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第二章 始まりの街防衛戦‼
第百八十話 新たな厄介事
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称号の鑑定結果から怒りに捕らわれたナギの気配にゴド爺さんが飛び込んで来て、力ずくで落ち着かせて冷静さを取り戻したナギは思いっきり落ち込んでいた。
「すみません。少し取り乱しました」
「いや、別に構わんがな。最初は敵襲か⁉って思ったがそうでもなかったし、ただ何があった?あんなに怒って」
「それがですね…」
落ち着きを取り戻したナギに対してゴド爺さんがゆっくりと事情を聴き、それにナギも冷静に事情を説明した。
最初こそ称号の獲得にゴド爺さんも驚いてよかったじゃないか!と喜んでくれたのだが、最後の加護覧のイタズラ準備中のところで露骨に顔を歪めた。
「そいつは…ナギ坊も難儀な神様に目を付けられたもんだな…」
「本当ですよ…何かした覚えないんですけどね」
「その神様の名前から言って何か気に入られてしまったんだろう。ただ狡猾神なんて名前だし油断はできんか」
「はい…しかもそんな神のイタズラって、嫌な予感しかしないじゃないですか?」
「確かに」
ナギの言うように狡猾神などとすでに名前の段階で嫌な予感しかさせない存在が、現在進行形で何かイタズラを準備していると言うのだ。そこに疑う余地など存在せずにゴド爺さんも深刻そうに頷いた。
しかもこの場合のイタズラと言うのは神基準の可能性が高く、それだけでろくなことになるはずがない。
まだAOに慣れていないナギでも嫌な予感を感じるのだ。最初から住人(NPC)として生活してきた知識のあるゴド爺さんには事態の深刻さの認識がより正確だった。
「ただ、これは予感どころの話じゃないぞ?場合によっては周囲を巻き込む結果になりかねん」
「まじですか?」
「あぁ…かなり昔だったが、どこかの神が一人の人間を気に入ってほんの遊びのつもりでドラゴンに襲わせたとか。楽しそうに過ごす人間を見て自分もなにか見世物遣ろうとして嵐をおこしたとか…とにかく神の感覚は人間基準だと災害にしかならない事がほとんどなんだよ」
「うわぁ~……」
過去に起こったことを引き合いに出して説明されるとその内容にナギは本気で引いたように声を漏らした。
なにせこれから自分の身に降りかかるのは今聞いた話に近い事である可能性が高いので仕方がないとも言える。ただナギは絶望したわけではなくてやる事が増えて大変だと考えていた。
そんな中ゴド爺さんは少し考えた後どこか疲れたようにしながら、ナギへと同情的な視線を向けながら口を開いた。
「ただ今回はナギ坊個人だけを狙ってるようだけどな」
「なんでそんな事が分かるんですか?」
「簡単な事だ、神は試練や遊びを目的にやり過ぎたことはあったけど、個人に対してわざわざメッセージを送ったりはしなかったからな。つまりその狡猾神とか言う神様は、相当ナギ坊の事を気に入っていると言う事だな!」
「えぇ~…面倒事はもう勘弁してほしかったんですけど」
「そこは厄介な神に気に入られた自分の不運を恨むしかないな」
「はぁ…」
そう言われてしまえばナギには何か言う元気も出ないのか力なく溜息を吐いて項垂れる。
分かりやすい程に落ち込んでいるナギの姿にゴド爺さんは少し笑いそうになったが、場の空気を考えて何とか我慢した。
しばらくすると落ち込んでいたナギはすっかり割り切ったように顔を上げた。
「今からいくら考えても仕方ないですね!とにかく何が有ってもいいように準備する事にします」
「おう、そうした方がいいだろうな。鍛冶に関してはワシにいくらでも聞け!力になってやる‼」
「それはもちろんお世話になります。ただ他にも使ってないスキルがあるんで、それを鍛えることを主軸において…あ、少し聞きたい事があるんですけどいいですか?」
