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大六章 死神戦

第二百八十七話 骸の城《9》

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「この通路は何処まで続いているんだ?」

 いくら歩いても先へとつく様子のないことに、ついに我慢の限界を超えたナギは少し責めるような口調でデス・フラワーゴーレムを問い質した。
 その声を聞いて一度も止まることなく淡々と歩いていたデス・フラワーゴーレムも足を止めて振り向いた。

「何かご不満な事でもありましたか?」

「不満と言うほどではないが、この延々と続く通路はいつまで続くんだ?」

「そうですね。もうしばらくは確実に…とだけは断言しておきましょう」

「なるほど、引き留めてすまなかった」

「いえ、お気になさらず。これも仕事ですから」

 話が終わるとデス・フラワーゴーレムは改めて静かに通路を先導し始めた。
 そして話を聞いたナギは通路がどういう場所なのか考えながら後ろからついて行った。もはやナギがどうするかに任せてソルテや鎧達は何をするでもなく大人しくしていた。
 しばらくの間は黙って考え事に没頭していたナギは頭の中だけでは限界があると判断して、誰にもばれないように静かに確認のために動いていた。

 歩いている途中でそれを目視で確認したナギは急に足を止めて、それに気が付いたデス・フラワーゴーレムも止まった。

「どうかなさいましたか?」

 振り返ったデス・フラワーゴーレムは無感情で抑揚のない声で確認してきた。しかも顔は作り物のように整っているので不気味さが数段高くなっていた。
 その証拠に鎧達やソルテはおびえたように腰が引けていた。なにより鎧達は強者ゆえに目の前のデス・フラワーゴーレムには勝てないと理解させられて、より怯えていたのだ。

 しかしナギは敵対する可能性も考慮に入れて考えたうえで行動しているので、いまさら怯えたりすることはなかった。

「この通路はループしているな」

「ループですか」

「もっとわかりやすく言えば、ドーナツのように入り口と出口がつながって輪っかのような状態ってかんじか。実際に輪っか状になっているわけではないだろうけどな」

 補足で少し嫌味ったらしい表情でナギは自分の考えをつらつらと述べた。
 この予想が当たっているのか外れているのかはデス・フラワーゴーレムの答えを聞くまでわからないが、だが不思議なことにナギは絶対の自信を持っているように見えた。
 そして少し待つとデス・フラワーゴーレムは明確に感情が見える笑みを浮かべていた。

「ふっ!正解でございます。ただ、それでは条件は達成できてはおりません」

「つまりは自力で気が付いて、そのうえで自力で抜け出せってことか」

「そうなります。私はこのまま先導を続けますので、皆様はどうぞ思案をお続けください」

 それだけ言うとデス・フラワーゴーレムは振り返って先導を再開してしまった。
 まだ先導がいない状況でどうなるのかがわかっていないような状況で試すのはリスクが高すぎると判断してナギは慌てて後を追い、他のソルテや鎧達も駆け足でついて行った。
 しばらくは大人しく後について行きながらナギは周囲の扉や花瓶などの調度品を細かく観察していた。

 しかし最初に気が付く原因となったように石を置いたりしても、数分後には同じ場所を通るだけで何も変化がなかった。そのことに徐々に苛立ちが募っていたが起こったところで何が解決するわけでもないので、なんとか落ち着きながら冷静に物事を観察していた。
 それでもどうやっても見ているだけでは何も見つけられずナギは賭けに出ることにした。

「ふぅ…よし」

 静かに息を吐きだして覚悟を決めたナギはゆっくりと足を止めた。
 そうすれば先を進むデス・フラワーゴーレムとの間が確実に広がっていくことになった。

 この行動に鎧達はどうすればいいのか戸惑ってデス・フラワーゴーレムとナギの間で右往左往していた。
 だがナギもデス・フラワーゴーレム気にすることなく動くので、鎧達は最終的には借りとは言っても忠誠を誓ったナギのそばに残ることにしたのだった。
 そして止まったナギはデス・フラワーゴーレムの姿が遠くなっていくのを確認しながら周囲を見回した。

「さて、これでどうなるのか完全に予想できないが…一先ず調べてみるか」

 なにもしないで止まっているだけでは意味がないのでナギは何が起きてもいいように警戒しながら調べ始めた。
 まずは先ほどまで居たエントランスのように調度品に何か仕掛けが無いか細かく確認していった。色に合わせた属性の魔力を流し込んだり、角度を変えたりと思いつく限りの事を試した。
 しかし通路のどこにも変化は現れなかった。

「やっぱりダメか…だとすると、可能性があるのは扉だな」

 扉はエントランスでは一つも開くことができなかったので、この館に来てからナギたちはまだ一度も部屋と言う場所を確認していたなかった。
 それだけに罠があるのかどうか?魔物がいるかどうか?などなど何一つわかっていない状態でのリスク覚悟での行動だ。しかしすでに案内役から離れるという行動に出ているナギにとってはハードルは高くはなかった。

「失礼しま~す!」

 まるで友達の家にでも行くような軽い挨拶と共に近い部屋の扉を開けていた。
 開かないかの確認すらしていないので最悪の場合開かなかった事を考えると開いただけ最初の関門は突破、だが一番の問題はその先にある部屋に何が待っているのかという事だった。

 そして入った部屋は特になにか変なところは見当たらず高級感のあるソファーと机が置かれて壁には本棚、後は細かな調度品が並んでいる一般的な豪華な部屋!といった印象だった。
 罠や敵の存在を考えていたナギは拍子抜けした様子だったがソルテや鎧達は心底安心していた。

「ふむ…何かヒントでもないかな」

 すぐに気を持ち直したナギはゆっくりと部屋の奥に入って調べることにしたのだった。
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