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第1章 始まりの街『グリィト』
第15話 温かい目覚め
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チュンチュン、と小鳥が鳴く音が聞こえ、わたしは目を覚ました。
「……うぅ~ん」
ベッドからのそのそと起き、目をこする。
きっと今のわたしの両目は『3』のような形になっていることだろう。
すると、一匹の小動物がわたしのお腹に乗ってきた。
「起きたか、アイリよ」
「このもふもふ感は……モッフィ!」
白銀のもふもふ毛並みを披露するちっちゃな神獣、モッフィが傲岸不遜に言った。
わたしはモッフィの毛並みをもふった。
もふっ、もふっ。
もっふもっふもっふ。
もふもふもふもふもふ~~っ!
「こ、これ! あまり我の体をまさぐるでない! くすぐったいではないか!」
「ふふふ~、もふもふ最高~!」
素晴らしいもふり心地!
さすが『モッフィ』という名に相応しき、至高のもふもふ神獣だ!
モッフィのふわふわの毛並みをもふっていると、徐々に意識を覚醒してきた。
半目だった寝ぼけ眼が解け、しかと目蓋を開く。
「ハッ! そういえばこの部屋は……そうか。昨日はわたし、ベルドさんたちのお家にお邪魔させてもらったんだった!」
昨晩のことを思い出す。
グリィトの街の宿で部屋を取れず、危うく野宿確定ルートに直行しかけていたわたしに手を差しのべてくれた救世主が、ベルドさんたちだ。
余っていた空き部屋を一つ、仮設の寝室としてわたしに提供してくれたのだった。
とてもありがたいことだ。
ベルドさんたちに感謝していると、大事なモノを忘れていることに気付いた。
「いけないいけない。起きたらまずはコレだよね。――『神のサングラス』、召喚!」
わたしの手のひらに、ポンッと四角いレンズのサングラスが召喚された。
何の変哲もないただのサングラスのように見えるけど、これは女神アスティアーネ様の加護が付与された『神器』の一つ。
これがないと、感情の高ぶりによってわたしの『虹の魔眼』が暴発して、意図しないタイミングで大魔法を撃ち込んでしまう。
「寝る時は目を閉じてるから魔眼の暴発は起こらないし、単純に邪魔だったのもあって外してたけど、起きたらすぐに着けなきゃね。このサングラスがないと、最悪ベルドさん家をぶっ壊しちゃうかもしれないし……!」
わたしは『神のサングラス』をすちゃっと装着した。
かくして、『グラサン幼女』の誕生である。
多少の不便さはあるものの、わたしは早くも慣れ始めていた。
「昨日も実感したけど、やっぱりアラーム無しで朝目覚められることがこれほど幸福だとは~……! この幸せを享受」
社畜OLとしてブラック企業勤めをしていた前世は、こんな清々しい朝を送ることなんてなかった。
全く休まった気がしなかったし、寝起きからふらふらだったし。
あの時のブラック生活に比べたら、今はよほど恵まれた環境にいる。
ほとんどこの幼女ボディのおかげだけど。
「今日も一日頑張ろうね、モッフィ! 今日はちょっとチャレンジしてみたいことがあるんだ~!」
「うむ。今日も美味なパンを食すぞ!」
「ははは……モッフィは食い気の方が大事か」
赤と青の綺麗なオッドアイを隠すように怪しげなサングラスをかけ、ベッドからぴょんと降りる。
寝癖がついたゆるふわ金髪をささっと手櫛で直し、わたしは背伸びして部屋のドアノブをひねる。
そして、二階の寝室を出て、リビングへと降りていくのだった。
■ ■ ■
一階のリビングに降りると、人の気配があった。
すると、わたしの存在に気付いたらしい。
「アイリ、起きたのか。おはよう」
「おはよう、アイリちゃん!」
「……昨日は眠れたか?」
冒険者パーティのリーダーであるベルドさんを筆頭に、女魔法使いのジェシーさんとタンクのマーレスさんが挨拶をしてくれた。
ジェシーさんはニコニコ笑顔で手を振って、マーレスさんは伺うようにボソリと言った。
「み、皆さん! おはようございます!」
わたしは頭を下げて挨拶をした。
異世界野宿ルートから救ってくれたこの人たちには感謝しかない。
「寝室を貸していただきありがとうございました! それどころか、昨日は夜ご飯やお風呂にも入らせてもらっちゃって……!」
「はは、気にするな」
「そうよ! アイリちゃんはまだ子供なんだから!」
「遠慮なく、俺たちを頼るといい」
三人とも、優しい笑顔で言ってくれた。
なんだか、ジーンと心が温かくなる。
うぅ、人の優しさに触れることがこんなに嬉しいだなんて……!