今後の話をしていてナギは何かを思い出したようにゴド爺さんに質問する。
それに対してゴド爺さんは少し首を傾げたが断る理由もないし、何より神が関係する厄介事を一人で解決しろ!と突き放すような事をするつもりも無いので普通に受け入れた。
「別にかまわないぞ。何が聞きたいんだ?」
「ちょっとしたことなんですけど、この前のゴブリンキングでもレベルの上がり方が微妙になって来たんで何かいい方法がないかと思いまして」
「あぁ~そう言う事か、なら確かナギ坊は今は南の方に進んでいるんだったか?」
「はい、鉱山もあるんで何かと便利ですから」
「なら中腹にロック・ゴーレムがいるんだが今のナギ坊ならちょうどいい敵だろう、いい経験にもなるだろうし挑戦してみるといい。ついでにレベル50になれば面白い事があるぞ?」
そう言ったゴド爺さんはどこか楽しそうにニヤリと笑みを浮かべた。ただ説明を聞いていたナギは真剣な表情で何があるのかを考え着いた。
「つまり進化とかそんな感じのがレベル50になるとおこるってことですね。ロック・ゴーレムは面白そうですし行ってみることにします!」
「…いや、それよりもナギ坊の理解力の高さに驚いている」
「そうですか?結構普通だと思うんですけど」
不思議そうに首を傾げながらそう言ったナギだったが少し考えればわかる事だった。苦手にしていたとは言ってもナギには現代のゲームの知識が少しはある、しかし現代の知識のない人間が聞けば何が起こるかはすぐに理解できないのが普通だ。
だから詳しい説明もなくとも理解できたナギにゴド爺さんは関心を通り越して驚いていたのだ。
「…今更ナギ坊に関しては驚くだけ無駄だったな。なにせこの世界に来てまだそんなに経っていないのにゴブリン・キングと戦えるほどに成長しているんだ。なかなかに驚異的な速さだぞ?」
「それは元から武道を習っていたのもありますけどね。戦闘への恐怖心とかありませんでしたしね」
「たったそれだけで戦闘が十分にできるだけたいしたもんだろ」
感心したようにゴド爺さん後こういうのにはちゃんとした理由があった。実はゴド爺さんもナギ達以外にも数人のプレイヤーと遭遇したことがあった。
それは素材を集めるために自身で南の鉱山に向かっている時で、たまたま見かけたプレイヤーに興味を示して戦闘を少し見学した。しかし戦闘は確かに形にはなって言が何処か腰が引けている者やアーツ頼りの者達がほとんどで、純粋な戦闘力と言う点では全員が微妙としか言えなかった。
そんな他のプレイヤー達を実際に見ているだけにゴド爺さんにはナギの他とは違う特異性に気が付いた。
「まぁ…ナギ坊なら大抵の事は何とかなるだろ。それでも周囲の変化には気を付けるようにな?変化によっては、イタズラの内容のヒントを見つけられるかもしれないしの」
「確かにそうですね…今後はより一層に周囲に気を付けた方が良さそうですね」
「何が起きるか本気でわからんからな。そうしておくのがいいだろう、ワシも知り合いにそれとなく伝えておくとするか」
ゴド爺さんは真剣な面持ちでそう言うと話は終わりと判断したのかゆっくりと立ち上がって作業場を出て行った。
それを見送ってからナギは脱力して椅子の背もたれに寄りかかって天井を見上げながら少し考えていた。
「…さて、まずは言われた通りに南の鉱山のロック・ゴーレムでも倒しに行くか。でもその前に装備の耐久値を回復してもらって、消費した回復アイテムの補充…後ギルドにも一応顔を出さないと…って思った以上にやる事多いな~」
落ち着いてから改めてやらないといけない事を思い出したナギは、その量の多さにうんざりしたように言いながら勢いをつけて立ち上がった。
「ふぅ…とにかく厄介事の予感しかしないけど、のんびりとやっていくか!」
いろいろ吹っ切れたナギは自分に言い聞かせるようにそう言うと作業場を後にしてやることの消化に向かうのだった。その時になってナギが落ち着いたことに気が付いたソルテが飛び出して楽しそうに一緒に軽く話しながらゴド爺さんの店を後にした。
「すみません。少し取り乱しました」
「いや、別に構わんがな。最初は敵襲か⁉って思ったがそうでもなかったし、ただ何があった?あんなに怒って」
「それがですね…」
落ち着きを取り戻したナギに対してゴド爺さんがゆっくりと事情を聴き、それにナギも冷静に事情を説明した。
最初こそ称号の獲得にゴド爺さんも驚いてよかったじゃないか!と喜んでくれたのだが、最後の加護覧のイタズラ準備中のところで露骨に顔を歪めた。
「そいつは…ナギ坊も難儀な神様に目を付けられたもんだな…」
「本当ですよ…何かした覚えないんですけどね」
「その神様の名前から言って何か気に入られてしまったんだろう。ただ狡猾神なんて名前だし油断はできんか」
「はい…しかもそんな神のイタズラって、嫌な予感しかしないじゃないですか?」
「確かに」
ナギの言うように狡猾神などとすでに名前の段階で嫌な予感しかさせない存在が、現在進行形で何かイタズラを準備していると言うのだ。そこに疑う余地など存在せずにゴド爺さんも深刻そうに頷いた。
しかもこの場合のイタズラと言うのは神基準の可能性が高く、それだけでろくなことになるはずがない。
まだAOに慣れていないナギでも嫌な予感を感じるのだ。最初から住人(NPC)として生活してきた知識のあるゴド爺さんには事態の深刻さの認識がより正確だった。
「ただ、これは予感どころの話じゃないぞ?場合によっては周囲を巻き込む結果になりかねん」
「まじですか?」
「あぁ…かなり昔だったが、どこかの神が一人の人間を気に入ってほんの遊びのつもりでドラゴンに襲わせたとか。楽しそうに過ごす人間を見て自分もなにか見世物遣ろうとして嵐をおこしたとか…とにかく神の感覚は人間基準だと災害にしかならない事がほとんどなんだよ」
「うわぁ~……」
過去に起こったことを引き合いに出して説明されるとその内容にナギは本気で引いたように声を漏らした。
なにせこれから自分の身に降りかかるのは今聞いた話に近い事である可能性が高いので仕方がないとも言える。ただナギは絶望したわけではなくてやる事が増えて大変だと考えていた。
そんな中ゴド爺さんは少し考えた後どこか疲れたようにしながら、ナギへと同情的な視線を向けながら口を開いた。
「ただ今回はナギ坊個人だけを狙ってるようだけどな」
「なんでそんな事が分かるんですか?」
「簡単な事だ、神は試練や遊びを目的にやり過ぎたことはあったけど、個人に対してわざわざメッセージを送ったりはしなかったからな。つまりその狡猾神とか言う神様は、相当ナギ坊の事を気に入っていると言う事だな!」
「えぇ~…面倒事はもう勘弁してほしかったんですけど」
「そこは厄介な神に気に入られた自分の不運を恨むしかないな」
「はぁ…」
そう言われてしまえばナギには何か言う元気も出ないのか力なく溜息を吐いて項垂れる。
分かりやすい程に落ち込んでいるナギの姿にゴド爺さんは少し笑いそうになったが、場の空気を考えて何とか我慢した。
しばらくすると落ち込んでいたナギはすっかり割り切ったように顔を上げた。
「今からいくら考えても仕方ないですね!とにかく何が有ってもいいように準備する事にします」
「おう、そうした方がいいだろうな。鍛冶に関してはワシにいくらでも聞け!力になってやる‼」
「それはもちろんお世話になります。ただ他にも使ってないスキルがあるんで、それを鍛えることを主軸において…あ、少し聞きたい事があるんですけどいいですか?」
今後の話をしていてナギは何かを思い出したようにゴド爺さんに質問する。
それに対してゴド爺さんは少し首を傾げたが断る理由もないし、何より神が関係する厄介事を一人で解決しろ!と突き放すような事をするつもりも無いので普通に受け入れた。
