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番外編
花見をする桜田と空(空視点)
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公園は桜がほぼ満開だ。
今までであれば、どんな花が咲こうと散ろうと落ちようと踏まれようと。なんとも思わなかった。
だが、今年はこの花が美しいと感じる。
木や地面を彩る薄紅の中で笑うサクラの影響だろうか。
桜田という苗字から俺が適当につけた恋人の呼び名は、今の季節にぴったりだった。
「なぁ凪、花見しようぜ! 明日!」
と昨日の晩、唐突に電話で告げてきたサクラとふたりで公園に来た。
なんでそんなに急なんだとため息を吐くと「週末には雨予報だから散る可能性がある」ということだった。
花見なんて、わざわざするのは初めてだ。
(花見っつっても、公園で飯食うだけだろ……)
お互い弁当も持たず近くのコンビニで昼食を調達し、運良く空いているベンチに座った。
出かける時には弁当を作ってくる女が今までには居たが、俺もサクラもそんなスキルはない。
大口を開けてカツサンドを頬張る恋人は、先ほどからサッカーをしている中学生くらいのグループに目が釘付けだ。
小柄で童顔なサクラは、高校を卒業した今も中学生に馴染むだろう。
(そんなに気になるなら混ざってこいよ、なんて言わねぇけど)
一緒にいる貴重な時間をこれ以上サッカーに奪われてたまるか。
俺はサクラの意識をこちらへ向けようと、コーヒーの缶を開けながら口を動かす。
「お前、引っ越しの準備は」
「もうほとんど終わったー」
部活の推薦で都会の大学に行くのが決まってるサクラは、家から出て一人暮らしをする。
準備のせいで夜と早朝しかサッカーボールに触れないと愚痴を言っていた。
いや、それだけ触ってりゃ十分だろ。
サクラはパンのかけらを口に放り込むと、ようやくこちらを向いた。
「凪は? そろそろ詳しく教えてくれよー場所分かんないと会えねぇじゃん」
眉を寄せる表情は妙に可愛らしい。
見た目だけじゃなく、中身もガキみたいだからたまに犯罪者の気分になる。
いつも俺の優先順位がサッカーより低いようだけど、ちゃんと気にかけてはいたらしい。
「隣」
「え」
「お前の隣の部屋」
「すご」
丸い目を見開いたサクラは、分かりやすく口角が上がる。
その時丁度、小さな花びらがひとひら、その黒い髪に乗った。俺はそれを取ろうと手を伸ばす。
「そうでもしねぇとお前サッカーばっかで会えねぇだろどうせ」
「そんなことねぇ、と、思うけど……」
自信なさそうな声を出しながら、目は俺の動きを追う。
摘んだ薄紅色をサクラの手のひらに乗せてやると、楽しげに息を吹いて飛ばす様子が見られて口元が緩んだ。
「浮気も見張れるしな」
「それはこっちのセリフだからな!?」
バシンと音を立てて、額を叩かれる。
女を取っ替え引っ替えしていた俺と、付き合うのが初めてだというサクラのことだ。どう考えてもサクラの言い分が正しい。
そう考えると、自分のこの1年の入れ込み具合は尋常ではなかった。
「隣の部屋に住み着くなんて重いとは思わないのかお前」
「えー? 俺は一緒に住みたいくらいだし。社会人になったら同棲しような!」
住む場所を聞き出して、すぐに動いた甲斐があるというものだ。
サクラが楽天的に俺の行動を受け入れてくれるから、色々エスカレートしそうになる。
屈託ないサクラの笑顔を見て、この場で引き寄せて唇を奪いたくなったがここは外。
俺はただ柔らかい頰を撫でるだけにした。
強い風が吹いて桜が舞う。
こいつとならこの先何度でも、こうして、ただ飯を食うだけの花見をする気がする。
今までであれば、どんな花が咲こうと散ろうと落ちようと踏まれようと。なんとも思わなかった。
だが、今年はこの花が美しいと感じる。
木や地面を彩る薄紅の中で笑うサクラの影響だろうか。
桜田という苗字から俺が適当につけた恋人の呼び名は、今の季節にぴったりだった。
「なぁ凪、花見しようぜ! 明日!」
と昨日の晩、唐突に電話で告げてきたサクラとふたりで公園に来た。
