者用費用を使ってフェリッリ男爵令嬢にプレゼントを買う。』

『ジョバンニがナディア嬢を冷遇しだしたのをいいことに、側近候補達もナディア嬢を邪険に扱いだす。』

『フェリッリ男爵令嬢がナディア嬢にいじめられているとジョバンニ達に告げる。』
  (自作自演)

『ナディア嬢の言葉を全く聞かず、フェリッリ男爵令嬢の言葉のみを信じ、ナディア嬢を罵る。』

『公的な場でもナディア嬢をエスコートすらしなくなる。』


「…で、最終的には夜会で婚約破棄を言い渡す、だ」

「これは…っ!だが…!」

「何か間違ってるか?」

「…!」


 何かを言い返そうとするが、何も言い返せない。何故ならそのままの出来事を書かれているからだ。
 報告書を読んだ時もそうだが、文字にされると自分のしでかした事の馬鹿さ加減が露呈され、そしてそれを認めたくない自分が頭の中で否定し続ける。
 が、追い打ちをかけるようにエラディオは言葉を続けた。


「お前がフェリッリ男爵令嬢をどう想ってるのかなんて関係ない。王族としての自覚も責任感もなく、婚約者を蔑ろにした上に彼女の言葉を全く聞かず、浮気相手の甘言と嘘の報告を鵜呑みにし、結果大勢の前で婚約破棄だ。お前の正義なんてどこにもねぇだろ」

「……だが、ナディアも私に歩み寄らなかった…!」

「歩み寄る隙すら与えられてねぇんだぞ。お前はどこまで甘ったれだ」

「…!」

「これは俺が学園でのお前の行動をずっと監視していた、この国の暗部の報告書を簡単に書いたものだ。お前は自由気ままに振舞っていたようだが、そもそも王族が平民や下級貴族と一緒の学園に通える事がおかしいんだよ。ちょっと考えれば分かる事だ」

「…どういう意味だ」



 そう言われてジョバンニがエラディオに質問すると、エラディオは呆れたように溜息をつく。


「学園は王太子としての資質を試す最終試験場なんだよ」

「そんな…!そんな事、父上は一言も…!」

「言う訳ねぇだろ。監視されてない場所こそ本質が現れるものなんだ。お前が学園でも王族として自覚のある行動をしていれば、王太子の地位を剥奪されたりしなかったんだ。ナディア嬢の婚約破棄だけじゃねぇぞ。普段の振る舞いも全て含まれてる」

「なら私はいつ自由になれるんだ!こんな雁字搦めの生活で、私には心休まる暇なんてないじゃないか!」


 ドンッ!とテーブルを叩く。そしてそれを冷ややかに見たエラディオは、何の感情もないような冷たい声で呟いた。


「嫌なら王族をやめちまえ」

「なっ…」

「王族は行動全てに責任がかかる。そしてそれはお前が王になった時、お前の行動や考えが国民全体の生活や命に係わるんだ。覚悟のない奴は王になる資格はねぇよ」

「……」

「もっと現実を見るんだな。そして、その偏った頭じゃ王になった時に国が傾くぜ」

「……」


 それだけ言うとエラディオはナディアのクッキーを一つ口に放り込む。
 少し固くて甘さ控えめの、ナディアの失敗作のクッキーを食べながらジョバンニの様子を伺った。

 何かを考え込むジョバンニの表情は、さっきとは違い後悔が滲み出ているようにも見える。
 ここまで言われないと気付かないのは、やはり周囲の人間が彼を甘やかし、苦言を告げるナディアのような人達を遠ざけたせいでもあるだろう。

 そう考えれば同情しない事もない。


「ジョバンニ」

「…何だ?」


 名を呼ぶと視線だけこちらに向けたジョバンニの口に、無理やりクッキーを放り込んだ。


「ムグッ…なっ、何を…!」

「どうだ?ナディア嬢の手作りクッキーの味は」

「どうだと言っても…」


 口にねじ込まれたクッキーを手で掴み、じっと見つめる。そして無言でそれを口の中に放り込み、ゆっくりと咀嚼した。


「…固い。それに味が薄い」

「美味いだろ?」

「サブリナの方が上手だった」

「ホラ、それだ」

「…は?」


 指摘されてジョバンニが訝し気な顔をする。


「そうやって彼女の努力を一蹴するお前が、彼女に好かれるはずがねぇだろ」

「な…」


 嫌な指摘をされてジョバンニが絶句する。
 ずっとナディアは自分が好きなのだと思っていた。
 大変な王妃教育も、ジョバンニの為にしているのだと言っていた事があったからだ。
 それはナディアが自分を好だからこそ必死で努力しているのだと思っていた。

 それを告げるとエラディオに馬鹿にされるように鼻で笑われる。


「ばーか、んな訳ねーだろ。王命での婚約なんだぞ?ナディア嬢から破断にできねーんだし、頑張るしかねーだろが。例え自分に興味を持ってくれない婚約者だとしても、生涯添い遂げる相手なんだぞ。寄り添う努力をナディア嬢がしてもおかしくねぇよ。それよりもそんな彼女の努力の上に胡坐をかいて何もせず、挙句浮気して好き放題のお前をどうやって好きでいるんだよ」

「そ、それは…」

「そのクッキーと同じで、彼女は最初から何でも完璧にこなしてるんじゃねぇんだよ。何度も何度も努力して今の彼女があるんだ。なあジョバンニ。お前は6年間ナディア嬢の何を見て来た?彼女の何を知ってる?王子って立場に甘えてんじゃねぇよ」

「…!」


 もう何も言い返す事ができなくなったジョバンニは、その場にガックリと座り込む。
 それをチラリと見たエラディオは、もうジョバンニに視線を向ける事なくナディアのクッキーを食べだした。


「…部屋に戻る」

「ああ」


 しばらく座り込んでいたジョバンニは、憑き物が落ちたような顔をして部屋に戻っていった。
 閉じられた扉を無言で眺めていたエラディオは、最後のクッキーを口に入れる。


「これで響かなかったら、アイツはもう救いようがねぇな」


 ポツリと呟いた言葉は、誰に聞かれる事もなくエラディオの部屋で小さく響いて消えたのだった。


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