「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

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第三章

8.

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 空手の大会も近いし、試合形式での練習。連続して戦った。
 他の事は考えず、集中して、目の前の相手の動きにだけ気を配る。

 練習を終えて、挨拶をして、道場を出る。
 少し遅くまで居たからもう十九時を回っていた。


 あんなに集中してたのに、出た瞬間に。 
 すぐに浮かんだのは。
 あいつ、まだ、探し回っているのか?ということ。

 ため息を付きながら、公園に行くと、悠斗がオレに気づいて振り返った。


「伊織、おかえり。空手だったんだ。おつかれ」

 ここで、おかえり、とか。言われるとか。
 ……ほんと、変な感じだな。


「なあ、悠斗」
「ん?」

「――――……お前が事故に遭った時さ」
「うん……?」

「どこに向かってたか、覚えてるか?」
「うん。覚えてるよ……心春の誕生日プレゼント、受け取りに行く所でさ」
「……どこに?」

 聞くと、悠斗は不思議そうな顔をした。

「何でそんなこと聞くの?」
「あいつが、悠斗が向かってた店を、探してる」

「ん? ……心春?」

 不思議そうに聞き返される。

「……お前が最後に行こうとした場所を、知りたいんだって」

 そう言うと、悠斗は少し黙って、それから首を傾げた。

「どうやって探してるんだろ? オレ、何も言ってないし」

「あのでかいショッピングモール、端から聞いて回ってる」
「――――……」

 悠斗は、目を大きく開いて。

「――――……はは。心春らしい……」

 少し俯いて。小さく笑う。

「…………そっか」

 悠斗は、苦笑い。

「――――……でも、そこじゃないから。どんなに聞いて回っても、見つからないんだよね。……どうしようかな」

 悠斗は、はー、とため息。
 咲かない桜を見上げている。

「……ショッピングモールの近くにさ、スマホグッズを置いてある店があるんだよ。ストラップとか、スマホカバーとかさ、そういうのが大量にある店。知ってる?」
「分かんねえけど」
「その店ね、写真をイラストにしてスマホカバーを作ってくれるんだ。心春が飼ってた柴犬の写真と桜の花で、イラストを作ってもらったんだけど、結構時間がかかってさ。受取が誕生日ギリギリになっちゃって。それを取りに行ったんだよね」
「――――……」

「……どうやって心春をそこに辿り着かせてあげればいいのかなあ」

 うーん、と悠斗が考え始める。

「――――……予約の紙とかどっかに無えのか? それがあれば」
「それがさあ。店員さんにあれこれ無理言ったら、出来るか聞いてみるって言ってくれてさ。で、電話が来てOKが出たの。本当は予約票書きに行くべきだったんだけど、オレがあんまり熱心だったから、絶対取りに来るでしょって笑われてさ。このまま電話で注文受けますって言ってくれたんだよね。加藤さん、ていう男の店員さん。だから、予約票とか、無いんだよね……」

 はー。

「悠斗に聞いたって言えたら、早いんだけどな」
「――――……無理だしね」

 二人で、んー、と考えて。

「じゃあ、あのでかい店の捜索が終わったら――――…… 近くの店も見るように言ってみる」
「……ありがと。……いやーでも……あのショッピングモールって、一体何店舗あんの……大変だよな、心春……」

 ため息の嵐。な気がする。


「……最悪、オレ。手伝うか……」
「え?」

「さっさとあっちを切り上げて、違う店も見るように提案してみればいいんだろ?」
「そうだけど。……いいの?」

「……良くねえけど」
「――――……」


「……あいつに受け取ってほしいだろ?」


 そう言うと。悠斗は、オレを見つめて。
 ふ、と微笑んだ。



「……ありがと、伊織」
「――――……」


 頷いて。
 そのまましばらく。

 黙って、桜を眺めていた。


 
 

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