なんでそんなに急なんだとため息を吐くと「週末には雨予報だから散る可能性がある」ということだった。
花見なんて、わざわざするのは初めてだ。
(花見っつっても、公園で飯食うだけだろ……)
お互い弁当も持たず近くのコンビニで昼食を調達し、運良く空いているベンチに座った。
出かける時には弁当を作ってくる女が今までには居たが、俺もサクラもそんなスキルはない。
大口を開けてカツサンドを頬張る恋人は、先ほどからサッカーをしている中学生くらいのグループに目が釘付けだ。
小柄で童顔なサクラは、高校を卒業した今も中学生に馴染むだろう。
(そんなに気になるなら混ざってこいよ、なんて言わねぇけど)
一緒にいる貴重な時間をこれ以上サッカーに奪われてたまるか。
俺はサクラの意識をこちらへ向けようと、コーヒーの缶を開けながら口を動かす。
「お前、引っ越しの準備は」
「もうほとんど終わったー」
部活の推薦で都会の大学に行くのが決まってるサクラは、家から出て一人暮らしをする。
準備のせいで夜と早朝しかサッカーボールに触れないと愚痴を言っていた。
いや、それだけ触ってりゃ十分だろ。
サクラはパンのかけらを口に放り込むと、ようやくこちらを向いた。
「凪は? そろそろ詳しく教えてくれよー場所分かんないと会えねぇじゃん」
眉を寄せる表情は妙に可愛らしい。
見た目だけじゃなく、中身もガキみたいだからたまに犯罪者の気分になる。
いつも俺の優先順位がサッカーより低いようだけど、ちゃんと気にかけてはいたらしい。
「隣」
「え」
「お前の隣の部屋」
「すご」
丸い目を見開いたサクラは、分かりやすく口角が上がる。
その時丁度、小さな花びらがひとひら、その黒い髪に乗った。俺はそれを取ろうと手を伸ばす。
「そうでもしねぇとお前サッカーばっかで会えねぇだろどうせ」
「そんなことねぇ、と、思うけど……」
自信なさそうな声を出しながら、目は俺の動きを追う。
摘んだ薄紅色をサクラの手のひらに乗せてやると、楽しげに息を吹いて飛ばす様子が見られて口元が緩んだ。
「浮気も見張れるしな」
「それはこっちのセリフだからな!?」
バシンと音を立てて、額を叩かれる。
女を取っ替え引っ替えしていた俺と、付き合うのが初めてだというサクラのことだ。どう考えてもサクラの言い分が正しい。
そう考えると、自分のこの1年の入れ込み具合は尋常ではなかった。
「隣の部屋に住み着くなんて重いとは思わないのかお前」
「えー? 俺は一緒に住みたいくらいだし。社会人になったら同棲しような!」
住む場所を聞き出して、すぐに動いた甲斐があるというものだ。
サクラが楽天的に俺の行動を受け入れてくれるから、色々エスカレートしそうになる。
屈託ないサクラの笑顔を見て、この場で引き寄せて唇を奪いたくなったがここは外。
俺はただ柔らかい頰を撫でるだけにした。
強い風が吹いて桜が舞う。
こいつとならこの先何度でも、こうして、ただ飯を食うだけの花見をする気がする。
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えみーなさん、お読みいただきありがとうございます!
感想をお伝えいただいて嬉しいです!
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本当にありがとうございました!
金浦桃多さん、コメントありがとうございます!
土井と杏山は付き合ったあとは本当にとんとん拍子で進みそうですね!
そうなんですよー!絶対わんちゃん飼ってほしい!!
水坂と梅木は一番悩んだカップルなので嬉しいです!頑張った甲斐がありました!
ずっと梅木がツッコミ頑張っそうですね〜
4組もお読みいただき、本当にありがとうございます!!
金浦桃多さん、感想ありがとうございます!
どちらのカップルも、最終的には受けに振り回されている攻めになりそうだな〜と書き終わった時に思いました( ´ ▽ ` )
1組ずつに対する感想をいただけてとてもうれしいです!いつも本当に力になります!
ご無理のない範囲でお楽しみください✨