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未来

「一歩」*奏斗

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 大地はいつも通り元気そうで、夏休みどう過ごしていたとか、そういう話をしばらく話していたけれど、ふと少し口調を変えた。

『カナ先輩……あの来週の月曜なんですけどね、部活の皆で集まろうってなったんですよ。卒業した先輩とか、オレの代も来るって』
「あ、うん。……そうなんだ」

『それで……カズ先輩も来るって』
「……うん」
『カナ先輩。来てみたらどうですか? カナ先輩が来たら、皆すっごく喜ぶと思います。もちろん……今回じゃなくてもいいんですけど』

 そんな誘いに、とりあえず保留にさせてもらって、しばらくの間、色々考えた。

 もしも、その集まりに行くとするなら、和希と話してからじゃないと無理だと思う。――――和希と話ができるのか、どうか。

 すごく考えて出た結論は。
 四ノ宮を好きだと思ってる今なら、会える気がするってことだった。

 それでも、嫌にドキドキしながら、覚えている和希の電話番号に電話を掛けた。何コールか鳴って、もしかして知らない番号だと出ないかなと、思った瞬間。

『もしもし』

 和希の声、がした。結構経つのに、聞き慣れてる、と思ってしまう声。

「和希?」
『……カナ?』
「うん。――今、平気?」
『平気だよ。ありがとう、電話……』
「うん」

 少しの間、沈黙が流れる。

「……あのね、オレ、和希と会って話したいんだけど、いい、かな?」
『ん。会おう。カナ、いつがいい?』

 すぐに返ってきた穏やかな声にほっとして、スマホを握っていた手から少し力が抜けた。

「部活の集まりの前でもいい? オレ、ずっと出てなかったんだけど、もし行けそうなら、そのまま集まりも出たい」
『もちろんいいよ。もし、オレが居ない方がいいなら、オレは行かないから。カナは出て。皆喜ぶと思うから』
「――――」
『オレのせいだよな。ずっと、カナがそれに出てなかったのも』
「……それも、会った時、話すよ」
『分かった』

 待ち合わせの時間は、部活の集まりがある駅の喫茶店で、一時間前。
 そう決めて、電話を切った。

 変にドキドキしていた心臓が、やっと、落ち着いた。

 ――――大丈夫そう。オレ。
 変なドキドキはあったけど。前みたいに、感情がコントロールできなくなったりはしない。手が震えたり、泣きそうになったりもない。

 立ち尽くして電話していたことに気づいて、ソファに座った。
 大地に、和希に会ってから大丈夫だったら行くかもって言っとこ、と思いながらスマホに触れると、ふっと、四ノ宮を思い浮かべた。

 和希とちゃんと話せそう。
 これは絶対、四ノ宮のおかげだと思う。

 そう言ったらきっと、喜んでくれたかな、なんて思う。
 今更、そんなこと、言える訳もないけど。


 四ノ宮って……今、何考えて生きてるんだろ。
 毎日、何してるんだろ。
 オレには、気にする権利もないかもしれないけど。






(2023/11/2)
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