「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

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第一章

1.

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 受験も頑張って、同じ高校に入学が決まった春。
 三月十五日は、私の十五歳の誕生日。
 その前日は中学の卒業式だった。その帰り道も、桜の樹の下で話した。

 ふと、桜の樹を見上げて、気付いた。

「悠斗、ちょっとつぼみが見えるよ。もうすぐ咲くね」
「んー……あと十日位、かな?」

 二人で桜の樹を見上げる。

「またお花見、しようね、悠斗」
「そうだね。また写真、撮らないと」

 そう言って、悠斗が微笑む。

「うん」

 私も自然と笑顔になる。

 二人で毎年撮ってる、桜の樹の下での、記念写真。
 この公園で、一番大きな桜は、毎年本当に綺麗で。

 その下で悠斗と撮る写真――――……すごく、好きで。
 またその季節か、と思うと、ワクワクした。


「悠斗、そろそろ帰る? お昼食べてないしね」
「うん……そうだね」

「じゃあ、またね」

 別れようとした私の手首を、悠斗が、掴んだ。

「え?」

 びっくりして振り返る。そんな風に、触れられて止められたことなんて、今まで無かったから。
 急に、ドキドキして。顔、少し、赤くなったと。思う。

「明日、心春、誕生日だろ」
「う、ん」

「――――……伝えたいことがあるんだ。会って、聞いてくれる?」

 悠斗は、私をまっすぐに見つめて、そう言った。

「……うん」

 まっすぐな瞳を見つめ返して、私が頷くと。

「ありがと」
 そう言って、優しく微笑んで。

「……あ、ごめん」
 悠斗は、はっと気づいたように、掴んだままだった私の手を離した。

「……明日、いつでも、大丈夫」

 ――――……だっていつも、悠斗がお祝いしてくれたから。
 ……あけてあるし。

「じゃあ、明日ね」

 悠斗が笑って。
 私も、うん、と微笑んで。悠斗と別れた。



 なんだろう? 伝えたいこと。

 弾む胸を抑えながら、家まで帰った。
 帰ってから、もうずっと、そわそわしっぱなし。

 夕飯を食べて、ベッドに転がって、枕を抱き締める。


 ……なんだろう。とりあえずは、誕生日おめでとう、だよね。

 それから。


 ……好き、とか? 

 ――――………………好きとか。

 ………………好きとか。好きとか。……大好きとか。だといいなあ。

 むぎゅー、と枕に沈み込む。



 今までずっと。友達だった。
 一番近くに居ると思ってたから。それで、良かった。

 中学を卒業して、これから、高校生。

 ――――……高校で新しい人と会うと、悠斗、またモテちゃうだろうなあ。 
 でも、友達だと、それを見てるしかできないんだよね……。

 なんてことを、考えて。
 告白しようかな。と思ったりもした。

 でも、もしダメだったら。
 友達でも居られなくなっちゃったらなんて心配も、よぎった。

 それ位なら。
 このまま、言わずに、側に。

 ……でも彼女が出来たら、側にも居れなくなるかも。
 ――――……言おうか、どうしようか。ずっと、考えてた。


 ……もしも明日。悠斗が。好きって、言ってくれたら。
 ――――……私も、大好きって、言おう。

 もし全然別の話で。悠斗が、言ってくれなくても。


 ――――……大好きって。やっぱり、伝えよう。


 ずっとずっと、大好きだったって。

 友達でいられなくなったらなんて心配してたけど。

 きっと。悠斗なら。――――……無視されるとか。疎遠になるとか。
 そんなこときっとないって、今は、思える気がする。




 だから。ちゃんと、伝えよう。

 ――――……そんな風に、思いながら、その日は眠った。






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