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第二章
11.
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前日、そんな会話をして。
高校の入学式当日の朝。クラス分けを見て、教室に向かう。
一年生の廊下に立った所で、そこらに居る奴らがオレを遠巻きに見てるのは分かる。
んー。やっぱ、目立つか、オレ。
でもなー髪の色、父さんが染めてほしくなさそうだし。でもこれが一番目立つような……あ、今はピアスもあるか。
自由って聞いてたけど、入学式につけてくる奴は居なかったか。でも別に、校則違反じゃないし良いよな。
自分のクラスの前に着くと、担任だろうか。待ち構えていたので、近寄った。
「名前は?」
「上宮伊織です」
「ああ。君が神社の子ですね。よろしくね」
……なんだかよく分からない会話だったがとりあえず頷いて、変な花を貰い、教室に入った。
瞬間。なんか俯いてた女子が、オレの気配に咄嗟に顔を上げて。
「え」
「あ」
昨日会った、悠斗の片割れ――――……心春の漏らした「え」と。
オレの咄嗟の声が、同時だった。
「ふ、りょ――――……」
ふ、りょ……??
何か言いかけて、心春は止まった。というか、言いかけた言葉よりも、その、涙目。
つかまたこいつ――――……朝から何、泣きそうな顔してんだ。
そう思ったけど、どうやらこいつ、オレを見て驚きすぎて、涙引っ込んだらしい。
……まあ、そんなに驚かれるのも心外だが。
色々事情を変に知ってるせいで、泣かれても気分が悪い。
まあ、泣かなくて良かった。
何となく気になって、たまに視線の端に入ってたが。
とりあえず一日目は、そのまま何事もなく入学式が終わり、入学記念の集合写真をを撮ってから、教室で明日の事を少し説明された後、下校になった。
さっさと帰ろうと歩いていたら。
途中で、なんと、じいちゃんとその仲間たちに会ってしまった。
「入学式だったのか、おめでとう」
「伊織も高校生かー、あんなに小さかったのになあ」
「お前、耳に飾りなんかつけてっていいのかあ?」
じいちゃんの仲間はよく神社にも来るし、オレの事を小さい頃から知ってて、ほぼ、孫みたいに扱ってくる節がある。
「つか。耳に飾りって。じーちゃんと全く同じだし。ピアス、だから」
苦笑いで返事をすると、「何を小生意気なー」と笑われる。
「そういえばお前、最近桜の樹の下で何してんだ?」
「あー……」
「こないだ噂んなってたぞ、大悟んとこの伊織が、ずっと桜の樹の下に居る、とか」
…………もう、ほんと。皆、暇だなー……。
「……なんか、咲かねえから、気になって」
今なら一番納得されるだろう理由を、ふと思いついて言ってみたら、皆、意外そうな顔でオレを見てくる。
「そうなのか? 伊織、そんなに桜が好きだったのか」
めんどくさいので、うんうんと頷いている。
じいちゃんは、これに関しては分かってるので、それ以上は何も突っ込まないで聞いている。
「もうすぐ、樹を見る医者を呼ぶらしいぞ。さすがに異常だって事になってるらしい。ここらで一番大きな桜だからなあ」
「ほんとに。このまま咲かなくなったら、嫌だよな」
……なるほど。医者が来るのか。
あれやこれやじいちゃんたちが喋ってるのを聞きながら。
――――……まあ確かに。
あの桜は、他の桜よりも目立つし。
街の皆がずっと目に映してる樹、な気がする。
――――……悠斗たちが、ずっと過ごしてきた、桜の樹。
あれやこれやと色々言われつつ、じいちゃんとその仲間と別れた。
樹の医者ね……。なんかそういうのテレビで見た事がある気はするな。
――――……それで直るような類なら、いいけどな。
思いながら、公園に近付く。
悠斗は居るかと樹を見ると。悠斗の姿と――――……また、心春。
ため息を付きながら、近づいた。