ちなみにだけど、『グラサン幼女』であるわたしが降りてきてもベルドさんたちは驚かない。
なぜなら、昨日の内にベルドさん含め他二人のパーティメンバーにもわたしの『眼』のことを話しているからだ。
曰く、とある病気のためこのサングラスをかけて生活しているのだ、と。
若干嘘を混ぜてるのは心苦しいけど、わたしが『転生者』であることを明かすのは不味いかと思ってこの言い訳に落ち着いた。
「それよりもアイリ、グッドタイミングだぞ。ちょうど朝食ができたから、一緒に食べよう!」
「わあ! いいんですか!?」
「もちろんよ! アイリちゃん、私の隣で一緒に食べましょ! モッフィちゃんの分もあるわよ!」
「ほう、分かっておるではないか人間よ」
わたしはジェシーさんの隣の席に座る。モッフィは直接テーブルの上に飛び乗った。
そして、ベルドさんが慣れた手付きで朝食をテーブルに並べてくれた。
ロールパン、スクランブルエッグ、サラダ、スープなどなど、異世界っぽい洋風の朝食がテーブルを彩った。
そして、わたしたちは「いただきます」をしてから、朝食をとった。
わたしはロールパンをかじる。
「んん~、美味しい!」
スープもごくり。
むむっ! こっちはポトフみたいな感じで、薄味だけどたしかな旨味が混ざっていた。
朝はこういうあっさりした味付けが嬉しいね!
わたしの向かいの席に座るベルドさんが微笑んだ。
「そんなに美味そうに食ってくれたら作った甲斐があるな」
「だって、本当に美味しいので!」
「うむ。もくもぐ……まあ、悪くはないのぅ……もぐもぐ」
モッフィもそっけないセリフは吐いてるけど、ばくばくとパンやスクランブルエッグにがっついていた。
ひとしきり朝食を食べると、ベルドさんが言う。
「アイリ、今日は何か予定はあるのか?」
「ありまふっ!」
もぐもぐごっくん、とサラダとスクランブルエッグを飲み込んで、わたしは言った。
「今日は冒険者ギルドに行ってクエストを受けてみようかと思ってるんです!」
「クエスト、か」
「アイリちゃんはこんなにちっちゃくて可愛い女の子だから忘れそうになるけど、私たちと同じ冒険者なんだものね」
「……冒険者であればクエストで稼ぐのは当然、か」
ジェシーさんとマーレスさんはわたしの言葉を否定こそしないものの、やっぱり心配そうな顔をしていた。
ベルドさんもやや難しい顔をしているけど、パッと表情を変える。
「……そうだな! アイリにはモッフィもいるし、何よりアイリ自身も魔法を使える。高難度の魔物討伐依頼でも受けない限り、滅多なクエストで危ない目に遭うことは少ないか」
「はい! わたしも最初から難しいクエストに挑もうとは思ってないです! まずは初心者でも取り組めそうなクエストをやってみようかと!」
「それがいいな。ま、そもそも冒険者になりたてのアイリは高難度のクエストを受けさせちゃ貰えねぇと思うが」
ベルドさんたちは、モッフィがブラックアントという巨大蟻の魔物を瞬殺している様を目撃している。
だから幼女と神獣のことを全く知らない人よりもすんなりとわたしたちの実力を評価してくれる。
「でも、冒険者としてクエストをしに行くなら、最低限の準備は必要なんじゃないかしら」
「準備、ですか?」
ジェシーさんがカチャリとフォークを置いた。
そしてわたしに向き直り、わたしのちっちゃなお手手をぎゅっと握った。
「というわけでアイリちゃん! 今から一緒に『お洋服』を選びに行きましょう!」
……え、お洋服??
