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公爵令嬢の婚約事情
女性を甘く見た男の末路2
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王妃がここまで冷たい視線を自分に向けてくるのは初めてだった。
なんだかんだ言ってもマティアスは国王の弟だ。
多少の不便さはあっても、小さい事で何かを言われる事もなかったのだ。
何しろマティアスは国王の補佐としての公務は完璧にしていた。
担当している外交でも、持ち前の社交性でうまくこなしていたし、他国での評判も良かった。
ただ、キャンディスに対してだけ不誠実だったのだ。
「コルト国王陛下に王妃陛下、これ以上は別室での方がよろしいのでは?」
会話の雲行きが怪しくなって来た頃合いで、フィリップ・フォン・サルトレッティ公爵が口を挟む。
「…そうですわね。陛下、マティアス、移動しましょう」
「うむ、そうだな」
「はい…」
項垂れるマティアスだったが、確かにこの場でこのまま会話を続けるのはまずい。
と言う訳でコルト国王に王妃とマティアスだけでなく、エラディオやフィリップも一緒に別室へと移動する事になった。
ちなみにジョバンニはまだ挨拶が残っているからと、別の侍従に連れ戻されてしまった。
本人は非常に嫌そうにしていたが。
侍従に案内され、広めの応接室へと案内された一同は、それぞれ席に着き沈黙していた。
そこへメイドがティーセットを用意し、全員の前にお茶を出す。
お辞儀をしてメイドが下がったのを確認し、ようやく王妃が口を開いた。
「貴方は女性を何だと思っているのかしらね」
王妃は溜息を付きながらつぶやく。
「我が息子が成人して結婚するまで貴方が独身でいないといけないなんて、陛下も私も言ったことはありませんよ」
「それは確かに言われませんが、国内での混乱を避けるために…」
「そんな事頼んでいないと言ってるの」
「な…」
パチン、パチンと扇子を開け閉めしながら王妃は呟く。
そして国王をチラリと一瞬だけ見たが、すぐにマティアスに視線を戻した。
「自分が結婚しない事の理由に私の息子を使わないでちょうだい」
「そんな言い方はないでしょう!?私にも王位継承権があるのですから、私が選ぶ相手によってはパワーバランスが崩れかねない…!だからこそ、慎重になるべきだと思い…」
「ならば何故モンセン伯爵家のご令嬢に手を出したの?」
「…!そ、それは…」
「誰とも添うつもりがないうちは、誰とも関わらないべきではないの?」
王妃の言ってる事は正論だ。
マティアスはぐっと手を握りしめ、唇を噛み締めた。
「貴方のやっていた事はただ自分の欲求を満たす事だけ。つまり自分の事しか考えていない、自己中心的な感情からの行動ね。
例えば秘密の恋人であったとしても、自分が結婚を考えた時にキャンディスを選ぶつもりだったのならいいでしょう。けれど…貴方は彼女を堪能した後、無常にも簡単に捨てたのです。その時の彼女の気持ちを考えた事はありますか?」
「し、しかしキャンディとは最初からお互い割り切った関係だと認識していました。だからこんな風に別れが来るのは当然で…」
「当然?何を馬鹿なことを言っているのかしら?責任の一つも取れない癖に」
「責任を取るような間柄ではなかったので…」
「黙りなさい!」
パシンと王妃が扇子を掌で叩くように閉じた。
その音にマティアスがわずかに目を瞠る。
「お前は伯爵令嬢を娼婦のように扱い、自分の都合で簡単に捨てたのです。その事についてモンセン伯爵に同じように説明できるのであればやってみなさい」
「え…」
モンセン伯爵はコルト国の軍事を担っている家系だ。
騎士団長をしているガブリエルとも懇意にしており、軍事総督の地位を持つ。
伯爵位でそこまでの地位を持っているのは、モンセン伯爵の実力もさることながら、伯爵夫人の母親が実は前コルト国王の叔母だと言うのも理由の一つだろう。
そういう背景から、実はマティアスとキャンディスは遠い親戚なのだ。
ちなみに、キャンディスのミドルネームが「D」である理由は、キャンディスの祖母の「デルフィーネ」の名前から取っている。
そういう訳でモンセン伯爵夫人の実家であるジェプセン公爵家の娘は全員「D」を名前に入れている。
キャンディスに姉妹はいないが、伯爵夫人には兄と姉と妹がいた。つまり、キャンディスの母や姉妹達には「D」の名前が継承されているのだ。
「デルフィーネ様の孫であり、モンセン伯爵が溺愛しているキャンディスにあのような扱い。許される事ではありません」
「え、いや、ちょっと待ってください。え、キャンディスがデルフィーネ大叔母様の孫…?」
「あら、知らなかったの?陛下は知ってましたわよね?」
「勿論知っている。だから私はマティアスはキャンディス嬢を選び、ゆくゆくは妻にするつもりなのだろうと思い何も言わなかったのだが」
「え…!?」
まさか、自分がコルト国の、しかも王族と関わりのある家系を知らないだなんて。
そんな事があっていいはずがない。
混乱する頭でマティアスがそう考えるが、まったく知らない情報だ。
そんなマティアスの様子を見てコルト国王が溜息をついた。
「…まあ、お前を庇う訳ではないが、デルフィーネ叔母上の降下先はジェプセン公爵家だと知っているだろうが、そのご令嬢…つまりモンセン伯爵夫人はそもそもジェプセン公爵家から他家に養女として移っていたからな」
「養女…」
キャンディスの母は確かマーレイ侯爵家の出身だ。確かにそう記憶している。
「マーレイ侯爵家はジェプセン公爵の姉君の嫁ぎ先だ。だが、子宝に恵まれずに苦労していたのだ。そこで、デルフィーネ叔母上が三人目の子供、つまりモンセン伯爵夫人を産んだ時にマーレイ侯爵家の養女として送り出したのだ」
「う、産まれたばかりの子供を…ですか?」
「勿論叔母上も頻繁にマーレイ侯爵家に足を運んでいたが、あまり大きくなってからでは別れが辛くなるからと、叔母上はそう言って子供を託したのだ」
つまり、周囲にはマーレイ侯爵夫人の産んだ子供として認識させていたと言う事だ。
不妊はあまり喜ばれる事ではない。しかも高位貴族の妻ともなれば、跡取りを産むことは必ず求められる。
何年経っても子供ができないマーレイ夫人は、悩んだ末に夫に離縁を申し出た。
だがマーレイ侯爵は夫人を愛しており、離縁も愛人も拒否した。
子供は授かりものだから、できなくても問題はない。
なんなら親戚から養子にもらえばいいと。
だからデルフィーネが手を挙げたのだ。
自分は沢山子供を産む。
三人目の子供を身ごもったら、その子を夫の姉夫婦の養子に出すので、心から可愛がって育ててほしいと。
そういういきさつでキャンディスの母はマーレイ侯爵家へと移籍された。
「こういう事は貴族の間ではよくある事だ。それに、モンセン伯爵夫人の出生については、叔母上が公にしないで欲しいと言っていたからな」
「ですがキャンディス本人は知っていますよ」
「まさか…」
「まあ、貴方に捨てられる未来があるのに、わざわざそんな事を話すはずもないでしょうね」
ここまでの話を聞いて、事の重大さに改めて気付かされた。
自分はとんでもない事をしでかしたと。
キャンディスは王家の血を引いているのだ。
そんな彼女を弄び、手酷く捨てた。
「わ、私は…何て事を……」
「ようやく気付いたのね。全く遅いのよ…。それに、相手がキャンディスでなくても、貴方がやらかした事は大変な事だと思いなさい」
「あ、兄上…申し訳ありません…」
「…まあ、私もお前がドルフィーニ国の公爵令嬢に求婚したいと言ってきた時に止めなかったのだ。ある意味同罪だ」
「陛下、それとこれとは別ですわよ」
「…すまん」
