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第二章
3.
しおりを挟む風呂から上がって、すっかり食事の準備が出来た居間に入る。
昔から、座卓で正座。それだけは決まってる。
「食べようか」
父さんの声に頷きながら、座る。
じいちゃんはつまみとビールで、すでにご機嫌。
「いただきます」
言って、箸を取って、食べ始める。
「――――……あのさあ……」
少し黙っていたオレが、そう言うと、二人が、オレの顔をまっすぐ見る。
「……公園の桜の樹の下にさ」
そう言っただけで、父さんが、「ああ……」と言った。じいちゃんも、分かってるっぽい。
「今日父さん達も通ったんだよ」
「……伊織も見えたのか?」
じいちゃんにそう聞かれて。
「見た……つーか、話した」
二人は、顔を見合わせて、じいちゃんは、はー、とため息をつく。
「しょうがねえだろ。目があっちまったんだよ。最初人間か分からなくて」
「――――……まあ。あの感じは、分からないかもね」
父さんが、うんうんと頷いている。
「だから修行しろと言ってるだろ。慣れれば、遠くからでも霊と人間の区別がつく。目を合わせなくても済むと言うのに」
「でも、伊織の場合、目を合わせなくても引き寄せるけど」
苦笑いで、フォローなのか分からないことを言ってる父さん。
「何を話した? 伊織」
じいちゃんに問われて。
「……今日はそんなに話してない。見えるのか、話せるのかって聞かれて。自己紹介、した」
「――――……お前は、ほんとに……気やすく友達になるなと言ってるのに」
じいちゃんの言葉に、しばし、んー、と黙って食事を口にしていると、父さんが話を続ける。
「悪いものではなかったから。その内消えると思うよ。人に悪さもしないだろうから、大丈夫だよ」
父さんの話に頷きながら。
「……オレ、そいつ、生きてる時も、よく見かけててさ」
「――――……」
「もう何年もずっと、同じ二人がさ、学校帰りにあの桜の樹の下に居たんだよな……その片割れの男の方で」
オレがそう言うと、二人は、顔を見合わせた。
「……わしらも知ってる。あそこを通る人間の目には入ってたろ。――――……運命的に、ぴったり収まる二人だったんだろうにな」
じいちゃんはため息をつきながら、酒を煽る。
「たまに、突然切られることがある。――――……どうにもできないのが、もどかしいが……そういうもの、と思うしかないな……」
じいちゃんの言葉に、しばらく考えてから。
「話を聞いたり、成仏させたりはしないのか?」
そう聞いたら、じいちゃんは首を振った。
「世にどれだけ想いを残した霊が居ると思ってるんだ? 頼まれもしてないのに端から祓っていたら、それだけで日々が終わる」
「そうだね……きっと相手の子が心配なんだと思うから……大丈夫と思えれば、きっと、自分からいくよ」
「――――……」
じいちゃんと父さんの言葉に、そっか、と頷く。
そのまま、何ともいう言葉が出なくて、黙ったまま食事を続けていると。
「伊織、変なちょっかいは、出すなよ」
「……出さねーよ」
「変に話を聞いて、相手の子に伝えようとか――――……するなよ」
「しねーよ。相手、知らないし」
「霊が言ってるなんて……普通の人間は信じないしな。信じられても……自然のことじゃない。大抵良い状態にはならないからな」
「――――……分かってるよ」
まあ。大体分かっていた、ほとんど、予想通りの答えだ。
変なちょっかいね……。
…………出さねーよ。霊に絡むと。ろくなことは、無いし。
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