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第三章 神の悪戯
第百八十一話 南の鉱山:中腹(1)
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そしてゴド爺さんの店から準備やもろもろのやる事を消化するために移動したナギは、ギルドマスターのジィ―リスさんに一応の報告を終わらせると消耗した回復アイテムをアリアさんの店で買い足した。
更に装備は店を出る時にゴド爺さんに修復を頼んでいて、その日はそれで一旦ログアウトする。そうして現実で少し時間をおけばAO内では三倍の時間が経つので、再度ログインすれば修復は終わっていると言うわけだ。
「ほら、ちゃんと修復しておいたぞ」
「ありがとうございます」
「ただ今回のロック・ゴーレムは通常のゴーレム以上に硬い。普通の短刀だと辛いと思うぞ?」
「あぁ~確かにそうですよね。なら手甲や脚甲をもっとしっかりした物を用意してもらっていいですか?値段は20000G以内でお願いします」
「おう!任せとけ。と言うか、こっちが本職だ」
そう言うとゴド爺さんは奥の棚を真剣に観察してナギのサイズに合わせた手甲と脚甲を二つ取り出した。
取り出された手甲と脚甲をは二つとも今のナギの格好に合わせたように色は黒で、特に派手さはないが機能性を重視した武骨なデザインとなっていた。ただ防具を目的に作られた物とは違い、今回の二つは敵を砕く武器として作られたために少し攻撃的なデザインをしていた。
「これはいい物ですね…」
出されたその手甲と脚甲を手に持って確認したナギは鑑定スキルを使用せずとも出来栄えがよく分かった。
なにせナギが今までに作ったどんな物とも違って金属の純度がとても高く、それでいて人の動きを邪魔しない絶妙な加工がされていた。証拠にナギが例にて手甲を装備すると、さすがに生身程ではなくても薄手の手袋程度の違和感で動かすことが出来た。
そんなナギの様子を見たゴド爺さんは感心したように頷いていた。
「本当にナギ坊は戦闘センスが抜群に高いな。初めて使う武具をそこまで使いこなすとはな。そいつは鉄に魔物の骨を砕いて混ぜて硬度を素材の限界近くまで高めてある、防具としても使えるし武器としても十分に使えるはずだ。それと料金は二つ合わせて19000Gだ」
「この位なら慣れていれば誰でもできますよ。はい、これ料金です!いい買い物できてよかったです」
「ガハハハッ!そう言ってもらえるのは職人名利に尽きるってもんだな!気を付けていって来いよ?」
「はい、もちろんですよ。それでは装備ありがとうございました」
最後に真剣な表情で注意するゴド爺さんにナギは新たな装備を身に纏いながら店を出て南へと向かった。
また人に後を付けられたくなかったナギは表通りではなく屋根の上を通って最短距離で南に向かい、数分で草原まで着いたがすでに何度も着ているので興味を示す事なく真っ直ぐに鉱山へと目指した。
程なくして鉱山に着いたナギは新しい手甲や脚甲を試すためにも硬い敵を探していた。
「う~ん、中腹に行く前に何か手ごろな奴で試したいんだけど…」
『とうとう魔物達は武器の性能を試すための相手になったんですか?』
「それと素材を落としてくれるありがたい存在だよ」
『えぇ…なんか扱い方が可哀そうな気がします…』
身も蓋もないナギの答えにさすがにソルテも魔物達へと同情してしまう。
ただナギからすればいくら倒しても数が減っているか分からない程大量に居て、武器が変わればリアクションも変化して性能を試すには持ってこいの相手だ。しかも倒せば武器なんかの生産にも使える素材まで出してくれるのだから、言い方はあれだったが少しは本当に感謝している。
そんなこんなで少し微妙な気分になりながらもナギが探しているので、一緒になって探していたソルテが先に何かを発見した。
