一目惚れなんてしてないってば!

星井 悠里

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第一章

第2話

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 自分のクラスの写真を見ていたら、仲の良かった友達、斎藤亮介さいとうりょうすけの顔。
 今度はモヤモヤした気持ちが沸き起こった。


 思い出したくない過去の、ふたつめは、ついこないだ。


 中学の卒業式の後。クラスで集まって、カラオケで楽しく卒業パーティーをした帰り。
 親友だと思ってた亮介と二人になって、歩いていた時のこと。
 不意に、「一目惚れだったんだ」と言われた。

 一瞬、冗談かと思ったけど、亮介の顔は、真剣だった。
 一目惚れという言葉に強張ってるオレには気付かず、亮介は続けた。

「会った時から、好きだったんだと思う。付き合って、みてくれないかな」
「一目惚れって……顔が好きってこと?」
「え?」

 亮介は、オレの質問に、不思議そうな顔をした。

「確かに一目惚れではあったけど」

 別に男同士とかの偏見はない。びっくりはしたけど、問題は、そっちじゃない。オレのトラウマ、なんで抉ってくるのかな、と泣きたい。
 ――なんで「一目惚れ」?
 中学の入学式で話してから、ずっとクラス一緒で仲良かったのに。それで告白するって時に最初に言うのが、なんで「一目惚れ」?

「……オレの顔が、これじゃなかったら、好きになってない?」
「え、だって、翠は、その顔だし。って、別に顔だけが好きな訳じゃないけど」

 亮介、困った顔してる。亮介に思うことを伝えたい。でも何と言えばいいのか、自分でもよく分からない。
 一目惚れという言葉に対しての嫌悪感が、急にむくむくと心の中にいっぱいにあふれてしまった。

「――ごめん。亮介。付き合えない」

 そう言ったら、亮介は、一度唇を噛んだ。それから。

「分かった……はは。まあそうだよな!」

 亮介は、少し黙った後、急に明るく笑った。

「高校、別れちゃうからさ。ワンチャンあるかなって思って、言ってみたけど。無いよな。分かってた」

 最初のトーンとはだいぶ言い方が違う。なんだかめちゃくちゃ軽くそんな風に言って、ケラケラと笑う亮介に、オレはなんだかムッとしてしまった。

「だよなー。ごめんごめん。冗談。軽く言ってみただけ」
「冗談になってないし。亮介、しばらく顔見たくない」
「はは。まあ――なかなか見れなくなるだろ。学校違うと」
「そうだけど」

 少しの沈黙。オレは、咄嗟に言った自分の言葉を後悔しながら、なんだか耐えられなくなって、口を開いた。

「つか、皆で遊べばいいじゃん。学校、違っても」
「まあそうだよな――」

 そこで、いつも別れる場所にたどりついた。
 亮介は、ふ、と息をついて、それから。

「翠、元気でな?」

 なんだか改まった感じで、そう言われた。

「亮介も……って、どうせまたすぐ会うでしょ」
「ん。だよな。じゃあな、翠」

 一応頷いて、またね、と別れて歩き出す。気になって振り返ると、亮介もこっちを見てて、目が合った。バイバイと手を振られて、オレも振り返す。

 歩き出して――オレは、だんだん俯いた。

 亮介は、本当はどんな気持ちだったんだろう。
 好きだったって、本気だったのかな。最後、気まずいから冗談にした? それとも、顔が好きで、ほんとにワンチャン、とか軽く? そんな奴じゃないと思いたいけど、もう何がなんだか分からなくなってくる。

 いや、でも、一目惚れって、結局は顔ってことだよな。そんなの、大した好きじゃないよな?
 つか、三年間、ずっと仲良かったのに、卒業式が終わって出てきた言葉が一目惚れって。

 家までの道を一人、歩きながら、少しずついろいろ思い起こして。
 オレは、首を横に振った。
 その拍子に、ぼろ、と涙が零れた。すぐに手の甲で、ごし、と拭う。

 ずっと、仲良くしてたし、これからも仲良くしていけると思ってた。
 でも、亮介の最後の顔。
 ――もう今迄みたいには居られないのかな。なんか、そんな気がした。

 親友だと思ってた奴と、最大限に気まずくなって別れた、卒業の日だった。


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