「溺愛ビギナー」◆幼馴染みで相方。ずっと片想いしてたのに――まさかの溺愛宣言!◆

星井 悠里

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第30話

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 着替え終わって智さんの元に戻ると、また別の部屋に連れてこられた。
 中に入ると、すでにスタンバイしてたインタビュアーさんが、立ちあがった。随分若い女の子。二十才位とかかな。ちょっと珍しい。

「蒼紫さん、涼さん初めまして。私、元々Crossの大ファンなんです。今回雑誌の企画で、初めて取材させていただきます。モデルの虹丘 美紀にじおか みきです。よろしくお願いします」

 モデル雑誌の企画か。なるほど。隣に居て挨拶してる人が本来の取材担当の人なんだろうな。と挨拶しながら、予想を付ける。
 蒼紫と一緒にその二人の向かいに腰かける。

 しばらく話していると、段々感じてきた。

 Crossの大ファンとはいったけれど。

 彼女は蒼紫の大ファンなんだな。
 それがバレないように、最大限にオレにも気を使ってるみたいだけれど、視線を投げかける回数が、蒼紫に対して多いし。着ている服の色も蒼紫の好きだと公表されている青系。アクセサリーも、前に蒼紫が名前を挙げてたブランドのもの。

 大好きなんだろうなあ……。
 別に、それについては何も思わない。

 蒼紫は昔からものすごくモテたし、芸能界とか話が出始めた時も、絶対、売れるんだろうなーと、友達の欲目抜きにしても、確信していたし。

 でも、こうして、蒼紫を大好きな、超綺麗な人を目の前に見ていると。
 やっぱりちょっと複雑。

 オレを好きだと言ってくれたけど。
 ……芸能界なんかに居ると、普通のレベルをはるかに超えてる可愛いとか綺麗な子が、いっぱい居る。

 ……いつ、女の子が良いって言うか、分かんないよな。

 ……うーん、でも。
 さっきの話だと、蒼紫って、幼稚園の入園式から、オレのことが可愛いの??

 そう思うと、もしかしたらかなり特殊な趣味で、
 さらに、ものすごく、執着な感じでの性質ってことなのかな。

 ――それなら、他にはいかないでくれたりするかなあ?

 うーん。それでも、人の気持ちなんて、分かんないけど。
 ……あ、でもオレが蒼紫を好きなのは、一生な気がするけど。

「涼さんはどうですか?」
「――」

「涼?」

 蒼紫を熱っぽく見つめる虹丘さんをぼんやりと見ていたオレは、呼びかけられた言葉に反応するのが遅れた。蒼紫に、つん、と腕を押される。

「え…… あ、すみません」
「いえいえ、お疲れですよね」

 すかさず言ってくれるのは、彼女が気が利く人である証拠。

「いえ、ほんとにすみません。好きなタイプ、ですよね」
「はい」

 蒼紫は……なんて答えたんだろ。聞いてなかった。
 ちら、と蒼紫を見ると、ん?と少し笑む。

 なんでこんな、これだけのことで、こんなにカッコいいんだか。

「優しい子、ですね」

 言うと、虹丘さんがにっこり笑った。

「ちなみにお二人、年上の女性とかはいかがですか?」

 蒼紫は、ふ、と、笑った。

「年上でも全然。好きになったら全然関係ないです」
「オレも」

 好きになったら。
 何にも、関係ないのかも、しれない。

 それを聞くと、虹丘さんはにっこり笑った。

「わかりました! 今回のこの記事が好評だったら、私、この先、二人の取材担当になれるかもしれないので、頑張って、お話まとめますね! 今日はありがとうございました」

 挨拶をすませた所で智さんが間に入ってきて、お開きとなった。向こうの二人が出て行って、智さんがオレ達に向き直る。

「お疲れ、あと二社。写真撮影は一着ずつだからすぐ終わるからね」
「はい」

「とりあえず、N社って札が付いてる服に着替えて、さっきの撮影の部屋に来てくれる?」
「分かりました」

 蒼紫と着替える部屋の中に入ると、蒼紫がまた鍵を閉めた。

「蒼紫? カギ閉めると、怪しまれるよ?」
「着替えてるからってことにすりゃ平気」

 鍵を閉める音に気付いてそう言ったら、蒼紫はちょっと笑ってそう答えて。そうかなあ? と言ったオレは、またまた抱き締められてしまった。

「蒼紫??」
「何、さっきぼーっと、彼女見つめてたの」
「は?」

 くす、と笑って、オレの頬に触れる。

「涼の好みだよな。線の細い、可愛い、優しそうな子」
「え?」

 言われた内容がやっと意味が分かっても、そんなことはまるで考えてなかったので、蒼紫を見上げて、眉をひそめてしまう。

 オレの顔を見て、蒼紫は、ぷ、と笑った。

「違った?」
「全然違うよ」

「――じゃあなんで見つめてたの?」
「あの子、蒼紫の大ファンなんだろうなーと思ってただけ」
「ああ、服の色とか? アクセサリーとか?」
「気づくんだね、蒼紫」
「あれはあからさまだろ。気づくわ」

「すごくキレイな子だなーと思って。蒼紫のこと大好きなんだろうなあって思ってたら何かぼーっとしてただけ」
「――」

「ていうか、オレ、今まで、確かにそういう子好きって蒼紫に言ってきたけどさ」

 蒼紫の腕の中から、蒼紫をまっすぐ見上げる。

「蒼紫にバレないようにそれ言ってきただけで。女の子の中で好きなタイプ聞かれたらそうだけど、もう今そんな必要ないし。――変な気持ちで見つめたりなんか、しないよ?」

 頬に手がかかったと思った瞬間、唇が重なってくる。

「かわいー……」

 離れた唇の間でそう囁かれて。
 も一度、キスされる。



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