『あそこにある岩。普通の物じゃなくて魔物ですよ』
「本当か?と言うかよく分かったな」
『これでも土の妖精ですからね‼』
「そう言えばそうだったな。それなら試すのはあいつにするか」
土の妖精であるソルテにはいくら上手く擬態していようとも土や岩に関係していれば本物かどうか判別できた。
そのソルテからの言葉もあって新しい装備の試す標的を決めたナギは、新調した手甲と脚甲を撃ち合わせながら一気に駆け出した。
『⁉』
「ふっ!」
一息に距離を縮めたナギは擬態したまま動かない相手に容赦なく全力の拳を放った。
ドゴッ!と鈍い音がして表面の岩肌が砕けてダメージをおったそれは石の人形、ゴーレムへと変化した。そのまま反撃に出ようとゴーレムは腕を振り上げ振り下ろす…事はできなかった。
ゴーレムが腕を振り上げた瞬間にはその懐に入っていたナギは隙だらけの腹部に拳を叩きつけた。
ガゴンッ‼
『ッッ⁉』
「こんな至近距離で腕振り上げるとか、アホなのか?」
綺麗に決まった攻撃にゴーレムは口がないので話せないが混乱していることがはっきりと理解できるほどに狼狽えていた。
そんなゴーレムの姿を見ながらナギは不機嫌そうに吐き捨てる。なにせ至近距離にいる相手に大ぶりな攻撃など『どうぞ攻撃してください!』と両手を広げて向かい入れているようなものだ。
根本的な所で戦いを楽しみたいナギはあまりにも稚拙なゴーレムの動きに落胆していた。
「はぁ…とりあえず当初の目的の手甲なんかでの戦闘の感覚は掴んだしいいか。倒して先に進もう」
落胆はしても最初の目的である手甲や脚甲を使用した戦闘を経験したことで達成している。そのためこれ以上はゴーレムと戦う理由も無くなったナギは一気に倒し切る事にしたのだ。
そのナギの変化を感じたのかゴーレムは怯えたように体を小刻みに震わせてじりじりと後ろに下がる。
だが次の瞬間にはナギは一気に距離を縮めてきていた。ゴーレムは急に目の前に現れたナギに先ほどとは違いコンパクトに振り払うように手を振るった。
「今回のはいい攻撃だったな」
もっともナギにとってはたいした脅威でもなく一瞬発動した空歩で空に飛んで余裕で躱していた。
感心したように言葉を漏らしたナギは空中で体を捻ると足を上げて落下の勢いも乗せた踵落としをゴーレムの頭部へと叩き落した。この攻撃でも岩のような体が割れて全体にヒビが広がった。
頭上のHPも三度の攻撃ですでに半分近くが削れていた。
そんな事を確認しながらナギは追加に蹴りと拳を無数に放つ。拳を放てば反動を利用して蹴りを放って、蹴りを放てばその勢いで次の拳へと繋がって合間のない連撃へとなっていた。
拳と蹴りの波に襲われたゴーレムはいくら防御力が高くとも関係なく数秒でHPが消し飛び光となって消えた。
そして完全に倒し切ったナギはスイッチを切るように小さく息を吐き出した。
「ふぅ……よし、これなら十分に戦えるな」
『いや、十分どころではないと思うんですけど…本当に初めて使う武器ですか?』
「初めてだぞ?今日買ったばかりだからな」
これだけの戦闘をしておいて満足していない様子のナギを見てソルテは少し引きつった表情で思はず確認していた。ただナギは何が疑問なのかわからず首を傾げて答えた。
その答えでまたソルテは盛大に引いていたがナギは気が付かずに手甲や脚甲に不具合がないか点検して、特に問題ないことを確認すると満足そうに頷いた。
「よし、特に耐久値が大きく減っていると言う事も無いし問題ないな!先に進むか」
『う~ん…はい!もうなんかよく分からないですけど、別に困る事は無いので先に進みましょう‼』
「?」
ナギの言葉を聞いて考えていたソルテは悩むのに疲れたのか、特に何か問題がある訳でもないと言う事で吹っ切れたように晴れやかにナギの背中を押した。
