【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇週末の色々

◇ステージから降りて*優月

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 本当にあっという間に、ライブが進んでいって。
 
 
「次がラストの曲――――……」


 え。――――……もうラスト?
 早い……。ずっと聞いてたいのにな。

 お客さん皆がそうみたいで、えー、というような声が響く。
  

「――――……柄じゃねえけど」

 玲央が不意にそう言って。静かになった客席を見渡してから、最後に、こっちを見た。



「颯也が作ったこの曲の意味が、最近少し分かった気がしてて」

 そう言った玲央に、ステージの上の3人は、ふ、と笑顔になってる。


「ラストは、この曲――――……Love」

 曲名を言った瞬間、ざわついた。
 ざわつく意味が分からない。

 曲を知らないと、ダメだね。
 ――――……今度は、もう、全曲覚えてから、参加しよ。



 好きな人が出来て、世界が変わった、という歌だった。
 愛してる、という気持ちを素直に歌う曲、だった。


 玲央がその意味を分かるとか言ったから、あんなにざわついたのかと思ったら、何だか少しおかしいけど。


 ――――……最近、少し、分かったって。
 …………玲央が言ったのって――――……それって。


 その先を言葉にするのは、何だか少し、図々しいような気がして。

 ただ玲央を見つめていたら。
 玲央が、ふ、とオレを見て、瞳を緩めた。


「なんか玲央、今日めっちゃこっちも見てくれるよね」
「ほんとー!」

 少し離れた席の女の子達がそんな風に言ってる。

 んーと……? そんなのを聞いてる心配になってくる。

 玲央って。――――……オレを見て、くれてるんだよね?
 ていうか、ここに居る人達、皆、目が合ったとかできっと、すごく喜んでたりするんだろうな。

 実はオレを見てない……?とかだと、ちょっと、悲しいけど。
 そんなこと、無いよね……? とか。
 ちょっと心配になってしまったりするのは。

 あまりにキラキラしすぎだから。
 ――――……やっぱりなんだか、玲央とオレがって事が、不思議に思ってしまうから。

 上手い下手とかは、他を知らないから、正直分かんないけど。って、オレにとったら、神様レベルで上手だけど。

 ただ、熱気のすごさは、体感として分かった。これ以上ないくらいの、客席の熱気。これが人気の証なら、玲央たちのバンドは、本当にすごいんだと思う。

 最後の曲が終わって。一回、全員袖に引っ込んだのだけれど。
 すごく盛り上がったままアンコールになって。

 熱気に包まれたまま、ライブが、終わった。
 ステージから玲央たちが居なくなって。歓声が次第に止んで。
 
 ライブ終了を告げるアナウンスが流れると、皆、自然と出口へと向かい始める。ぼー、とステージを見ていたけれど、あ、そろそろ出ないと、と立ち上がりかけた時。ここまで案内してくれた女の子が駆け寄ってきて、そのままここで待っててくださいと、言った。

「――――……」

 良く分からないまま頷いて、また座っていると、もう誰も居なくなってしまって。さっきまでが信じられない位、静か。立ち上がって、手すりにもたれて、下のステージを覗き込む。

 ついさっきまで、玲央があそこで――――……。

 ひたすら余韻に浸りまくっていたら。

 とんとん、と、足音がして。

「優月」

 呼ばれたと同時に、腕を引かれて、抱き締められた。
 目の前にきた服は、ステージで着てた衣装とは違う。

「玲央……」

 腕の中から、玲央を見上げると。
 玲央はふ、と笑って。顔を傾けて、近づいてきた。

「――――……」

 触れるだけの、キスをされる。


「玲央――――……カッコよくて、死にそうだった」
「は? 死にそう?」

 クスクス笑って、玲央が頬に触れる。

「すっごい、良かった。ほんとに、ありがと」
「――――……ん」


 ふ、と笑んだ玲央に、今度はめちゃくちゃ深くキスされる。


「……ん……っ……」
「――――……すげえ泣いてたろ」

 キスを少し離して、玲央が囁く。

「……うん。だって。……良すぎて」

 言った唇をまた塞がれる。
 舌が絡めとられて、また一気に深くなって。

「っれ、お……」

 また立てなくなりそうで。
 一度、唇の間で名を呼ぶと、玲央が、くす、と笑った。
 

「――――……オレ、向こうから、優月だけが、すごいよく見えてさ」
「……?」

「お前だけ浮かんで見える感じ。不思議だった」
「――――……何それ……」

「オレがお前を見てた時、お前ちゃんと分かってた?」
「うん、多分……」

「泣いてるし、すげー抱き締めたかった」

 クスクス笑って。
 ――――……玲央が、オレをぎゅうっと抱き締める。


「――――……」


 あーなんか。
 ……キラキラ離れたとこから、オレの所に、戻ってきてくれた、みたいな。 
 …………まあ、それでも、キラキラしてる事にかわりはないけど。


「着替えたんだね、玲央」
「ん。汗すごかったから。――――……汗臭い?」
「ううん。 玲央はいっつもいい匂い」

「――――……いっつも?」
「うん」

 クスクス笑って、玲央はオレの頬に口づけた。


「優月、楽屋行こ、おいで」
「え。行っていいの?」

「ここ、すぐ掃除入るし。楽屋はメンバーと、あと少しの人しかいねーから、大丈夫。つか、ここに留めとくように受付の子に頼んだの、勇紀なんだよ。オレが着替え終わってお前に電話しようと思ったら、ここに居るからすぐ迎え行けって」

「あ、そうなんだ……」

「……連れてきてってワクワクしてたし、多分相当弄られるから、覚悟して」
「ん?? どういう意味?」

「行けばすぐ分かる。――――……こっちから裏に行けるから。おいで」

 手を取られて、出入り口とは違う方に玲央が進む。
 そのまま、玲央について、廊下を進んだ。


 色んな人が居ても特に何も気にせず、玲央はオレの手を引いて歩く。
 玲央が全然気にしないで、掛けられる声にも普通に答えてるから、何となく、そのままでもいいのかなと思えたりして。
 


 なんか。

 こういうのも。
 こそこそ隠したりしないんだなあ、なんて思うと。


 かっこいーなーなんて思って。

 
 
 遠いステージから降りて、こんなにくっついて、オレの手を引いてくれる玲央が嬉しかった。







 
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