国王が王妃に申し訳なさそうに告げると、王妃も仕方がないと言った様子で溜息をついた。
そこへ、フィリップが口を挟む。
「発言をよろしいでしょうか?」
「うむ、サルトレッティ公爵。この場は遠慮なく申してくれ」
「ではお言葉通り遠慮なく…」
コホンと小さく咳ばらいをし、フィリップが姿勢を正す。
そしてマティアスに向き直りニッコリと笑顔を浮かべた。
「それで、この落とし前をどう付けるつもりですか、カイラモ大公殿下」
突然の発言にマティアスが目を見開く。
「落とし前…ですか?」
「ええ。我が娘に求婚しておきながら、あのような人目のある場所で元恋人とそのパートナーとの修羅場。ナディアを蔑ろにしていると言ってもおかしくない状況を作り、娘を公の場で辱めた落とし前ですよ。まさか何事もなかったようにできるとお思いではございませんよね?」
「え」
笑っているが、目が笑っていない。
そう、この顔は。
「うわー、親父殿…めちゃくちゃ怒ってるな」
「当然でしょう。娘はザクセン王弟殿下と婚約しているのですよ?それなのに自分達もと横やりを入れてきた癖に、前の恋人に未練たらたら等馬鹿にするにもほどがある。娘が許しても私は許すつもりはないですね」
エラディオが引き攣った笑みを浮かべると、当然だとフィリップは憤慨している。
そしてその様子を楽しそうに王妃が眺め、困ったように国王は溜息をついていた。
「サルトレッティ公爵、我が弟が大変な迷惑をかけた。弟本人は当然の事ながら、私からも謝罪させてもらいたい」
「いえ、陛下の謝罪は結構です。大公殿下には後程ナディア本人に謝罪していただきたい。そして二度とこのような事が起こらないよう、しかるべき措置をお願いいたします」
「分かった。マティアスには帰国後に早急に婚姻を結ばせ、妻以外の女性と関係を持つ事を禁止する」
「え…!?ちょ、ちょっと待ってください兄上!」
突然の国王の発言にマティアスはぎょっとして顔を上げる。
けれど国王は平然とした様子で、マティアスを静かに見つめて呟いた。
「何か問題があるのか?」
なんだかんだ言ってもマティアスは国王の弟だ。
多少の不便さはあっても、小さい事で何かを言われる事もなかったのだ。
何しろマティアスは国王の補佐としての公務は完璧にしていた。
担当している外交でも、持ち前の社交性でうまくこなしていたし、他国での評判も良かった。
ただ、キャンディスに対してだけ不誠実だったのだ。
「コルト国王陛下に王妃陛下、これ以上は別室での方がよろしいのでは?」
会話の雲行きが怪しくなって来た頃合いで、フィリップ・フォン・サルトレッティ公爵が口を挟む。
「…そうですわね。陛下、マティアス、移動しましょう」
「うむ、そうだな」
「はい…」
項垂れるマティアスだったが、確かにこの場でこのまま会話を続けるのはまずい。
と言う訳でコルト国王に王妃とマティアスだけでなく、エラディオやフィリップも一緒に別室へと移動する事になった。
ちなみにジョバンニはまだ挨拶が残っているからと、別の侍従に連れ戻されてしまった。
本人は非常に嫌そうにしていたが。
侍従に案内され、広めの応接室へと案内された一同は、それぞれ席に着き沈黙していた。
そこへメイドがティーセットを用意し、全員の前にお茶を出す。
お辞儀をしてメイドが下がったのを確認し、ようやく王妃が口を開いた。
「貴方は女性を何だと思っているのかしらね」
王妃は溜息を付きながらつぶやく。
「我が息子が成人して結婚するまで貴方が独身でいないといけないなんて、陛下も私も言ったことはありませんよ」
「それは確かに言われませんが、国内での混乱を避けるために…」
「そんな事頼んでいないと言ってるの」
「な…」
パチン、パチンと扇子を開け閉めしながら王妃は呟く。
そして国王をチラリと一瞬だけ見たが、すぐにマティアスに視線を戻した。
