3 / 16
第一章
第2話
しおりを挟む自分のクラスの写真を見ていたら、仲の良かった友達、斎藤亮介の顔。
今度はモヤモヤした気持ちが沸き起こった。
思い出したくない過去の、ふたつめは、ついこないだ。
中学の卒業式の後。クラスで集まって、カラオケで楽しく卒業パーティーをした帰り。
親友だと思ってた亮介と二人になって、歩いていた時のこと。
不意に、「一目惚れだったんだ」と言われた。
一瞬、冗談かと思ったけど、亮介の顔は、真剣だった。
一目惚れという言葉に強張ってるオレには気付かず、亮介は続けた。
「会った時から、好きだったんだと思う。付き合って、みてくれないかな」
「一目惚れって……顔が好きってこと?」
「え?」
亮介は、オレの質問に、不思議そうな顔をした。
「確かに一目惚れではあったけど」
別に男同士とかの偏見はない。びっくりはしたけど、問題は、そっちじゃない。オレのトラウマ、なんで抉ってくるのかな、と泣きたい。
――なんで「一目惚れ」?
中学の入学式で話してから、ずっとクラス一緒で仲良かったのに。それで告白するって時に最初に言うのが、なんで「一目惚れ」?
「……オレの顔が、これじゃなかったら、好きになってない?」
「え、だって、翠は、その顔だし。って、別に顔だけが好きな訳じゃないけど」
亮介、困った顔してる。亮介に思うことを伝えたい。でも何と言えばいいのか、自分でもよく分からない。
一目惚れという言葉に対しての嫌悪感が、急にむくむくと心の中にいっぱいにあふれてしまった。
「――ごめん。亮介。付き合えない」
そう言ったら、亮介は、一度唇を噛んだ。それから。
「分かった……はは。まあそうだよな!」
亮介は、少し黙った後、急に明るく笑った。
「高校、別れちゃうからさ。ワンチャンあるかなって思って、言ってみたけど。無いよな。分かってた」
最初のトーンとはだいぶ言い方が違う。なんだかめちゃくちゃ軽くそんな風に言って、ケラケラと笑う亮介に、オレはなんだかムッとしてしまった。
「だよなー。ごめんごめん。冗談。軽く言ってみただけ」
「冗談になってないし。亮介、しばらく顔見たくない」
「はは。まあ――なかなか見れなくなるだろ。学校違うと」
「そうだけど」
少しの沈黙。オレは、咄嗟に言った自分の言葉を後悔しながら、なんだか耐えられなくなって、口を開いた。
「つか、皆で遊べばいいじゃん。学校、違っても」
「まあそうだよな――」
そこで、いつも別れる場所にたどりついた。
亮介は、ふ、と息をついて、それから。
「翠、元気でな?」
なんだか改まった感じで、そう言われた。
「亮介も……って、どうせまたすぐ会うでしょ」
「ん。だよな。じゃあな、翠」
一応頷いて、またね、と別れて歩き出す。気になって振り返ると、亮介もこっちを見てて、目が合った。バイバイと手を振られて、オレも振り返す。
歩き出して――オレは、だんだん俯いた。
亮介は、本当はどんな気持ちだったんだろう。
好きだったって、本気だったのかな。最後、気まずいから冗談にした? それとも、顔が好きで、ほんとにワンチャン、とか軽く? そんな奴じゃないと思いたいけど、もう何がなんだか分からなくなってくる。
いや、でも、一目惚れって、結局は顔ってことだよな。そんなの、大した好きじゃないよな?
つか、三年間、ずっと仲良かったのに、卒業式が終わって出てきた言葉が一目惚れって。
家までの道を一人、歩きながら、少しずついろいろ思い起こして。
オレは、首を横に振った。
その拍子に、ぼろ、と涙が零れた。すぐに手の甲で、ごし、と拭う。
ずっと、仲良くしてたし、これからも仲良くしていけると思ってた。
でも、亮介の最後の顔。
――もう今迄みたいには居られないのかな。なんか、そんな気がした。
親友だと思ってた奴と、最大限に気まずくなって別れた、卒業の日だった。
159
あなたにおすすめの小説
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる