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4.レベル99
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コールスはあっけにとられていた。
「どういうことですか?」
「私が所有しているこれらのスキルをあなたに移すことができるんです。スキルは無限に複製されますから、無くなることはありません」
と、アナスタシアは言った。
“スキルが複製される”
“スキルを他人に付与できる”
どちらもコールスには初耳だった。
だから、にわかには信じられなかった。
(騙されてるんじゃないか?)
今の彼は、パーティに突き落とされたこともあって、少し人間不信になりかけていた。
しかし一方では、
(今さら何をビビるんだ?)
とも思った。
わけの分からない呪いのせいで、(いくらレベルが高いとはいえ)自分のスキルは実質使えない。
このままの状態で、ダンジョンを無事に抜けられるとは思えない。
ならば、この少女の提案に乗るのも一手じゃないか?
「分かりました、それじゃあ……」
コールスはアナスタシアを取り巻くスキル画面を眺めた。
あのギガントウォーリアに対抗するなら、どれがいいだろうか?
今、コールスが身に着けている武器は、片手ナイフ1本。
後は探索に使う小型ハンマーくらい。
いくら戦闘用スキルがあっても、これで巨大モンスターに立ち向かえるとは思えない。
(だから、武器も代わりのものを用意しなくては)
目を付けたのは、辺りに転がっている岩の槍だ。
槍状に尖った岩を奴に投げつけられないだろうか。
(そのために必要なスキルは……これだ!)
「“腕力強化”と“投てき強化”をください」
「分かりました!」
アナスタシアの声に合わせて、球状に並んだ幾百のスキル画面はぐるっと動き、その中で2つだけ白く輝くスキルが現れた。
そして、2つの画面は、コールスのほうにせり出した。
“腕力強化”と“投てき強化”だ。
「その画面に触れてください」
少女の声に従って指で触れると、画面は消えて、代わりにコールスの身体が一瞬強く光った。
「確認してみますね」
とコールスは言って、ステータス画面を開いた。
スキル項目を開くと……あった!
“腕力強化” レベル99 使用可能1
“投てき強化” レベル99 使用可能1
「きゅ、99?」
驚きの声を上げたのは、アナスタシアのほうだった。
グルルルルル!!
唸り声とこちらに向かってくる地響き。
「マズい、気づかれた!」
コールスは急いで岩の隙間から這い出た。
巨大な斧を振り上げて狂戦士は襲い掛かってくる。
少年はスキルを発動させ、手近にあった岩の槍に手をかけた。
身長の何倍もの長さがあるのに、まるで羽根でも持っているかのように軽い。
「よし!」
岩槍を担ぎ上げて、モンスターと向き合う。
グオオオオオ!!
奴が斧を振り上げ、ガードがなくなった瞬間。
「やあああああああっ!!」
コールスは思い切り槍を投げた。
ズン!!
高速で上空へと飛び出した槍は、低い響きとともにギガントウォーリアの腹を貫いた。
「グア……」
うめき声も空しく、モンスターは槍ごと遠くへと吹き飛び、向こうの壁へと叩きつけられた。
ズダァアアアン!!
「うわあぁ!!」
衝撃が地面を揺らした。
やがて、揺れは収まったが、コールスは目の前の光景が信じられなかった。
「す……ごい……」
はるか先で、岩壁に磔になったモンスターの巨体。
それはアーマーミノタウロスより数段強い奴だ。
(“暁の鷹”でも到底かなわない相手を、一瞬で、このボクが?)
コールスは震える両手を見つめた。
何の変哲もない自分の手。
けれど、この手は、コールスの“世界”を一瞬で変えていたのだ。
「どういうことですか?」
「私が所有しているこれらのスキルをあなたに移すことができるんです。スキルは無限に複製されますから、無くなることはありません」
と、アナスタシアは言った。
“スキルが複製される”
“スキルを他人に付与できる”
どちらもコールスには初耳だった。
だから、にわかには信じられなかった。
(騙されてるんじゃないか?)
今の彼は、パーティに突き落とされたこともあって、少し人間不信になりかけていた。
しかし一方では、
(今さら何をビビるんだ?)
とも思った。
わけの分からない呪いのせいで、(いくらレベルが高いとはいえ)自分のスキルは実質使えない。
このままの状態で、ダンジョンを無事に抜けられるとは思えない。
ならば、この少女の提案に乗るのも一手じゃないか?
「分かりました、それじゃあ……」
コールスはアナスタシアを取り巻くスキル画面を眺めた。
あのギガントウォーリアに対抗するなら、どれがいいだろうか?
今、コールスが身に着けている武器は、片手ナイフ1本。
後は探索に使う小型ハンマーくらい。
いくら戦闘用スキルがあっても、これで巨大モンスターに立ち向かえるとは思えない。
(だから、武器も代わりのものを用意しなくては)
目を付けたのは、辺りに転がっている岩の槍だ。
槍状に尖った岩を奴に投げつけられないだろうか。
(そのために必要なスキルは……これだ!)
「“腕力強化”と“投てき強化”をください」
「分かりました!」
アナスタシアの声に合わせて、球状に並んだ幾百のスキル画面はぐるっと動き、その中で2つだけ白く輝くスキルが現れた。
そして、2つの画面は、コールスのほうにせり出した。
“腕力強化”と“投てき強化”だ。
「その画面に触れてください」
少女の声に従って指で触れると、画面は消えて、代わりにコールスの身体が一瞬強く光った。
「確認してみますね」
とコールスは言って、ステータス画面を開いた。
スキル項目を開くと……あった!
“腕力強化” レベル99 使用可能1
“投てき強化” レベル99 使用可能1
「きゅ、99?」
驚きの声を上げたのは、アナスタシアのほうだった。
グルルルルル!!
唸り声とこちらに向かってくる地響き。
「マズい、気づかれた!」
コールスは急いで岩の隙間から這い出た。
巨大な斧を振り上げて狂戦士は襲い掛かってくる。
少年はスキルを発動させ、手近にあった岩の槍に手をかけた。
身長の何倍もの長さがあるのに、まるで羽根でも持っているかのように軽い。
「よし!」
岩槍を担ぎ上げて、モンスターと向き合う。
グオオオオオ!!
奴が斧を振り上げ、ガードがなくなった瞬間。
「やあああああああっ!!」
コールスは思い切り槍を投げた。
ズン!!
高速で上空へと飛び出した槍は、低い響きとともにギガントウォーリアの腹を貫いた。
「グア……」
うめき声も空しく、モンスターは槍ごと遠くへと吹き飛び、向こうの壁へと叩きつけられた。
ズダァアアアン!!
「うわあぁ!!」
衝撃が地面を揺らした。
やがて、揺れは収まったが、コールスは目の前の光景が信じられなかった。
「す……ごい……」
はるか先で、岩壁に磔になったモンスターの巨体。
それはアーマーミノタウロスより数段強い奴だ。
(“暁の鷹”でも到底かなわない相手を、一瞬で、このボクが?)
コールスは震える両手を見つめた。
何の変哲もない自分の手。
けれど、この手は、コールスの“世界”を一瞬で変えていたのだ。
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