「自分が結婚しない事の理由に私の息子を使わないでちょうだい」
「そんな言い方はないでしょう!?私にも王位継承権があるのですから、私が選ぶ相手によってはパワーバランスが崩れかねない…!だからこそ、慎重になるべきだと思い…」
「ならば何故モンセン伯爵家のご令嬢に手を出したの?」
「…!そ、それは…」
「誰とも添うつもりがないうちは、誰とも関わらないべきではないの?」
王妃の言ってる事は正論だ。
マティアスはぐっと手を握りしめ、唇を噛み締めた。
「貴方のやっていた事はただ自分の欲求を満たす事だけ。つまり自分の事しか考えていない、自己中心的な感情からの行動ね。
例えば秘密の恋人であったとしても、自分が結婚を考えた時にキャンディスを選ぶつもりだったのならいいでしょう。けれど…貴方は彼女を堪能した後、無常にも簡単に捨てたのです。その時の彼女の気持ちを考えた事はありますか?」
「し、しかしキャンディとは最初からお互い割り切った関係だと認識していました。だからこんな風に別れが来るのは当然で…」
「当然?何を馬鹿なことを言っているのかしら?責任の一つも取れない癖に」
「責任を取るような間柄ではなかったので…」
「黙りなさい!」
パシンと王妃が扇子を掌で叩くように閉じた。
その音にマティアスがわずかに目を瞠る。
「お前は伯爵令嬢を娼婦のように扱い、自分の都合で簡単に捨てたのです。その事についてモンセン伯爵に同じように説明できるのであればやってみなさい」
「え…」
モンセン伯爵はコルト国の軍事を担っている家系だ。
騎士団長をしているガブリエルとも懇意にしており、軍事総督の地位を持つ。
伯爵位でそこまでの地位を持っているのは、モンセン伯爵の実力もさることながら、伯爵夫人の母親が実は前コルト国王の叔母だと言うのも理由の一つだろう。
そういう背景から、実はマティアスとキャンディスは遠い親戚なのだ。
ちなみに、キャンディスのミドルネームが「D」である理由は、キャンディスの祖母の「デルフィーネ」の名前から取っている。
そういう訳でモンセン伯爵夫人の実家であるジェプセン公爵家の娘は全員「D」を名前に入れている。
キャンディスに姉妹はいないが、伯爵夫人には兄と姉と妹がいた。つまり、キャンディスの母や姉妹達には「D」の名前が継承されているのだ。
「デルフィーネ様の孫であり、モンセン伯爵が溺愛しているキャンディスにあのような扱い。許される事ではありません」
「え、いや、ちょっと待ってください。え、キャンディスがデルフィーネ大叔母様の孫…?」
「あら、知らなかったの?陛下は知ってましたわよね?」
「勿論知っている。だから私はマティアスはキャンディス嬢を選び、ゆくゆくは妻にするつもりなのだろうと思い何も言わなかったのだが」
「え…!?」
まさか、自分がコルト国の、しかも王族と関わりのある家系を知らないだなんて。
そんな事があっていいはずがない。
混乱する頭でマティアスがそう考えるが、まったく知らない情報だ。
そんなマティアスの様子を見てコルト国王が溜息をついた。
「…まあ、お前を庇う訳ではないが、デルフィーネ叔母上の降下先はジェプセン公爵家だと知っているだろうが、そのご令嬢…つまりモンセン伯爵夫人はそもそもジェプセン公爵家から他家に養女として移っていたからな」
「養女…」
キャンディスの母は確かマーレイ侯爵家の出身だ。確かにそう記憶している。
「マーレイ侯爵家はジェプセン公爵の姉君の嫁ぎ先だ。だが、子宝に恵まれずに苦労していたのだ。そこで、デルフィーネ叔母上が三人目の子供、つまりモンセン伯爵夫人を産んだ時にマーレイ侯爵家の養女として送り出したのだ」
「う、産まれたばかりの子供を…ですか?」
「勿論叔母上も頻繁にマーレイ侯爵家に足を運んでいたが、あまり大きくなってからでは別れが辛くなるからと、叔母上はそう言って子供を託したのだ」