その言っている事がよく理解はできなかったナギだったが進むことに反対はされなかったので、ソルテを懐に掴んで突っ込むと周囲に敵が集まってくる前に急いで鉱山を登っていくのだった。
更に装備は店を出る時にゴド爺さんに修復を頼んでいて、その日はそれで一旦ログアウトする。そうして現実で少し時間をおけばAO内では三倍の時間が経つので、再度ログインすれば修復は終わっていると言うわけだ。
「ほら、ちゃんと修復しておいたぞ」
「ありがとうございます」
「ただ今回のロック・ゴーレムは通常のゴーレム以上に硬い。普通の短刀だと辛いと思うぞ?」
「あぁ~確かにそうですよね。なら手甲や脚甲をもっとしっかりした物を用意してもらっていいですか?値段は20000G以内でお願いします」
「おう!任せとけ。と言うか、こっちが本職だ」
そう言うとゴド爺さんは奥の棚を真剣に観察してナギのサイズに合わせた手甲と脚甲を二つ取り出した。
取り出された手甲と脚甲をは二つとも今のナギの格好に合わせたように色は黒で、特に派手さはないが機能性を重視した武骨なデザインとなっていた。ただ防具を目的に作られた物とは違い、今回の二つは敵を砕く武器として作られたために少し攻撃的なデザインをしていた。
「これはいい物ですね…」
出されたその手甲と脚甲を手に持って確認したナギは鑑定スキルを使用せずとも出来栄えがよく分かった。
なにせナギが今までに作ったどんな物とも違って金属の純度がとても高く、それでいて人の動きを邪魔しない絶妙な加工がされていた。証拠にナギが例にて手甲を装備すると、さすがに生身程ではなくても薄手の手袋程度の違和感で動かすことが出来た。
そんなナギの様子を見たゴド爺さんは感心したように頷いていた。
「本当にナギ坊は戦闘センスが抜群に高いな。初めて使う武具をそこまで使いこなすとはな。そいつは鉄に魔物の骨を砕いて混ぜて硬度を素材の限界近くまで高めてある、防具としても使えるし武器としても十分に使えるはずだ。それと料金は二つ合わせて19000Gだ」
「この位なら慣れていれば誰でもできますよ。はい、これ料金です!いい買い物できてよかったです」
「ガハハハッ!そう言ってもらえるのは職人名利に尽きるってもんだな!気を付けていって来いよ?」
「はい、もちろんですよ。それでは装備ありがとうございました」
最後に真剣な表情で注意するゴド爺さんにナギは新たな装備を身に纏いながら店を出て南へと向かった。
また人に後を付けられたくなかったナギは表通りではなく屋根の上を通って最短距離で南に向かい、数分で草原まで着いたがすでに何度も着ているので興味を示す事なく真っ直ぐに鉱山へと目指した。
程なくして鉱山に着いたナギは新しい手甲や脚甲を試すためにも硬い敵を探していた。
「う~ん、中腹に行く前に何か手ごろな奴で試したいんだけど…」
『とうとう魔物達は武器の性能を試すための相手になったんですか?』
「それと素材を落としてくれるありがたい存在だよ」
『えぇ…なんか扱い方が可哀そうな気がします…』
身も蓋もないナギの答えにさすがにソルテも魔物達へと同情してしまう。
ただナギからすればいくら倒しても数が減っているか分からない程大量に居て、武器が変わればリアクションも変化して性能を試すには持ってこいの相手だ。しかも倒せば武器なんかの生産にも使える素材まで出してくれるのだから、言い方はあれだったが少しは本当に感謝している。
そんなこんなで少し微妙な気分になりながらもナギが探しているので、一緒になって探していたソルテが先に何かを発見した。
『あそこにある岩。普通の物じゃなくて魔物ですよ』
「本当か?と言うかよく分かったな」
『これでも土の妖精ですからね‼』
「そう言えばそうだったな。それなら試すのはあいつにするか」
