「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

文字の大きさ
16 / 41
第二章

3.

しおりを挟む

 風呂から上がって、すっかり食事の準備が出来た居間に入る。
 昔から、座卓で正座。それだけは決まってる。

「食べようか」
 父さんの声に頷きながら、座る。
 じいちゃんはつまみとビールで、すでにご機嫌。

「いただきます」

 言って、箸を取って、食べ始める。


「――――……あのさあ……」

 少し黙っていたオレが、そう言うと、二人が、オレの顔をまっすぐ見る。


「……公園の桜の樹の下にさ」

 そう言っただけで、父さんが、「ああ……」と言った。じいちゃんも、分かってるっぽい。

「今日父さん達も通ったんだよ」
「……伊織も見えたのか?」

 じいちゃんにそう聞かれて。

「見た……つーか、話した」

 二人は、顔を見合わせて、じいちゃんは、はー、とため息をつく。

「しょうがねえだろ。目があっちまったんだよ。最初人間か分からなくて」
「――――……まあ。あの感じは、分からないかもね」

 父さんが、うんうんと頷いている。

「だから修行しろと言ってるだろ。慣れれば、遠くからでも霊と人間の区別がつく。目を合わせなくても済むと言うのに」
「でも、伊織の場合、目を合わせなくても引き寄せるけど」

 苦笑いで、フォローなのか分からないことを言ってる父さん。

「何を話した? 伊織」
 じいちゃんに問われて。

「……今日はそんなに話してない。見えるのか、話せるのかって聞かれて。自己紹介、した」
「――――……お前は、ほんとに……気やすく友達になるなと言ってるのに」

 じいちゃんの言葉に、しばし、んー、と黙って食事を口にしていると、父さんが話を続ける。

「悪いものではなかったから。その内消えると思うよ。人に悪さもしないだろうから、大丈夫だよ」

 父さんの話に頷きながら。
 
「……オレ、そいつ、生きてる時も、よく見かけててさ」
「――――……」

「もう何年もずっと、同じ二人がさ、学校帰りにあの桜の樹の下に居たんだよな……その片割れの男の方で」

 オレがそう言うと、二人は、顔を見合わせた。

「……わしらも知ってる。あそこを通る人間の目には入ってたろ。――――……運命的に、ぴったり収まる二人だったんだろうにな」
 じいちゃんはため息をつきながら、酒を煽る。

「たまに、突然切られることがある。――――……どうにもできないのが、もどかしいが……そういうもの、と思うしかないな……」

 じいちゃんの言葉に、しばらく考えてから。

「話を聞いたり、成仏させたりはしないのか?」

 そう聞いたら、じいちゃんは首を振った。

「世にどれだけ想いを残した霊が居ると思ってるんだ? 頼まれもしてないのに端から祓っていたら、それだけで日々が終わる」
「そうだね……きっと相手の子が心配なんだと思うから……大丈夫と思えれば、きっと、自分からいくよ」

「――――……」

 じいちゃんと父さんの言葉に、そっか、と頷く。
 そのまま、何ともいう言葉が出なくて、黙ったまま食事を続けていると。


「伊織、変なちょっかいは、出すなよ」
「……出さねーよ」


「変に話を聞いて、相手の子に伝えようとか――――……するなよ」
「しねーよ。相手、知らないし」

「霊が言ってるなんて……普通の人間は信じないしな。信じられても……自然のことじゃない。大抵良い状態にはならないからな」
「――――……分かってるよ」


 まあ。大体分かっていた、ほとんど、予想通りの答えだ。


 変なちょっかいね……。
 …………出さねーよ。霊に絡むと。ろくなことは、無いし。






しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。 佐倉ここ。 玩具メーカーで働く24歳のOL。 鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。 完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。 【完結】ありがとうございました‼

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました! 「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...