「……うぅ~ん」
ベッドからのそのそと起き、目をこする。
きっと今のわたしの両目は『3』のような形になっていることだろう。
すると、一匹の小動物がわたしのお腹に乗ってきた。
「起きたか、アイリよ」
「このもふもふ感は……モッフィ!」
白銀のもふもふ毛並みを披露するちっちゃな神獣、モッフィが傲岸不遜に言った。
わたしはモッフィの毛並みをもふった。
もふっ、もふっ。
もっふもっふもっふ。
もふもふもふもふもふ~~っ!
「こ、これ! あまり我の体をまさぐるでない! くすぐったいではないか!」
「ふふふ~、もふもふ最高~!」
素晴らしいもふり心地!
さすが『モッフィ』という名に相応しき、至高のもふもふ神獣だ!
モッフィのふわふわの毛並みをもふっていると、徐々に意識を覚醒してきた。
半目だった寝ぼけ眼が解け、しかと目蓋を開く。
「ハッ! そういえばこの部屋は……そうか。昨日はわたし、ベルドさんたちのお家にお邪魔させてもらったんだった!」
昨晩のことを思い出す。
グリィトの街の宿で部屋を取れず、危うく野宿確定ルートに直行しかけていたわたしに手を差しのべてくれた救世主が、ベルドさんたちだ。
余っていた空き部屋を一つ、仮設の寝室としてわたしに提供してくれたのだった。
とてもありがたいことだ。
ベルドさんたちに感謝していると、大事なモノを忘れていることに気付いた。
「いけないいけない。起きたらまずはコレだよね。――『神のサングラス』、召喚!」
わたしの手のひらに、ポンッと四角いレンズのサングラスが召喚された。
何の変哲もないただのサングラスのように見えるけど、これは女神アスティアーネ様の加護が付与された『神器』の一つ。
これがないと、感情の高ぶりによってわたしの『虹の魔眼』が暴発して、意図しないタイミングで大魔法を撃ち込んでしまう。
「寝る時は目を閉じてるから魔眼の暴発は起こらないし、単純に邪魔だったのもあって外してたけど、起きたらすぐに着けなきゃね。このサングラスがないと、最悪ベルドさん家をぶっ壊しちゃうかもしれないし……!」
わたしは『神のサングラス』をすちゃっと装着した。
かくして、『グラサン幼女』の誕生である。
多少の不便さはあるものの、わたしは早くも慣れ始めていた。
「昨日も実感したけど、やっぱりアラーム無しで朝目覚められることがこれほど幸福だとは~……! この幸せを享受」
社畜OLとしてブラック企業勤めをしていた前世は、こんな清々しい朝を送ることなんてなかった。
全く休まった気がしなかったし、寝起きからふらふらだったし。
あの時のブラック生活に比べたら、今はよほど恵まれた環境にいる。
ほとんどこの幼女ボディのおかげだけど。
「今日も一日頑張ろうね、モッフィ! 今日はちょっとチャレンジしてみたいことがあるんだ~!」
「うむ。今日も美味なパンを食すぞ!」
「ははは……モッフィは食い気の方が大事か」
赤と青の綺麗なオッドアイを隠すように怪しげなサングラスをかけ、ベッドからぴょんと降りる。
寝癖がついたゆるふわ金髪をささっと手櫛で直し、わたしは背伸びして部屋のドアノブをひねる。
そして、二階の寝室を出て、リビングへと降りていくのだった。
■ ■ ■
一階のリビングに降りると、人の気配があった。
すると、わたしの存在に気付いたらしい。
「アイリ、起きたのか。おはよう」
「おはよう、アイリちゃん!」
「……昨日は眠れたか?」
冒険者パーティのリーダーであるベルドさんを筆頭に、女魔法使いのジェシーさんとタンクのマーレスさんが挨拶をしてくれた。
ジェシーさんはニコニコ笑顔で手を振って、マーレスさんは伺うようにボソリと言った。
「み、皆さん! おはようございます!」
わたしは頭を下げて挨拶をした。
異世界野宿ルートから救ってくれたこの人たちには感謝しかない。
「寝室を貸していただきありがとうございました! それどころか、昨日は夜ご飯やお風呂にも入らせてもらっちゃって……!」
「はは、気にするな」
「そうよ! アイリちゃんはまだ子供なんだから!」
「遠慮なく、俺たちを頼るといい」
三人とも、優しい笑顔で言ってくれた。
なんだか、ジーンと心が温かくなる。
うぅ、人の優しさに触れることがこんなに嬉しいだなんて……!
