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第一章

天才にしか言えない台詞

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 この世界では、魔術はだいたいの人が使用する素質を持っている。
 だが、文字を学ばなければ読み書き出来ないように、魔術もきちんと学ばなければ使うことが出来ない。

 持て余すほど魔力が強い場合、例えば「幼児の時点で火を扱えてしまい上手く制御できない」といった危険な状態など以外は、平民は魔術の勉強を特にしない。

 理由は簡単、何を勉強するにもお金がかかるからだ。

 魔術は便利だが、使えなくても一般人は生活できるため、特に学ぶことなく過ぎていく人が大勢いる。
 自然と魔術は貴族、士族などの特権階級が主に扱うものとなっているのだ。

 その中でも特に魔術に特化して職業としている人たちを魔術師と呼ぶ。
 彼らは皇族や上位貴族と契約したり、軍に所属したり、公務員のように国に雇われて平民たちの近くで力を貸したりと様々な道をいく。

 言うまでもないが人には向き不向き、好き嫌いががあるので、すべての人が魔術師になれるというわけでもない。
 
 そんな中、私は魔術の基礎を始める3歳から魔術をほぼ意のままに操れた。
 しかも魔術のネックである長ーい詠唱を使わず短くて済むおまけ付き。

 操るのが早かったのはそもそも30代の理性と理解力があったのも大きいと思うが、運よく魔力が強い体に産まれたのだろう。

 あと魔術とかワクワクしすぎてめちゃくちゃ勉強した。
 素質がある体だったからやりたいことがスイスイできて、学ぶのがとても楽しかった。
 短い詠唱も、本を読んでいて見つけたものを色々応用しているだけなので、扱える魔術師は他にもいるのだ。

(応用している『だけ』……天才にしか言えない台詞楽しい……)
 
 長くなったが、ネルスが「天才的な化け物」と私を評したのはそういうわけだ。

 長年修行を積んだプロにしか出来ないことを15歳で使いこなしてしまうのはまぁ化け物だろう。

 3歳児にちょっとひらがなを教えたと思ったら、勝手に漢字を読み書きし始め、遂には漢文楽しいとか言い出したようなもの。
 怖すぎる。
 中にはそういう天才もいるのかもしれないが。

「そもそも、事勿れ主義のお前がなんで皇太子と揉め事を起こすんだ!」

 パンを千切りながらネルスが憤る。怒りの持続力がすごい。

 食堂前で説教が始まりそうだったネルスをエラルドと2人で宥めすかし、なんとか昼食にありついたところだ。

 白を基調とした広い室内にある、グレーの丸テーブルに三人で座る。
 教室にあるものとは違い、クッション性のある白い椅子の背に体重を預けるのが心地いい。

 そして、ネルスの声を聞きながらも豪勢な昼食から目が離せない。
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