「別にかまわないぞ。何が聞きたいんだ?」
「ちょっとしたことなんですけど、この前のゴブリンキングでもレベルの上がり方が微妙になって来たんで何かいい方法がないかと思いまして」
「あぁ~そう言う事か、なら確かナギ坊は今は南の方に進んでいるんだったか?」
「はい、鉱山もあるんで何かと便利ですから」
「なら中腹にロック・ゴーレムがいるんだが今のナギ坊ならちょうどいい敵だろう、いい経験にもなるだろうし挑戦してみるといい。ついでにレベル50になれば面白い事があるぞ?」
そう言ったゴド爺さんはどこか楽しそうにニヤリと笑みを浮かべた。ただ説明を聞いていたナギは真剣な表情で何があるのかを考え着いた。
「つまり進化とかそんな感じのがレベル50になるとおこるってことですね。ロック・ゴーレムは面白そうですし行ってみることにします!」
「…いや、それよりもナギ坊の理解力の高さに驚いている」
「そうですか?結構普通だと思うんですけど」
不思議そうに首を傾げながらそう言ったナギだったが少し考えればわかる事だった。苦手にしていたとは言ってもナギには現代のゲームの知識が少しはある、しかし現代の知識のない人間が聞けば何が起こるかはすぐに理解できないのが普通だ。
だから詳しい説明もなくとも理解できたナギにゴド爺さんは関心を通り越して驚いていたのだ。
「…今更ナギ坊に関しては驚くだけ無駄だったな。なにせこの世界に来てまだそんなに経っていないのにゴブリン・キングと戦えるほどに成長しているんだ。なかなかに驚異的な速さだぞ?」
「それは元から武道を習っていたのもありますけどね。戦闘への恐怖心とかありませんでしたしね」
「たったそれだけで戦闘が十分にできるだけたいしたもんだろ」
感心したようにゴド爺さん後こういうのにはちゃんとした理由があった。実はゴド爺さんもナギ達以外にも数人のプレイヤーと遭遇したことがあった。
それは素材を集めるために自身で南の鉱山に向かっている時で、たまたま見かけたプレイヤーに興味を示して戦闘を少し見学した。しかし戦闘は確かに形にはなって言が何処か腰が引けている者やアーツ頼りの者達がほとんどで、純粋な戦闘力と言う点では全員が微妙としか言えなかった。
そんな他のプレイヤー達を実際に見ているだけにゴド爺さんにはナギの他とは違う特異性に気が付いた。
「まぁ…ナギ坊なら大抵の事は何とかなるだろ。それでも周囲の変化には気を付けるようにな?変化によっては、イタズラの内容のヒントを見つけられるかもしれないしの」
「確かにそうですね…今後はより一層に周囲に気を付けた方が良さそうですね」
「何が起きるか本気でわからんからな。そうしておくのがいいだろう、ワシも知り合いにそれとなく伝えておくとするか」
ゴド爺さんは真剣な面持ちでそう言うと話は終わりと判断したのかゆっくりと立ち上がって作業場を出て行った。
それを見送ってからナギは脱力して椅子の背もたれに寄りかかって天井を見上げながら少し考えていた。
「…さて、まずは言われた通りに南の鉱山のロック・ゴーレムでも倒しに行くか。でもその前に装備の耐久値を回復してもらって、消費した回復アイテムの補充…後ギルドにも一応顔を出さないと…って思った以上にやる事多いな~」
落ち着いてから改めてやらないといけない事を思い出したナギは、その量の多さにうんざりしたように言いながら勢いをつけて立ち上がった。
「ふぅ…とにかく厄介事の予感しかしないけど、のんびりとやっていくか!」
いろいろ吹っ切れたナギは自分に言い聞かせるようにそう言うと作業場を後にしてやることの消化に向かうのだった。その時になってナギが落ち着いたことに気が付いたソルテが飛び出して楽しそうに一緒に軽く話しながらゴド爺さんの店を後にした。
応援ありがとうございます!
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