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二章
なんで、どうして
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目が覚めたら、杉野の背中に抱きついて寝ていた。
ピンク色のふかふかとしたベッドの上で、藤ヶ谷の左腕と左足が完全に自分より大きな体をホールドしている。
藤ヶ谷は固まって動けないまま、状況把握しようと必死に寝ぼけ頭をフル回転させた。
(ね、寝たふりして困らせてやろうと思ったのに……)
途中まで杉野が焦って揺さぶっていたのは覚えている。
で、抱き上げられて布団を被せられた。
少し経ったらいきなり起き上がって驚かせてやろうと思ったところまでは、きちんと覚えているのだ。
しかしそこで記憶が途切れている。
間違いなく寝落ちしている。
藤ヶ谷は本人が思っていたより疲弊していたらしい。
昨日は待ち合わせは夜だったのに、楽しみすぎて無駄に早起きしてしまったことを思い出す。
(いやもう……何から何まで小学生みてぇ……)
自分で自分に呆れ返ってため息をつく。
手と足はそっと離し、爆睡中なのか動かない杉野の背中にピタリと寄り添った。
「お前はいいやつだなぁ」
藤ヶ谷を無理矢理起こしたり、先に帰ったりせずきちんと一緒にいてくれている。
杉野には全く下心がないから、好きな人に知られても困らないのだろうと解釈する。
現に今、同じベッドで隣にいるのに問題なく寝ている。
(俺って、魅力ないのかな)
何事もないというのは喜ばしいことのはずが、何故か藤ヶ谷の気持ちは落ち込んだ。
(なんかいつもフラられてばっかだし。杉野はフラれたこととかないんだろうな)
杉野は詳しく教えてくれないので、好きな人とどんな関係性なのか藤ヶ谷には分からない。
だが、杉野が好意を寄せる相手は良い人なのだろう。
(俺よりも、大事にされて優しくされて……絶対好きになるに決まってる)
抑制剤の効果がなかったと、杉野は優一朗に文句を言ったという。
好きだから効果が薄かったならともかく、運命の番であったことが理由ならば。
我慢出来ずにすでに番っていて、でもそれを周りに言えない理由があるのかもしれない。
番がいても上書き出来るという運命の絆。
妄想が膨らみすぎて、胸が軋む心地だった。
「やだな」
杉野の香りを吸い込みながら、藤ヶ谷は無意識に呟いた。
零れ落ちたくぐもった言葉に、思わず口元を覆う。
(あれ……なんで……?)
戸惑いと疑問が頭を駆け巡る。
すぐそこまで出てきているはずなのに、寝起きの頭ではなかなか答えが見いだせないでいると。
「……ん……おはようございます……?」
杉野の背がモゾモゾと動き、欠伸混じりの声が聞こえる。
大きな声だったわけでもないのに異様に驚いてしまった藤ヶ谷は体を硬直させた。
「お、はようっ」
なんとか温もりから離れると、杉野は起き上がってグッと腕を上に伸ばした。
割れた腹筋が目に入って、藤ヶ谷はついついそこに視線をやってしまう。
藤ヶ谷の挙動不審な様子には気がついていないらしい杉野は、ベッドサイドにあるハート型の置き時計へと眠そうな目を向けた。
「あー……5時か……仕事間に合うかな……」
「げっそうか月曜日かよ!」
のんきに寝転がっていた藤ヶ谷は慌てて起き上がる。
今から急いで帰れば、シャワーを浴びてから出勤することができるだろう。
昨夜、杉野が浴室に干しておいてくれた服が乾いてるか確認に行こうと立ち上がろうとする。
が、腕を掴まれてベッドに引き倒された。
「……っ!」
「藤ヶ谷さん」
ベッドが揺れるのを背で感じて息を飲む。
いつもより乱れた髪の杉野が覆い被さるようにして見下ろしてきた。
藤ヶ谷の顔に一気に熱が昇ってくる。
「な、ななななに今からすぐ帰って会社行かなきゃでその」
「俺がとってくるので布団ちゃんと被っててくださいお願いします」
「あ、はい」
通常運転の淡々とした態度で、杉野は藤ヶ谷の露出した下半身に掛け布団を被せた。
藤ヶ谷は慌てたのが恥ずかしくなり、布団を引き上げて頭まで潜り込む。
心臓が耳元で鳴っているのかと錯覚するほど大きく聞こえる。
(俺、今、何を期待した?)
下から見上げると杉野がいつもより格好良く見えて思った。「これが恋人の視界か」と。
しかし藤ヶ谷が何か結論を出す前に、杉野が服を持ってきてくれる。
その時ようやく、優一朗と何かあるかもしれないと気合いの入った下着をつけていたことを思い出してしまった。
(うわー!杉野に見られてませんように!)
