10 / 16
第一章
第9話
しおりを挟む少し時間が経って、落ち着いてきた。ドキドキも収まって、もう一度、深呼吸をした。
幸い、さっきの奴、クラスは違うみたい。人がだいぶ増えてきて、集合時間も近づいてきたけど、今になってもまだ入ってこないし。
別のクラスってことは、そもそも接点は少ないだろう。
よかった。さっきのは完全に忘れて、リセットしよう。
入学式の日から、すべて狂っちゃうところだった。危ない危ない。
教室を振り返って、くるりと見回す。出席番号順みたいで、番号のシールが机についている。リュックは机のフックに掛けるらしい。リュックしょったままずっと外を眺めてるとか、オレ、変だったかも。反省しながら、自分の番号の席に座った時、前の席の奴が振り返った。オレと目が合うと、ニコッと笑った。
「なあ、名前、何?」
そう聞いてくる。短めの黒髪。人懐こそうで、人の好さそうな笑顔と明るい声。直感的に、仲良くなれそうと思った。
「久藤 翠だよ。翠でいいよ」
「翠ね。オレ、鎌田 陸かまたりく」
「陸って呼ぶね。よろしく」
可愛い喋り方はしない。ちゃんと男っぽく。できてるよね? ていうか、元々オレ、中身は女の子っぽいってことはないはずだし。それに、陸はそういう心配はしなくて平気そう。……と言ってもなぁ。真意は分からないけど、亮介のこともあるしな。一瞬気持ちが落ちかけたけど、すぐに、陸が楽しそうに話し始めた。
「翠は何部に入るか、決めてる?」
「バスケに決めてる」
「え、オレも!」
「えー、ますますよろしく!」
わー、マジで仲良くなれそう。と、喜んでいたところに先生が入ってきて、最初のホームルームが始まった。三十代くらいの男の先生だ。坂本先生と言うらしい。ちょっと丸っこいフォルムの、優しそうな人だ。良かった、怖そうじゃなくて、なんて思ったりする。
クラスをくるっと見回すと、休みは居ないみたいで、全員座ってる。さっき廊下で会った奴は居ない。良かったよう。
……ってこんなの気にして、喜んでることがおかしい気もするけど、でも、なんか、とにかく、別のクラスで良かった!
先生の自己紹介、入学式のことについて、明日以降のことなど、いろいろ伝えられる。
その間に、だんだん、気持ちが落ち着いていく。陸と普通に話せたのも良かったのかもしれない。
よしよし。オッケー。
しきり直しだ。
見回した限り、すごい怖そうな人も居ないし、平和そう。
偏差値高いし、不良とかは入れないしな。まあ話し出したら、頭がよすぎる故にちょっと変わってる人とかは居るかもしれないけど。いろいろ楽しみ!
……ってそういえば、さっきのあいつ、あの見た目で、頭もいいわけ? あの見た目でここに受かる頭を持ってるって、ずるい気がする。考えていたら自然に眉が寄ってきて、はっと気づいて、前髪を掻き上げながら、顔を元に戻す。
絶対運動とかもできそうだったし、ちょっと、神様、不公平じゃないですかね。なんて。
別に普段、神様を信じてもいないくせに、こんな時は、ちょっとそんなことも思ってしまう。
175
あなたにおすすめの小説
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる