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第1章

4.祈り*ルイス

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 あつ、い。
 ――――……足が、熱くて、焼けてるみたい。


 息が、苦しい。


 ――――……辛い事があると、いつもすぐ、昔の嫌な事を思い出す。

 あの記憶よりは、マシ。
 いつも、そう、思うようにしてる。

 幼かった頃から――――…………。

 あれ。何が、あったんだっけ……。
 いつも思い出す過去が――――……。

 ……何故か、何も、出てこない。


 ああ、もう――――…… 何だか分かんない……。




 ……息が、苦しい。
 やっと――――…… 死ぬのかな、オレ。


 ……なんで、「やっと」なんて――――…… 思うんだろう。


 でも。
 ――――……やっと、楽に……。


 どうしてか、そう思ってしまう。

 目の前が滲む。
 何だか、熱いものが、こみあげた時。



「ルイス――――……?」

 冷たいものが、額に触れた。


「――――……」

 気が遠くなりそうだった、その空間から、一気に引き戻された。
 でも、動けないし、目も、開けられない。


「……ルイス様は寝てますよ?」

「――――……いや……涙が……」


 優しい声がして。
 目尻に、その、冷たいものがまた、触れた。


 涙。
 泣いてるのか、オレ。


 ……この冷たいのは、きっと、アレックスの指で。
 オレの涙を――――……拭き取って、くれてる……?


 そう思ったら。
 ますます、何かが、こみあげて。

 目の横を、涙が伝っていくのが分かる。
 でも、動けない。目が、開けられない。


「ルイス――――…… シーラ、寝ながら泣いてるのって、どうやったら止められるんだ?」

「アレックスさま……」

 シーラと呼ばれている女の人の声が、クスクス笑うのも聞こえる。



「頭を撫でてあげたらいかがですか?」
「――――……分かった」


 そんなやりとりが聞こえて――――……。

 頭に、優しく触れる感触。撫でられてるのが、分かって。



「……あ……」
「――――……ルイス?」



 アレックス――――……。
 名を呼びたかったけれど、声が出なかった。


 動けない。




「ルイス……頑張れよ――――……」



 そんな声が聞こえて。手を、冷たいものに、包まれる。


 オレは、また、暗闇に落ちていく。



 目を開けたい。
 ――――……アレックスと、話したい。



 いつも、辛い中、辛うじて目を覚ますと、アレックスが側に居る。


 アレックスの声で目覚めているのか、
 手や頬に触れてくるその感覚で、目覚めているのか。 



 とにかく、ふと意識が戻る時、そこには、アレックスが居てくれてて。




 オレ、今は――――…… 死にたく、ない。

 早く、ちゃんと目を開けて、アレックスと、話したい。




 そんな風に。
 死にたくない、なんて。



 覚えていないのだけれど。
 でもきっと。



 初めて、祈った気がする。






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