土の妖精であるソルテにはいくら上手く擬態していようとも土や岩に関係していれば本物かどうか判別できた。
そのソルテからの言葉もあって新しい装備の試す標的を決めたナギは、新調した手甲と脚甲を撃ち合わせながら一気に駆け出した。
『⁉』
「ふっ!」
一息に距離を縮めたナギは擬態したまま動かない相手に容赦なく全力の拳を放った。
ドゴッ!と鈍い音がして表面の岩肌が砕けてダメージをおったそれは石の人形、ゴーレムへと変化した。そのまま反撃に出ようとゴーレムは腕を振り上げ振り下ろす…事はできなかった。
ゴーレムが腕を振り上げた瞬間にはその懐に入っていたナギは隙だらけの腹部に拳を叩きつけた。
ガゴンッ‼
『ッッ⁉』
「こんな至近距離で腕振り上げるとか、アホなのか?」
綺麗に決まった攻撃にゴーレムは口がないので話せないが混乱していることがはっきりと理解できるほどに狼狽えていた。
そんなゴーレムの姿を見ながらナギは不機嫌そうに吐き捨てる。なにせ至近距離にいる相手に大ぶりな攻撃など『どうぞ攻撃してください!』と両手を広げて向かい入れているようなものだ。
根本的な所で戦いを楽しみたいナギはあまりにも稚拙なゴーレムの動きに落胆していた。
「はぁ…とりあえず当初の目的の手甲なんかでの戦闘の感覚は掴んだしいいか。倒して先に進もう」
落胆はしても最初の目的である手甲や脚甲を使用した戦闘を経験したことで達成している。そのためこれ以上はゴーレムと戦う理由も無くなったナギは一気に倒し切る事にしたのだ。
そのナギの変化を感じたのかゴーレムは怯えたように体を小刻みに震わせてじりじりと後ろに下がる。
だが次の瞬間にはナギは一気に距離を縮めてきていた。ゴーレムは急に目の前に現れたナギに先ほどとは違いコンパクトに振り払うように手を振るった。
「今回のはいい攻撃だったな」
もっともナギにとってはたいした脅威でもなく一瞬発動した空歩で空に飛んで余裕で躱していた。
感心したように言葉を漏らしたナギは空中で体を捻ると足を上げて落下の勢いも乗せた踵落としをゴーレムの頭部へと叩き落した。この攻撃でも岩のような体が割れて全体にヒビが広がった。
頭上のHPも三度の攻撃ですでに半分近くが削れていた。
そんな事を確認しながらナギは追加に蹴りと拳を無数に放つ。拳を放てば反動を利用して蹴りを放って、蹴りを放てばその勢いで次の拳へと繋がって合間のない連撃へとなっていた。
拳と蹴りの波に襲われたゴーレムはいくら防御力が高くとも関係なく数秒でHPが消し飛び光となって消えた。
そして完全に倒し切ったナギはスイッチを切るように小さく息を吐き出した。
「ふぅ……よし、これなら十分に戦えるな」
『いや、十分どころではないと思うんですけど…本当に初めて使う武器ですか?』
「初めてだぞ?今日買ったばかりだからな」
これだけの戦闘をしておいて満足していない様子のナギを見てソルテは少し引きつった表情で思はず確認していた。ただナギは何が疑問なのかわからず首を傾げて答えた。
その答えでまたソルテは盛大に引いていたがナギは気が付かずに手甲や脚甲に不具合がないか点検して、特に問題ないことを確認すると満足そうに頷いた。
「よし、特に耐久値が大きく減っていると言う事も無いし問題ないな!先に進むか」
『う~ん…はい!もうなんかよく分からないですけど、別に困る事は無いので先に進みましょう‼』
「?」
ナギの言葉を聞いて考えていたソルテは悩むのに疲れたのか、特に何か問題がある訳でもないと言う事で吹っ切れたように晴れやかにナギの背中を押した。
その言っている事がよく理解はできなかったナギだったが進むことに反対はされなかったので、ソルテを懐に掴んで突っ込むと周囲に敵が集まってくる前に急いで鉱山を登っていくのだった。
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