黒いレースの紐パンを隠すために、布団の中でズボンを履く羽目になった藤ヶ谷であった。
ピンク色のふかふかとしたベッドの上で、藤ヶ谷の左腕と左足が完全に自分より大きな体をホールドしている。
藤ヶ谷は固まって動けないまま、状況把握しようと必死に寝ぼけ頭をフル回転させた。
(ね、寝たふりして困らせてやろうと思ったのに……)
途中まで杉野が焦って揺さぶっていたのは覚えている。
で、抱き上げられて布団を被せられた。
少し経ったらいきなり起き上がって驚かせてやろうと思ったところまでは、きちんと覚えているのだ。
しかしそこで記憶が途切れている。
間違いなく寝落ちしている。
藤ヶ谷は本人が思っていたより疲弊していたらしい。
昨日は待ち合わせは夜だったのに、楽しみすぎて無駄に早起きしてしまったことを思い出す。
(いやもう……何から何まで小学生みてぇ……)
自分で自分に呆れ返ってため息をつく。
手と足はそっと離し、爆睡中なのか動かない杉野の背中にピタリと寄り添った。
「お前はいいやつだなぁ」
藤ヶ谷を無理矢理起こしたり、先に帰ったりせずきちんと一緒にいてくれている。
杉野には全く下心がないから、好きな人に知られても困らないのだろうと解釈する。
現に今、同じベッドで隣にいるのに問題なく寝ている。
(俺って、魅力ないのかな)
何事もないというのは喜ばしいことのはずが、何故か藤ヶ谷の気持ちは落ち込んだ。
(なんかいつもフラられてばっかだし。杉野はフラれたこととかないんだろうな)
杉野は詳しく教えてくれないので、好きな人とどんな関係性なのか藤ヶ谷には分からない。
だが、杉野が好意を寄せる相手は良い人なのだろう。
(俺よりも、大事にされて優しくされて……絶対好きになるに決まってる)
抑制剤の効果がなかったと、杉野は優一朗に文句を言ったという。
好きだから効果が薄かったならともかく、運命の番であったことが理由ならば。
我慢出来ずにすでに番っていて、でもそれを周りに言えない理由があるのかもしれない。
番がいても上書き出来るという運命の絆。
妄想が膨らみすぎて、胸が軋む心地だった。
「やだな」
杉野の香りを吸い込みながら、藤ヶ谷は無意識に呟いた。
零れ落ちたくぐもった言葉に、思わず口元を覆う。
(あれ……なんで……?)
戸惑いと疑問が頭を駆け巡る。
すぐそこまで出てきているはずなのに、寝起きの頭ではなかなか答えが見いだせないでいると。
「……ん……おはようございます……?」
杉野の背がモゾモゾと動き、欠伸混じりの声が聞こえる。
大きな声だったわけでもないのに異様に驚いてしまった藤ヶ谷は体を硬直させた。
「お、はようっ」
なんとか温もりから離れると、杉野は起き上がってグッと腕を上に伸ばした。
割れた腹筋が目に入って、藤ヶ谷はついついそこに視線をやってしまう。
藤ヶ谷の挙動不審な様子には気がついていないらしい杉野は、ベッドサイドにあるハート型の置き時計へと眠そうな目を向けた。
「あー……5時か……仕事間に合うかな……」
「げっそうか月曜日かよ!」
のんきに寝転がっていた藤ヶ谷は慌てて起き上がる。
今から急いで帰れば、シャワーを浴びてから出勤することができるだろう。
昨夜、杉野が浴室に干しておいてくれた服が乾いてるか確認に行こうと立ち上がろうとする。
が、腕を掴まれてベッドに引き倒された。
「……っ!」
「藤ヶ谷さん」
ベッドが揺れるのを背で感じて息を飲む。
いつもより乱れた髪の杉野が覆い被さるようにして見下ろしてきた。
藤ヶ谷の顔に一気に熱が昇ってくる。
「な、ななななに今からすぐ帰って会社行かなきゃでその」
「俺がとってくるので布団ちゃんと被っててくださいお願いします」
「あ、はい」
通常運転の淡々とした態度で、杉野は藤ヶ谷の露出した下半身に掛け布団を被せた。
藤ヶ谷は慌てたのが恥ずかしくなり、布団を引き上げて頭まで潜り込む。
心臓が耳元で鳴っているのかと錯覚するほど大きく聞こえる。
(俺、今、何を期待した?)
下から見上げると杉野がいつもより格好良く見えて思った。「これが恋人の視界か」と。
しかし藤ヶ谷が何か結論を出す前に、杉野が服を持ってきてくれる。
その時ようやく、優一朗と何かあるかもしれないと気合いの入った下着をつけていたことを思い出してしまった。
(うわー!杉野に見られてませんように!)
黒いレースの紐パンを隠すために、布団の中でズボンを履く羽目になった藤ヶ谷であった。
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