つまり、周囲にはマーレイ侯爵夫人の産んだ子供として認識させていたと言う事だ。
不妊はあまり喜ばれる事ではない。しかも高位貴族の妻ともなれば、跡取りを産むことは必ず求められる。
何年経っても子供ができないマーレイ夫人は、悩んだ末に夫に離縁を申し出た。
だがマーレイ侯爵は夫人を愛しており、離縁も愛人も拒否した。
子供は授かりものだから、できなくても問題はない。
なんなら親戚から養子にもらえばいいと。
だからデルフィーネが手を挙げたのだ。
自分は沢山子供を産む。
三人目の子供を身ごもったら、その子を夫の姉夫婦の養子に出すので、心から可愛がって育ててほしいと。
そういういきさつでキャンディスの母はマーレイ侯爵家へと移籍された。
「こういう事は貴族の間ではよくある事だ。それに、モンセン伯爵夫人の出生については、叔母上が公にしないで欲しいと言っていたからな」
「ですがキャンディス本人は知っていますよ」
「まさか…」
「まあ、貴方に捨てられる未来があるのに、わざわざそんな事を話すはずもないでしょうね」
ここまでの話を聞いて、事の重大さに改めて気付かされた。
自分はとんでもない事をしでかしたと。
キャンディスは王家の血を引いているのだ。
そんな彼女を弄び、手酷く捨てた。
「わ、私は…何て事を……」
「ようやく気付いたのね。全く遅いのよ…。それに、相手がキャンディスでなくても、貴方がやらかした事は大変な事だと思いなさい」
「あ、兄上…申し訳ありません…」
「…まあ、私もお前がドルフィーニ国の公爵令嬢に求婚したいと言ってきた時に止めなかったのだ。ある意味同罪だ」
「陛下、それとこれとは別ですわよ」
「…すまん」
国王が王妃に申し訳なさそうに告げると、王妃も仕方がないと言った様子で溜息をついた。
そこへ、フィリップが口を挟む。
「発言をよろしいでしょうか?」
「うむ、サルトレッティ公爵。この場は遠慮なく申してくれ」
「ではお言葉通り遠慮なく…」
コホンと小さく咳ばらいをし、フィリップが姿勢を正す。
そしてマティアスに向き直りニッコリと笑顔を浮かべた。
「それで、この落とし前をどう付けるつもりですか、カイラモ大公殿下」
突然の発言にマティアスが目を見開く。
「落とし前…ですか?」
「ええ。我が娘に求婚しておきながら、あのような人目のある場所で元恋人とそのパートナーとの修羅場。ナディアを蔑ろにしていると言ってもおかしくない状況を作り、娘を公の場で辱めた落とし前ですよ。まさか何事もなかったようにできるとお思いではございませんよね?」
「え」
笑っているが、目が笑っていない。
そう、この顔は。
「うわー、親父殿…めちゃくちゃ怒ってるな」
「当然でしょう。娘はザクセン王弟殿下と婚約しているのですよ?それなのに自分達もと横やりを入れてきた癖に、前の恋人に未練たらたら等馬鹿にするにもほどがある。娘が許しても私は許すつもりはないですね」
エラディオが引き攣った笑みを浮かべると、当然だとフィリップは憤慨している。
そしてその様子を楽しそうに王妃が眺め、困ったように国王は溜息をついていた。
「サルトレッティ公爵、我が弟が大変な迷惑をかけた。弟本人は当然の事ながら、私からも謝罪させてもらいたい」
「いえ、陛下の謝罪は結構です。大公殿下には後程ナディア本人に謝罪していただきたい。そして二度とこのような事が起こらないよう、しかるべき措置をお願いいたします」
「分かった。マティアスには帰国後に早急に婚姻を結ばせ、妻以外の女性と関係を持つ事を禁止する」
「え…!?ちょ、ちょっと待ってください兄上!」
突然の国王の発言にマティアスはぎょっとして顔を上げる。
けれど国王は平然とした様子で、マティアスを静かに見つめて呟いた。
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