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第2章

◇味がしない*圭

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「お風呂、ありがとう……」

 言いながら、リビングに行くと。
 高瀬が、コーヒーを飲みながら、くる、と振り返って、苦笑い。

「すっごいゆっくりだったな」
「……うん」

 キスマークとかに慌てふためいて、
 昨日の記憶に暴れてました。

 とは、言えないけど。


「パン焼くから、座って」
「……うん」

 言われて、座ると。
 スクランブルエッグとウインナーとサラダ。
 高瀬の作ってくれる朝ごはん、いつも、こんな感じ。ちゃんとしてる。

「水飲みな?」
「うん」

 喉に水が入ると。 
 すっごく、美味しい。体にしみわたる気がする。

 ――――……昨日高瀬と、して。声。出して。
 そのまま寝てたから……喉、すごい、乾いてたのかも……。


 顔、また熱くなってくる。

 だめだーもう、これ。
 普通の顔、出来ない。

 パンが焼けて、トースターの方を向いてた高瀬が、皿にのせて運んできてくれて、オレの目の前に座った。ふと、オレに気付いて。くす、と笑った。


「……真っ赤、織田」

 クスクス笑う高瀬に、俯いてしまう。


「とりあえず食べよっか。ほら」
 パンを渡されて、頷く。

 バターを塗りながら、目の前の、朝からめちゃくちゃカッコいい人をついつい眺める。

 ……キスしちゃった。高瀬と。
 ――――……抱かれ、て、しまった。

 
 数えきれないくらい、好きって、言ってしまった。

 高瀬も、可愛いとか、好きとか。
 めちゃくちゃ、言ってた。


 ――――……っっっ……恥ずかしすぎて、味、分かんない。
 ひたすら噛んでるけど、いつもみたいに美味しく感じない。


「織田、体、痛いとこない?」
「……大丈夫」

 ぷるぷる首を振って答える。

 体痛いとこ。
 ――――……痛いとこ……って……。

 …………っっっ。


 また急激に、顔が熱くなる。


 わああああ、もう何も、言わないでー、無理。
 っ無理だってばー!!!



 高瀬が、ぷ、と笑い出した。

 え。
 高瀬を見上げると。

「あ、ごめん――――…… また真っ赤になったから」

 クスクス笑う。

「ごめん、食べ終わるまで黙っとく。ニュースでもつける?」

 答えは聞かず、立ち上がった高瀬が、テレビをつけてくれる。
 テレビの音がしてると、話さなくても良くて、少しだけホッとする。

 ――――……ああ、なんか。
 優しいなあ。高瀬。


 ……大混乱してるオレが、悪いだけなのに。


 ああ、でも――――……。

 昨日まで、想いを口にする事すら、一生無いって思ってたのに。
 酔ったせいで。泣いて……高瀬まで泣いてくれて……。

 …………すき……とか。

 好き――――……。


 …………って何で、好き?

 こんなにカッコいい人が。
 男のオレ、好きなんて。 ある??

 でもいっぱい好きって、言ってくれたけど……っっ。
 恥ずかしくなる位……っ。


 どうしよう。
 ――――……どうしたらいいんだろう。

 ……普通に話せないよ、どうしよう。


「織田」
「……っうん?」

「――――……大丈夫? 食べれない?」

 もう高瀬は食べ終えてて。
 全然減ってないオレを気にしてくれてる。



「まだ色々混乱してる?」
「――――……ううん、もう大丈夫」

 記憶は、ちゃんと、つながってる。


「食べれるか?」
「うん。食べる」
「ん」

 ふ、と優しく、笑む高瀬の瞳。
 ……こんなのって、どうしたって、絶対誰だって、ドキドキすると思う。

 ほんと、不思議な位味のしない食事を、頑張って食べる。
 食べ終わったら、高瀬と、話さないと。

 昨日の、こと。
 ちゃんと、シラフで、話さないと。






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