一目惚れなんてしてないってば!

星井 悠里

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第一章

第10話

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 そしてさらに、はっと気づく。


        
 なんであいつのこと、何回も考えてるんだってば。あーもう!

 心の中、じたばたしながらも、なんとか聞いていた担任の話が終わると、小さな花の飾りが配られて、胸元につけるように言われた。そういえば中学ん時も、こんなの、つけたっけ。あれからもう三年も経ったんだ。三年なんて、あっという間だもんな。色々頑張って、充実した三年間にしよう! なんて思っていると、近くに居た奴らが、オレを見て言った。

「なんか、花、超似合うね。顔、可愛すぎねぇ?」
「確かに! つか、アイドルとかしてたりする?」

 悪気はないのかもしれないけど、その言葉に、周りの奴らもオレを見て、ちょっとざわっと騒がれそうになった。思わずムッとしたその時。

「つか、オレのが似合うっしょ」

 陸が不意にそう言って、な? とオレに聞いてきた。ムッとした気を完全にそがれて、うん、と笑うと、陸は「でしょ」と笑う。それから、その二人に視線を向けて、ふ、と笑った。

「可愛いって褒め言葉ってのは分かるけどさ、初対面で言われたらびっくりするよな?」

 そんな風に陸が言うと、隣の二人も、あ、と気づいたみたい。
 ごめん、と言ってくれた。

「――オレ、あんま顔のこと言われるの好きじゃないかも。アイドルな訳、ないし」

 ムッとしてた気持ちは消えて、普通に言うと、そいつらも、普通に「分かった」「ごめん」と答えてくれる。なんだか嬉しくなって、オレは名前を名乗って、そいつらと、普通に話し出した。
 列は出席番号順だったから、前に居る陸に「さっき、ありがと」と伝える。すると、陸は、あはっと笑って、こそっと耳打ちしてくる。

「見た目で誤解されまくる幼馴染みが居るからさ。つい」
「へーそうなんだ。可愛いとか言われちゃう人?」
「いや。翠とは真逆なんだけど」

 真逆って? と聞こうとした時、先生が「出発します、静かにね」と言って歩き出したので、話は途中になってしまった。後で聞こうと思いながら、列に従って歩きだす。

 広い体育館。去年、学校説明会の時にも入ったけど、建て替えられたばかりで、すごく綺麗だ。保護者や先輩たちの席の真ん中に敷かれた、赤いカーペットの上を進み、一番前の一年生の席に並ぶ。
 バスケ部の活動場所ここだよなと思いながら、天井を見上げる。高い天井、その鉄骨に沿って、すごく大きなバスケゴールが見える。すごい頑丈そう。透明のバックボードと赤いリングが折りたたまれている。あれ、ボタンとか押すと下がってくるんだろうなぁ。すっごい、あれ見てるだけで、超わくわくする。
 上のバスケゴールを見て、浮かれていると、入学式が始まった。

 開式の言葉から始まって、まず一組から順に一人ずつ名前を呼ばれて立ち上がる。全員呼ばれても、全然覚えられないなぁなんて思いながらも、色んな人の名前が聞こえて楽しい。仲いい友達、いっぱいできるといいな。一組が全員終わるとまた揃って腰を下ろした。次は二組。
 後ろを振り返っていれば、さっきの奴も見つかるのだろうけど、でも、この状態でずっと後ろ見てるとかおかしいし。と、そこまで考えて、ぶるっと首を振った。

 何で気にしてるんだ。落ち着いて、オレ。
 校舎に入って数分で一目惚……とか、絶対無い。ありえない。
 こんなの、尊に言ったら、絶対また大笑いされるっつーの。

 隣に居た陸が、突然首を振ったオレに、どうしたの、と笑った。なんでもない、と答えたけど、なんだか心の中は、とてもざわざわする。

 校長、PTA会長、生徒会長がそれぞれ、短めにお祝いの言葉を言った。
 そして、次は、新入生代表の挨拶。ここで挨拶するってことは、受験でトップ合格した奴か。すご。どんな奴だろ。

 体育館の端の方、立ち上がって壇上に上る生徒に、目を向けた瞬間。心臓が止まりそうになった。
 え、さっきぶつかった、あいつじゃん。え、トップ入学ってこと?
 あのルックスで、トップ入学とか、信じられない。
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