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第四章 鍛冶師の国
第二百二十二話 鍛冶師の国
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そして紹介状を無事に受け取った渚は次の日も学校が終わるとすぐに帰宅してログインしていた。
今日向かうのは昨日ゴド爺さんから説明を受けているのでギルドに言ってついに他国へと行くのだ。そのためか向かうナギの足取りは何処かスキップするように軽やかだった。
ただ現在はAOでは夜中とは言え歩いているのは大通りのど真ん中でスキップのような歩き方をすれば嫌でも目立つわけで、夜のフィールドを割けて街に戻って来ていた王レイヤーたちにもの凄い不審者を見るような目で見られた。
もっともテンションの上がっているナギは周囲の視線など気にしていないので軽い足取りのまま冒険者ギルドまで着いた。
「すみません。国の移動について申請したいんですけどここで出来ますか?」
ギルドに着いたナギは人の少ない受付で念のために申請できるかの確認をした。
何か作業していた受付嬢はナギの顔を見るとちょっとだけ驚いた表情を浮かべたが、すぐに営業スマイルへと戻ってギルドカードを紹介状を確認した。
「…はい、こちらで受け付けられます。確認しますので少々お待ちください。
「わかりました」
軽く説明するとギルドカードと紹介状を受け取った受付嬢は奥へと確認しに向かった。
一応話を聞いた限り大丈夫だとはナギも思っていたが、こうして受理されるかどうかのタイミングになると大丈夫か少し不安に感じているようで何処か落ち着かない様子だった。
しばらくして確認作業を終えた受付嬢は戻って来てギルドカードと一緒に一枚のカードを渡してきた。
「確認が終わりましたのでギルドカードは返却します。それとこちらは入国許可証で今はゴルゴタ皇国に対してのみの許可証ですので、もし他の国に行きたい場合は改めて紹介状と一緒に提出してください」
「なるほど、わかりました」
「では転移門に案内します」
手短に説明を終えると受付嬢の案内に従ってギルドの奥の、更に地下に続く階段を下った先に見上げるほど巨大なクリスタルと魔法陣がある部屋へと着いた。
その幻想的な光景に見惚れていたナギだったがお構いなしに受付嬢は話を進める。
「このクリスタルに許可証をかざすと現在行ける国が選択肢に現れるので、行きたい国を選択すればその国の首都に送られます」
「わかりました。案内ありがとうございました」
「仕事ですから、お気になさらず。それでは良い旅を」
「はい!」
最後に快く見送ってもらってナギは言われたように許可証をクリスタルにかざすと光に包まれて転移した。
そして光が収まって目を開くとナギの目の前には始まりの街の噴水のような場所だったが、周囲の光景がまるで別物だった。
すべての建物が石造りで武骨な印象を与えていくつも並ぶ煙突からは夜中でも関係なく煙が昇っていた。
他にも居酒屋のような酒場が多く時間など関係ないような賑わいが聞こえて来た。
「おぉ~!」
そんな初めて見る光景にナギは感動したように声を漏らした。
なにせ軽く見回しただけでも一般人や冒険者と言った格好の物よりもツナギを身に纏った何かの職人のような恰好の者達が多かったのだ。
確かにナギは戦闘が好きだがそれ以上にAOでは生産職を極めたいと言う思いが強い。だからなのか同じように生産に従事する者に対して親近感を抱いていた。
ただ何時までも感動に浸って時間を無駄にするのも意味が無いのでナギは何とか頭を切り替えて移動する。
とは言っても初めての場所なのでやみくもに動いても目的の場所にただりつける訳も無いので、少し考えたナギは近くで夜でも屋台をやっている人の元へと向かった。
「あの~少し聞きたい事があるんですけどいいですか?」
「あん?なら何か買ってけ、そしたら何でも答えてやるよ」
「なら…これ何屋ですか?」
「なんでも屋だ」
「そうですか」
何か買えと言われたので改めてならば得られている品を確認したナギは困惑していた。
並べられていたのが何かの爪におそらく鉱石だと思われる正体不明な石と本当にいろいろ不思議…と言うには正体不明が過ぎる不気味な物も多く並んでいた。
それを見て他の店と違って人が居なかった理由を理解した。
「…これは何の鉱石?ですか…」
「そんなのはしらん。俺は取って来た物を売ってるだけだからな」
「そうですか…」
念のため店主に品物の正体を確認したがこう返されてしまっては何を言っても無駄だと分かったナギは、どうするか真剣に悩んでいた。
別に話を聞くだけなら他の人も大勢いるので買い物はせずに去っても問題ないのだが、直感が目の前の店主とは関わっておいた方がいい!そう言っている気がしてならなかった。
少し悩んだ末にナギは結論として自分の直感を信じることにした。
「この動物の爪と鉱石を5つください」
「はいよ、全部合わせて2000Gだ」
「安いですね」
「正体不明の物を高額で売りつけるほど性根は腐ってねぇよ」
「ははは…なるほど、これ料金です」
内心『なら最初から正体不明な物売るなよ』と言いたかったがナギは堪えて料金を支払って品物を受け取った。
これで最初に言われた通りに買い物したのでナギは話しかけた理由でもある質問をすることにした。
「それで質問なんですけど商業ギルドって何処にあるか知ってます?」
「むしろ何で知らない可能性を考えてんだ。商業ギルドはこの通りを真っ直ぐに行った先に小町では珍しい白くてきれいな建物がそうだ。他に冒険者ギルドはこの通りの外壁よりの場所に、生産ギルドは北西の方の工房街に工場のような外観の建物だ」
「へぇ~と言う事は、それぞれに役に立つ場所にギルドがあるんですね」
「大抵の国王都はこんな形になるんだよ。商業は中心街の奥の方が貴族やらが来て儲かり、冒険者は有事の際にすぐに動けるように門の近くへ、そして騒音やらなにやらの激しい生産は迷惑にならない場所へってな」
「あぁ…納得です」
それぞれ各ギルドが関係のありそうな場所にある理由を聞くとナギは少し苦笑いを浮かべながら納得したように頷いた。主に苦笑いの理由になっているのは生産ギルドのある場所の選定理由に対してだった。
確かに鍛冶を筆頭にしてだいたいの生産系の職業は大きな音がなる物が多く、音のならない調薬でも異臭やら有毒ガスなど周囲に迷惑になる現象が多く発生した過去があった。
ゆえに周囲から苦情が大量に寄せられた結果としてギルド連合の話し合いの元で生産ギルドは迷惑の掛からない場所に移転することに決まり、こうして元から騒音の激しい工房の並ぶ場所などに立つようになったのだ。
もっともナギは昔に起こった事など知りはしないので経験からの想像だったが理解できてしまったが故の苦笑い。でも一々気にしていても時間の無駄なのでナギは聞きたい話は聞けたので、早速移動することにした。
「それじゃ用事があるんで今日は行きますね。また機会が有ったらよらせてもらいます!」
「おう、何時もいる訳じゃねぇけどな。会うことがあったら、また何か買ってけよ」
「その時の品物によりますね~!それでは‼」
軽いやり取りで別れを告げるとナギは言われたように大通りを真っ直ぐ奥の砦…と言うよりも巨大要塞や工場と言える外観の王城方面へと進んだ。
しばらく進むと店が大衆的な商店からきらびやかな高級感なある店が並ぶ通りになって来た。
ショーウインドーに並ぶ商品も値段が桁違いに上がっていて展示されている短剣一本で100000Gもして、しかも並んでいる商品の中では格段に安い物を探してようやくだった。
更にはこうして少し歩いただけでも何処かから常に鎚を振るう音が響いて、他にも弟子に指導しているのか誰かの怒鳴る声も聞こえてきていた。
そんな独特の空気がナギはとにかく楽しくてしかたないと言った様子で笑顔を浮かべていた。
「やっぱりさすがは紹介で鍛冶師の国と言われるだけはあるな!ちゃんと確認するのは後にするにしても、今から本当に楽しみだな‼」
