一目惚れなんてしてないってば!

星井 悠里

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第一章

第12話

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 ふ、とそう思った瞬間。
 ちょっと俯いてしまったオレ。……なんかオレ。残念に思ってる? ってそんな訳ないし。と、顔を上げた時。

「あれが、幼馴染みだよ」
 不意に隣で陸が言った。え? と首を傾げると。

「さっき言った、見た目で誤解されまくる幼馴染みって、あいつ」
「――えっ。あいつ、どう誤解されるの?」

 誤解って何。見たまんま、あのまんまな感じがするけど。

「見た目が派手だからって、中身もそうって思われがち。まあ……今みたいなこともしちゃうから余計だけど」
「――中身、派手じゃないの?」

 オレが意図せず眉を寄せながら聞くと、陸は笑った。

「言ってることだけ考えたら、真面目なこと、言ってなかった?」

 陸がくすくす笑ったところで、音楽がかかって、退場が始まる。
 真面目、か。真面目とは正反対な見た目だけど。……って、これが見た目で判断ってことになるのか。

 見た目で判断されたくないのは、オレも同じだけどさ。
 複雑な気持ちになりながら歩いていると、母さんが見えた。ふ、と笑って見せると、母さんは小さく手を振ってくる。

 母さん。
 人との出会い、大切にって――なんかオレ。すごく強烈な奴に、会ってしまったかも。
 まあでも。関わりも無さそうだけど。

 ……ほんと、強烈。
 もう今ので、かなり有名人になっただろうな。……モテそう。

 そう思った瞬間。
 ちく、と胸の奥に刺さる変な感覚。

 何これ?
 納得できないまま歩き、校庭に出て、クラスごとに集合写真の撮影で並ぶ。

「なー、陸」
「ん?」
「清宮あおとって、どんな字?」
「え? ああ。碧斗。紺碧こんぺきの碧と、北斗七星の斗」
「ふうん」

 清宮碧斗、か。
 頷いていると、陸がくすっと笑った。

「なんで聞くの? 碧斗、気になる?」
「いや。朝、ちょっとぶつかっただけ」
「え、名前聞かれて逃げたのって、翠なの?」
「……っ」

 なんか陸って鋭い? っていうか、分かるのか、これって? でもさっきの話だと、興味惹かれるとか言ってたし、普通は女の子だと思うんじゃ……。

「一組は教室に戻ってー」
 担任が声を上げてるので、校舎に向かって歩いていると、陸が面白そうにオレの隣で言った。

「碧斗が興味あんのって、翠なんだ?」
「ち、ちがうし」
「違うの?」
「逃げたのは、オレかもだけど……興味って。あいつ、男が好き、なの?」

 そう聞くと、陸は、んー? と首を傾げた。

「男が好きってことはないかも。というか、今まで誰かとつきあったこと、ないし。つか、めっちゃくちゃモテるけどな」
「ないの? つきあったこと」
「ないよ。中学はバスケ部だったけど、空手も習ってて、部活の後も行ってたし。神陵受けるって決めてからは、オレと二人でめっちゃ勉強してたし」
「――意外」

 上履きに履き替えて、階段を上りながら、つい言ってしまった一言に、陸はくすっと笑った。

「そう、意外なんだよねー。見た目とは違うと思うよ。まあでも、鬼のようにモテてたけど」
「鬼のようにって」

 まあでも、モテるだろうなとは思うけど。

「翠って、家どこ? 電車?」
「あ、オレ、川沿い歩いて二十分くらい」
「おーそうなんだ、いいね、近くて」
「陸は遠いの?」
「まあ、電車で十五分くらい」

 教室に戻って、全員が揃うと、先生が明日の話をして、すぐに解散になった。
 陸が、くるっと後ろを振り返ってくる。

「やっぱああいう式とかって疲れるよなー」
「ん、分かる」

 とくに、新入生挨拶が疲れた。とか、思いながら、今日は早く帰ろと思った。
 尊に話したいことがいろいろある気がする。

「翠、昼ごはんとか、食べてく?」
「ん、ごはん? どうしようかな」

 ちょっと行きたい気もするけど、気持ち的にはものすごーく疲れたから。と言いかけた時。

「陸」

 凛とした声が突然響いて――ぱっと視線を向けると、ドアのところに、清宮碧斗が立っていた。
 ドキン、と心臓が大きな音を立てた。そのことにびっくりして、オレは慌てて視線を逸らした。

「あー碧斗。どしたん? つか、お前の代表挨拶、アレどうなの? いいの?」
「良いんじゃねえ? 先生には、よかったぞって言われた」
「うわーマジで? やばいね、この学校」

 近づいてきた清宮に、くすくす笑いながら陸が言ってる。オレは、ただ硬直。

「何か用?」
「あー。うん。つか、今は陸に、じゃなくて」
「ん?」
「さっき、陸の隣に座ってんのが見えたからさ」
「え?」

 不思議そうな声を出した陸には答えず、清宮は「こっちに、用事があって」と言いながら、オレの机を、とんとん、と指で叩いた。咄嗟に顔を上げると、強烈に整った顔がオレを見て、また微笑む。

「ちょっと、オレと話してくれない?」
「え、翠?」

 陸は清宮を見た後、オレを見て、なんだか考え深げに顎に手を当てた。

「オレもそれ、居た方が良い?」
「いや。とりあえず、二人で話してみたいんだけど」
「ふーん。えーと、翠?」

 助けを求めるように陸を見つめ返したオレに、陸はくすくす笑った。

「翠は話したい? 怖いなら、オレも行くけど」
「なんでだよ。お前はいらないって」
「だって、怖がってるじゃん」
「怖がるようなことしねーし」
「いや、碧斗はぱっと見で怖いからね?」
「失礼だな」

 目の前でポンポンと飛ぶやりとり。
 オレと尊みたい。仲いいんだなと思ったら、ちょっと安心した。

 ……オレは、覚悟を決めた。
 ここで、話さず帰ったら、絶対、帰ってから、このことばかり考えてしまいそう。


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