一目惚れなんてしてないってば!

星井 悠里

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第一章

第13話

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「いいよ。話す」

 ちょっと喧嘩を売るみたいな気持ちで、オレは、清宮を見上げた。
 ……可愛いなんて、思われないように、なんなら、睨むような感じで。

 すると、オレと視線を合わせた清宮は、にや、と笑った。


「じゃあ、自転車出してくから、正門のとこに居てよ」
「うん」

 頷くと、やたら目立ってる清宮はクラスの視線を集めたまま、その中を平然と歩いて出て行った。
 出てくと同時に、陸が、ぷは、と笑った。

「――碧斗、翠のこと、気に入ったんだな。何かあったの?」
「何も。ぶつかっただけ」
「んー、まあ悪い奴じゃないことは保証する。急に何かされるとかもないと思うよ。話したいみたいだから、話してやって」
「オレも、話してすっきりしたいから」
「何を?」
「わかんないけど。なんか、いろいろ」

 そう言うと、陸が「ふうん」と、くすくす笑った。

「じゃあオレとのごはんはまた次ね」
「あ、うん」

 とにかくこの、さっきからずっと誤作動してる心臓も。あまりにあいつが強烈だから、いけないのかも。
 話して、普通だって分かれば、大丈夫になるかもだし。
 あいつの、一目惚れとかいうのも、否定しとかないと!

 顔が好きとか、信じないし、どうでもいいし。
 オレは。ゆっくり、恋するんだから。


 ――オレは、決死の覚悟で、清宮と、話すことを決めた。


 正門の前で陸と別れて少しして、駐輪場の方から清宮が自転車を引いてやってきた。

「ごめん、待たせた。行こ」

 促されて歩き出す。ドッドッと鼓動がうるさい。何でオレ、こんなドキドキしてんの。
 眉を顰めたその時。

「あ、新入生代表のあおとくんだ~!」
「カッコ良かったよー」

 どう見ても、先輩。大人っぽい女の人たちに手を振られて、「どうも」と笑顔。余裕で返してる。
 ……鬼のようにモテてたって言葉を納得しながら、その横を無言で歩く。

「ファミレスとかでいい?」
「え」
「もう昼だし。食べないで喋るのもつらくねえ?」
「あ、うん」
「駅の方のファミレスで良い?」

 ぽんぽんと続けて聞かれて、ついつい頷いてしまった。

 オレは、今からこいつと二人で、ファミレスでご飯? まあでもお腹空いたし。それはありか。
 いや、ありなのか? 悩みながら、無言でずっと、ついていく。自転車を引いてるので、その横に並ぶと通路で邪魔になるのをいいことに、後ろからずっと。特に、清宮も、横に来いとは言わないし。
 自然と後ろ姿が目に入る。

 河原の風が、春っぽく感じる。水面はキラキラと光を反射させていて、とっても綺麗。
 清宮は自転車を押しながら、ゆっくりと前を歩いていた。
 制服の背中はまっすぐで、長い脚がすらりと伸びてる。

 ――後ろ姿も、カッコいいなー。
 思わず、そんな言葉が胸の奥でこぼれる。こいつのルックスって、ほんと、理想の形かもしれない。
 河原から逸れて、狭い道を駅の方へと進み、途中のファミレスで、清宮は自転車を停めた。

 二人で店に入って、窓際の明るい席に向かい合わせに座った。

「先、注文しよ」
「うん」

 手渡されたメニューを見る。程なくして、清宮は持っていたメニューを閉じた。

「もう決まったの?」
「ん。いいよ、ゆっくり決めて」

 そう言いながら、清宮は氷の入ったグラスの水を飲む。その喉が少し動く。
 それだけのことが、どうして――こんなに、目を離せないんだろう。
 いや、水飲んだだけ……色っぽいとか、カッコいいとか。意味わかんないって。

 すぐに目を逸らして、メニューを見るけど、何だか全然決まらない。
 清宮は肘をついた状態で、なんだかニコニコして、オレを見てくる。

「ごめん、すぐ、決めるから」
「いいよ。ゆっくりで」

 ふ、と目を細める。また胸が、少し不自然に動く。何だろうこれ。もう。永久にメニューが決まらないんじゃないかと思った時。
 シーフードカレーが目に入った
 あ、もうカレーでいいや。

「決まった?」
 聞かれて頷くと、店員を呼ぶボタンを清宮が押した。すぐにやってきた店員を清宮が見上げる。

「シーフードカレーとドリンクバー。お前は?」
 清宮がそう言った。

「あ、おんなじ、で」
「マジで?」

 くすくす笑って、清宮がメニューを片付けている。店員が離れていくと、清宮は立ち上がった。

「飲み物取りに行こ。喉乾いた」
「あ、うん」

 オレも。緊張して、からから。
 飲み物を取って席に戻ると、清宮がオレをまっすぐに見て、くすっと笑った。



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