桜を見上げている心春と、それを見守ってる、悠斗。
悠斗の方が先にオレに気が付いた。
また、ざあっと、強い風が吹く。
――――……この風は……どうして起こるんだろう。
あとで父さんに聞いてみよう。
「――――……また泣いてンのか」
思わずオレが口にした言葉。
ふっと心春がこっちを向いた。
心春に、年上だと思ってたからびっくりした、とか言われる。
「オレは昨日制服見たから。もしかしたら会うかとは思ってた」
「――――……」
「同じクラスとは思わなかった。……つーか、お前、朝もあれ、泣くとこだったろ」
「――――……」
「泣いてるの、良くないって、言ったろ」
「……どうして、そんな事、言うの……?」
返してくる心春を、悠斗が、じっと見つめてる。
「どうしてって?」
「……神社の息子さん、だから?」
「……ああ。聞いたのか」
少し黙ってから。心春は、じっとオレを見つめた。
「…………私が泣いてたら……悠斗は、どうなるの?」
「――――……どうなるっつーか。一般論で言ってる。思い出すのはいいけど、悲しみすぎて、いつまでも泣きすぎるのは良くないってこと」
そう言うと、心春は、じっと考えてる。
オレの顔を見ながら、考えて。それから、少し視線を落とした。
「わかった。……ありがとう」
「――――……」
「じゃあ……帰ります」
「……ああ」
最後に桜の樹を見上げてから、心春は帰って行った。
また、悠斗は、心春を見送っている。
「――――……ちょっと驚いた」
「え?」
「伊織、オレと同じ高校だったんだね」
「……ん」
「なんかさっき、心春がさ――――……ほんとなら、オレと同じクラスだったんだって……呟いてた」
「……そうなのか?」
「うん。誰かに何か聞いたのかもね……」
「――――……」
一度黙って。
それから、ため息交じりに、悠斗は。
「……行きたかったなー。 ……伊織と心春と、同じ高校」
「……お前、生きてたらオレには話しかけないんだろ」
いたたまれずに、敢えて少しふざけてツッコんだら。悠斗はオレを見て、ふ、と笑った。
「そこらへんで会ったら話しかけないけどさ――――……同級生だったら、別。良い奴なの、きっとどっかで分かったと思うよ」
「――――……」
「……生きて、一緒に居たかったな……」
「――――……」
そうだな、と言おうと思ったけど。
――――……未練がまた一つ、新たに増えてしまうのだろうかと思って。
何となく、言えなかった。
というか。
もはや。――――……オレの方に。
未練が残りそうな気がしてくる。
霊なのに。
……きっと、いつか。
いや、きっと近い内。 悠斗は、消えると思うのに。
悠斗には、おぞましい程の、執念がある訳でも、ない。
――――……きっと心春が、振り切って、前を向いたら。自然と。
悠斗に消えてほしくないとか。
――――……ほんと、霊に絡むもんじゃない、と。
今までとは全く違う意味で、初めて、思った。
高校の入学式当日の朝。クラス分けを見て、教室に向かう。
一年生の廊下に立った所で、そこらに居る奴らがオレを遠巻きに見てるのは分かる。
んー。やっぱ、目立つか、オレ。
でもなー髪の色、父さんが染めてほしくなさそうだし。でもこれが一番目立つような……あ、今はピアスもあるか。
自由って聞いてたけど、入学式につけてくる奴は居なかったか。でも別に、校則違反じゃないし良いよな。
自分のクラスの前に着くと、担任だろうか。待ち構えていたので、近寄った。
「名前は?」
「上宮伊織です」
「ああ。君が神社の子ですね。よろしくね」
……なんだかよく分からない会話だったがとりあえず頷いて、変な花を貰い、教室に入った。
瞬間。なんか俯いてた女子が、オレの気配に咄嗟に顔を上げて。
「え」
「あ」
昨日会った、悠斗の片割れ――――……心春の漏らした「え」と。
オレの咄嗟の声が、同時だった。
「ふ、りょ――――……」
ふ、りょ……??
何か言いかけて、心春は止まった。というか、言いかけた言葉よりも、その、涙目。
つかまたこいつ――――……朝から何、泣きそうな顔してんだ。
そう思ったけど、どうやらこいつ、オレを見て驚きすぎて、涙引っ込んだらしい。
……まあ、そんなに驚かれるのも心外だが。
色々事情を変に知ってるせいで、泣かれても気分が悪い。
まあ、泣かなくて良かった。
何となく気になって、たまに視線の端に入ってたが。
とりあえず一日目は、そのまま何事もなく入学式が終わり、入学記念の集合写真をを撮ってから、教室で明日の事を少し説明された後、下校になった。
さっさと帰ろうと歩いていたら。
途中で、なんと、じいちゃんとその仲間たちに会ってしまった。
「入学式だったのか、おめでとう」
「伊織も高校生かー、あんなに小さかったのになあ」
「お前、耳に飾りなんかつけてっていいのかあ?」
じいちゃんの仲間はよく神社にも来るし、オレの事を小さい頃から知ってて、ほぼ、孫みたいに扱ってくる節がある。
「つか。耳に飾りって。じーちゃんと全く同じだし。ピアス、だから」
苦笑いで返事をすると、「何を小生意気なー」と笑われる。
「そういえばお前、最近桜の樹の下で何してんだ?」
「あー……」
「こないだ噂んなってたぞ、大悟んとこの伊織が、ずっと桜の樹の下に居る、とか」
…………もう、ほんと。皆、暇だなー……。
「……なんか、咲かねえから、気になって」
今なら一番納得されるだろう理由を、ふと思いついて言ってみたら、皆、意外そうな顔でオレを見てくる。
「そうなのか? 伊織、そんなに桜が好きだったのか」
めんどくさいので、うんうんと頷いている。
じいちゃんは、これに関しては分かってるので、それ以上は何も突っ込まないで聞いている。
「もうすぐ、樹を見る医者を呼ぶらしいぞ。さすがに異常だって事になってるらしい。ここらで一番大きな桜だからなあ」
「ほんとに。このまま咲かなくなったら、嫌だよな」
……なるほど。医者が来るのか。
あれやこれやじいちゃんたちが喋ってるのを聞きながら。
――――……まあ確かに。
あの桜は、他の桜よりも目立つし。
街の皆がずっと目に映してる樹、な気がする。
――――……悠斗たちが、ずっと過ごしてきた、桜の樹。
あれやこれやと色々言われつつ、じいちゃんとその仲間と別れた。
樹の医者ね……。なんかそういうのテレビで見た事がある気はするな。
――――……それで直るような類なら、いいけどな。
思いながら、公園に近付く。
悠斗は居るかと樹を見ると。悠斗の姿と――――……また、心春。
ため息を付きながら、近づいた。
桜を見上げている心春と、それを見守ってる、悠斗。
悠斗の方が先にオレに気が付いた。
また、ざあっと、強い風が吹く。
――――……この風は……どうして起こるんだろう。
あとで父さんに聞いてみよう。
「――――……また泣いてンのか」
思わずオレが口にした言葉。
ふっと心春がこっちを向いた。
心春に、年上だと思ってたからびっくりした、とか言われる。
「オレは昨日制服見たから。もしかしたら会うかとは思ってた」
「――――……」
「同じクラスとは思わなかった。……つーか、お前、朝もあれ、泣くとこだったろ」
「――――……」
「泣いてるの、良くないって、言ったろ」
「……どうして、そんな事、言うの……?」
返してくる心春を、悠斗が、じっと見つめてる。
「どうしてって?」
「……神社の息子さん、だから?」
「……ああ。聞いたのか」
少し黙ってから。心春は、じっとオレを見つめた。
「…………私が泣いてたら……悠斗は、どうなるの?」
「――――……どうなるっつーか。一般論で言ってる。思い出すのはいいけど、悲しみすぎて、いつまでも泣きすぎるのは良くないってこと」
そう言うと、心春は、じっと考えてる。
オレの顔を見ながら、考えて。それから、少し視線を落とした。
「わかった。……ありがとう」
「――――……」
「じゃあ……帰ります」
「……ああ」
最後に桜の樹を見上げてから、心春は帰って行った。
また、悠斗は、心春を見送っている。
「――――……ちょっと驚いた」
「え?」
「伊織、オレと同じ高校だったんだね」
「……ん」
「なんかさっき、心春がさ――――……ほんとなら、オレと同じクラスだったんだって……呟いてた」
「……そうなのか?」
「うん。誰かに何か聞いたのかもね……」
「――――……」
一度黙って。
それから、ため息交じりに、悠斗は。
「……行きたかったなー。 ……伊織と心春と、同じ高校」
「……お前、生きてたらオレには話しかけないんだろ」
いたたまれずに、敢えて少しふざけてツッコんだら。悠斗はオレを見て、ふ、と笑った。
「そこらへんで会ったら話しかけないけどさ――――……同級生だったら、別。良い奴なの、きっとどっかで分かったと思うよ」
「――――……」
「……生きて、一緒に居たかったな……」
「――――……」
そうだな、と言おうと思ったけど。
――――……未練がまた一つ、新たに増えてしまうのだろうかと思って。
何となく、言えなかった。
というか。
もはや。――――……オレの方に。
未練が残りそうな気がしてくる。
霊なのに。
……きっと、いつか。
いや、きっと近い内。 悠斗は、消えると思うのに。
悠斗には、おぞましい程の、執念がある訳でも、ない。
――――……きっと心春が、振り切って、前を向いたら。自然と。
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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
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