ちなみにだけど、『グラサン幼女』であるわたしが降りてきてもベルドさんたちは驚かない。
なぜなら、昨日の内にベルドさん含め他二人のパーティメンバーにもわたしの『眼』のことを話しているからだ。
曰く、とある病気のためこのサングラスをかけて生活しているのだ、と。
若干嘘を混ぜてるのは心苦しいけど、わたしが『転生者』であることを明かすのは不味いかと思ってこの言い訳に落ち着いた。
「それよりもアイリ、グッドタイミングだぞ。ちょうど朝食ができたから、一緒に食べよう!」
「わあ! いいんですか!?」
「もちろんよ! アイリちゃん、私の隣で一緒に食べましょ! モッフィちゃんの分もあるわよ!」
「ほう、分かっておるではないか人間よ」
わたしはジェシーさんの隣の席に座る。モッフィは直接テーブルの上に飛び乗った。
そして、ベルドさんが慣れた手付きで朝食をテーブルに並べてくれた。
ロールパン、スクランブルエッグ、サラダ、スープなどなど、異世界っぽい洋風の朝食がテーブルを彩った。
そして、わたしたちは「いただきます」をしてから、朝食をとった。
わたしはロールパンをかじる。
「んん~、美味しい!」
スープもごくり。
むむっ! こっちはポトフみたいな感じで、薄味だけどたしかな旨味が混ざっていた。
朝はこういうあっさりした味付けが嬉しいね!
わたしの向かいの席に座るベルドさんが微笑んだ。
「そんなに美味そうに食ってくれたら作った甲斐があるな」
「だって、本当に美味しいので!」
「うむ。もくもぐ……まあ、悪くはないのぅ……もぐもぐ」
モッフィもそっけないセリフは吐いてるけど、ばくばくとパンやスクランブルエッグにがっついていた。
ひとしきり朝食を食べると、ベルドさんが言う。
「アイリ、今日は何か予定はあるのか?」
「ありまふっ!」
もぐもぐごっくん、とサラダとスクランブルエッグを飲み込んで、わたしは言った。
「今日は冒険者ギルドに行ってクエストを受けてみようかと思ってるんです!」
「クエスト、か」
「アイリちゃんはこんなにちっちゃくて可愛い女の子だから忘れそうになるけど、私たちと同じ冒険者なんだものね」
「……冒険者であればクエストで稼ぐのは当然、か」
ジェシーさんとマーレスさんはわたしの言葉を否定こそしないものの、やっぱり心配そうな顔をしていた。
ベルドさんもやや難しい顔をしているけど、パッと表情を変える。
「……そうだな! アイリにはモッフィもいるし、何よりアイリ自身も魔法を使える。高難度の魔物討伐依頼でも受けない限り、滅多なクエストで危ない目に遭うことは少ないか」
「はい! わたしも最初から難しいクエストに挑もうとは思ってないです! まずは初心者でも取り組めそうなクエストをやってみようかと!」
「それがいいな。ま、そもそも冒険者になりたてのアイリは高難度のクエストを受けさせちゃ貰えねぇと思うが」
ベルドさんたちは、モッフィがブラックアントという巨大蟻の魔物を瞬殺している様を目撃している。
だから幼女と神獣のことを全く知らない人よりもすんなりとわたしたちの実力を評価してくれる。
「でも、冒険者としてクエストをしに行くなら、最低限の準備は必要なんじゃないかしら」
「準備、ですか?」
ジェシーさんがカチャリとフォークを置いた。
そしてわたしに向き直り、わたしのちっちゃなお手手をぎゅっと握った。
「というわけでアイリちゃん! 今から一緒に『お洋服』を選びに行きましょう!」
……え、お洋服??
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