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第2章

◇修羅場?*圭

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 時計を見ると、16時前。
 
「高瀬、どこいくの?」
「着くまで、秘密で良い?」

 言われて、サプライズかーと、何だかとっても嬉しくなる。

「うん!」

 すっげえニコニコしてしまうけど。
 これはしょうがないよね。しちゃうよね。

 なんか高瀬に笑われてる気がするけど、もうそこは気にしない。
 旅館を出て、車で出発する。


 ……ほんとにカッコいいんですけど。

 車運転してる高瀬にときめくなんて、乙女みたいだから言わないけど。

 キレイな指がハンドル持ってるのが。前を見てる横顔が。
 すごいカッコよくて、好きだなー……。

 と、今日ずーっと思ってる事を、またまたすごく思ってしまう。


「――――……運転してるとこ、好き?」

 ふ、と笑う高瀬。


「え?」
「……ずーっと見るから」

「あ……うん。好き」

 見てるのバレてるし。好きなのもバレてるし。
 もう素直に頷くしかない。


「……そういうのは、素直に言うのな」


 クスクス笑いながら、高瀬がちら、とこちらを見て、すぐ視線を前に戻す。


 ――――……だってカッコいいし。
 初めて見た時から、大好きだし……。


「15分位で着くから」
「うん」

 高瀬の優しい声に頷いて。

 どこに連れていってくれるのかなーと。
 オレがウキウキしていると。

 信号で止まった瞬間に、ふ、と伸びてきた高瀬の手が、オレの頭を撫でた。


「え」

 とっさに高瀬の方を見ると。

「……嬉しそうな顔、可愛い」
「……っ」

 優しく、緩む瞳に、どきん、と激しく心臓が揺れる。


「……っっ だから……からかうの、やめ」

 からかうのやめて、心臓が痛いから。
 そう言おうと思ったら。

 一瞬む、とした高瀬に、頬を撫でられた。

「――――……オレからかってるんじゃなくて…… 本気でそう思うから言ってるんだけど」
「――――……っっっっ」

 破壊力がすごすぎる言葉と、視線に。
 オレは、自分の両頬を挟んで、きつく目をつむった。

 ……ダメだこれ。
 高瀬が好きすぎて、おかしくなる。


「……織田?」

 織田?じゃないよ。もう。


 そんな風に、優しく声かけるのも、手加減してほしい。
 ほんとに。
  
 高瀬と付き合ってた女の子達って……よく、これ、耐えられたなあ……。

 ……よく考えたら、会った時、高瀬がフリーだったって事は、その子達って、高瀬と別れたんだよな……。 よく、別れるとか選択できたな。


 高瀬と付き合って、別れるなんて。
 もし女だったら、選べるかな……。

 もし、オレが、女だったら、結婚して添い遂げたいけど。

 ……高瀬の子供なら……。
 男の子はカッコいいだろうし、女の子は可愛いだろうなあ。

 別れるなら、いっそ私と死んで。
 ……とかそんな事件があったっておかしくないんじゃ……。

 もしかしてあったかな?
 はっ。まさか、女と修羅場すぎて、男に走ってみたとか……??

 ………どうなんだろう。

「……織田?」

 次の信号で止まった時、高瀬が、ん?と、のぞき込んできた。

「大丈夫?」
「あ、うん…… 大丈夫」

 ……ではない。
 何考えてるか、全然分からなくなってきてた所で。

「……高瀬さ」
「うん?」

「……過去に、女の子と修羅場、あった??」
「……はー??」

 ちら、と見られて。呆れたような、高瀬の表情。

「修羅場って?」
「……別れるなら死んでやるーとか」

「……何だそれ」

 高瀬に、ぷ、と笑われて、まあそりゃ笑うか……と口を噤む。

「別れる時にって事?」
「……それとか…… うーん、あとは、なんか女の子達が勝手に修羅場になっちゃったとかさ」
「――――……どーいう意味で言ってんだか、よくわかんねーけど……」

 可笑しそうに笑いながら、前を見つめたまま。

「……無いよ」
「……ほんとに?」

「――――……何なの、織田、どーいう意味で聞いてんだ?」

 クスクス笑ってる。

「勝手に修羅場になってたとかは知らないけど……どっちにしても、オレの前では、無いよ」
「……そうなんだ」

 えー、じゃ、高瀬と別れる時、皆すんなり受け入れたって事?
 そんな事ある?

 絶対別れたくないって、言うよね。

 はっ……。すごい冷たく、切ったとか?

 ……この整った顔で、冷たく切られたら、もう、縋れないよね……いや……でもやっぱり、だからこそ、修羅場るんじゃ……。


「……つーかさー」
「……?」

「そんな修羅場になるほど、まじめに付き合ってないかな」
「……?」

「……そこまで長く付き合った事もないし」
「……」

「――――……そこまで執着もしてないし、されてもないと思うよ」
「……そんな事はないと思うんだけど……」

 少なくとも、絶対、執着はされてたよ。
 ――――……しない訳ないじゃん。

 ほんの少し付き合っただけだって、絶対執着すると思うけど。

 だってオレ今、絶対、別れたくないしさ。
 女の子だったら、なおさらなんじゃないのかなあ。

「高瀬と別れたいとか、思わないと思うもん」
「――――……」

 高瀬が、ぷ、と笑ってる。

「……何で笑うの?」

 
「よく分かんないけど――――…… 織田が、オレと別れたくないって事を思って言ってくれてるのかなーて思って」

「……あ。うん、まあ。そうだけと」


 確かに、そこから考え始めたから……そうなんだけど。
 そこはっきり言われると、恥ずかしいかも。




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