本当に楽しそうにナギはそう言うと今まで以上に軽い足取りで正式な店へと紹介状を受け取るために商業ギルドを目指すのだった。
今日向かうのは昨日ゴド爺さんから説明を受けているのでギルドに言ってついに他国へと行くのだ。そのためか向かうナギの足取りは何処かスキップするように軽やかだった。
ただ現在はAOでは夜中とは言え歩いているのは大通りのど真ん中でスキップのような歩き方をすれば嫌でも目立つわけで、夜のフィールドを割けて街に戻って来ていた王レイヤーたちにもの凄い不審者を見るような目で見られた。
もっともテンションの上がっているナギは周囲の視線など気にしていないので軽い足取りのまま冒険者ギルドまで着いた。
「すみません。国の移動について申請したいんですけどここで出来ますか?」
ギルドに着いたナギは人の少ない受付で念のために申請できるかの確認をした。
何か作業していた受付嬢はナギの顔を見るとちょっとだけ驚いた表情を浮かべたが、すぐに営業スマイルへと戻ってギルドカードを紹介状を確認した。
「…はい、こちらで受け付けられます。確認しますので少々お待ちください。
「わかりました」
軽く説明するとギルドカードと紹介状を受け取った受付嬢は奥へと確認しに向かった。
一応話を聞いた限り大丈夫だとはナギも思っていたが、こうして受理されるかどうかのタイミングになると大丈夫か少し不安に感じているようで何処か落ち着かない様子だった。
しばらくして確認作業を終えた受付嬢は戻って来てギルドカードと一緒に一枚のカードを渡してきた。
「確認が終わりましたのでギルドカードは返却します。それとこちらは入国許可証で今はゴルゴタ皇国に対してのみの許可証ですので、もし他の国に行きたい場合は改めて紹介状と一緒に提出してください」
「なるほど、わかりました」
「では転移門に案内します」
手短に説明を終えると受付嬢の案内に従ってギルドの奥の、更に地下に続く階段を下った先に見上げるほど巨大なクリスタルと魔法陣がある部屋へと着いた。
その幻想的な光景に見惚れていたナギだったがお構いなしに受付嬢は話を進める。
「このクリスタルに許可証をかざすと現在行ける国が選択肢に現れるので、行きたい国を選択すればその国の首都に送られます」
「わかりました。案内ありがとうございました」
「仕事ですから、お気になさらず。それでは良い旅を」
「はい!」
最後に快く見送ってもらってナギは言われたように許可証をクリスタルにかざすと光に包まれて転移した。
そして光が収まって目を開くとナギの目の前には始まりの街の噴水のような場所だったが、周囲の光景がまるで別物だった。
すべての建物が石造りで武骨な印象を与えていくつも並ぶ煙突からは夜中でも関係なく煙が昇っていた。
他にも居酒屋のような酒場が多く時間など関係ないような賑わいが聞こえて来た。
「おぉ~!」
そんな初めて見る光景にナギは感動したように声を漏らした。
なにせ軽く見回しただけでも一般人や冒険者と言った格好の物よりもツナギを身に纏った何かの職人のような恰好の者達が多かったのだ。
確かにナギは戦闘が好きだがそれ以上にAOでは生産職を極めたいと言う思いが強い。だからなのか同じように生産に従事する者に対して親近感を抱いていた。
ただ何時までも感動に浸って時間を無駄にするのも意味が無いのでナギは何とか頭を切り替えて移動する。
とは言っても初めての場所なのでやみくもに動いても目的の場所にただりつける訳も無いので、少し考えたナギは近くで夜でも屋台をやっている人の元へと向かった。
「あの~少し聞きたい事があるんですけどいいですか?」
「あん?なら何か買ってけ、そしたら何でも答えてやるよ」
「なら…これ何屋ですか?」
「なんでも屋だ」
「そうですか」
何か買えと言われたので改めてならば得られている品を確認したナギは困惑していた。
並べられていたのが何かの爪におそらく鉱石だと思われる正体不明な石と本当にいろいろ不思議…と言うには正体不明が過ぎる不気味な物も多く並んでいた。
それを見て他の店と違って人が居なかった理由を理解した。
「…これは何の鉱石?ですか…」
「そんなのはしらん。俺は取って来た物を売ってるだけだからな」
「そうですか…」
念のため店主に品物の正体を確認したがこう返されてしまっては何を言っても無駄だと分かったナギは、どうするか真剣に悩んでいた。
別に話を聞くだけなら他の人も大勢いるので買い物はせずに去っても問題ないのだが、直感が目の前の店主とは関わっておいた方がいい!そう言っている気がしてならなかった。
少し悩んだ末にナギは結論として自分の直感を信じることにした。
「この動物の爪と鉱石を5つください」
「はいよ、全部合わせて2000Gだ」
「安いですね」
「正体不明の物を高額で売りつけるほど性根は腐ってねぇよ」
「ははは…なるほど、これ料金です」
内心『なら最初から正体不明な物売るなよ』と言いたかったがナギは堪えて料金を支払って品物を受け取った。
これで最初に言われた通りに買い物したのでナギは話しかけた理由でもある質問をすることにした。
「それで質問なんですけど商業ギルドって何処にあるか知ってます?」
「むしろ何で知らない可能性を考えてんだ。商業ギルドはこの通りを真っ直ぐに行った先に小町では珍しい白くてきれいな建物がそうだ。他に冒険者ギルドはこの通りの外壁よりの場所に、生産ギルドは北西の方の工房街に工場のような外観の建物だ」
「へぇ~と言う事は、それぞれに役に立つ場所にギルドがあるんですね」
「大抵の国王都はこんな形になるんだよ。商業は中心街の奥の方が貴族やらが来て儲かり、冒険者は有事の際にすぐに動けるように門の近くへ、そして騒音やらなにやらの激しい生産は迷惑にならない場所へってな」
「あぁ…納得です」
それぞれ各ギルドが関係のありそうな場所にある理由を聞くとナギは少し苦笑いを浮かべながら納得したように頷いた。主に苦笑いの理由になっているのは生産ギルドのある場所の選定理由に対してだった。
確かに鍛冶を筆頭にしてだいたいの生産系の職業は大きな音がなる物が多く、音のならない調薬でも異臭やら有毒ガスなど周囲に迷惑になる現象が多く発生した過去があった。
ゆえに周囲から苦情が大量に寄せられた結果としてギルド連合の話し合いの元で生産ギルドは迷惑の掛からない場所に移転することに決まり、こうして元から騒音の激しい工房の並ぶ場所などに立つようになったのだ。
もっともナギは昔に起こった事など知りはしないので経験からの想像だったが理解できてしまったが故の苦笑い。でも一々気にしていても時間の無駄なのでナギは聞きたい話は聞けたので、早速移動することにした。
「それじゃ用事があるんで今日は行きますね。また機会が有ったらよらせてもらいます!」
「おう、何時もいる訳じゃねぇけどな。会うことがあったら、また何か買ってけよ」
「その時の品物によりますね~!それでは‼」
軽いやり取りで別れを告げるとナギは言われたように大通りを真っ直ぐ奥の砦…と言うよりも巨大要塞や工場と言える外観の王城方面へと進んだ。
しばらく進むと店が大衆的な商店からきらびやかな高級感なある店が並ぶ通りになって来た。
ショーウインドーに並ぶ商品も値段が桁違いに上がっていて展示されている短剣一本で100000Gもして、しかも並んでいる商品の中では格段に安い物を探してようやくだった。
更にはこうして少し歩いただけでも何処かから常に鎚を振るう音が響いて、他にも弟子に指導しているのか誰かの怒鳴る声も聞こえてきていた。
そんな独特の空気がナギはとにかく楽しくてしかたないと言った様子で笑顔を浮かべていた。
「やっぱりさすがは紹介で鍛冶師の国と言われるだけはあるな!ちゃんと確認するのは後にするにしても、今から本当に楽しみだな‼」
本当に楽しそうにナギはそう言うと今まで以上に軽い足取りで正式な店へと紹介状を受け取るために商業ギルドを目指すのだった。
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