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第一章
送り迎えスタート!
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授業が終わり、特に部活をしているわけでも無い私は帰り支度をしていた。すると、秋永君が私の席にやって来た。
「今日はどうする? 真っ直ぐ帰るのか?」
「あ……」
そうだった。行きも帰りも送ってもらうって、そんな約束しちゃったんだった。
一緒に帰るのが当然という態度でにこにこ笑って傍に居る秋永君に、クラス中の視線が集まった。私が男子と一緒に帰ることを承諾しているような素振りが、然も不思議と言った表情で。
「そのつもりだけど……」
「長束さんも一緒なんだろ?」
「そだよー」
おどけたようにぴょこんと横から雅乃が顔を出した。
「じゃあ帰ろうか。長束さんは……?」
「あ、私は未花とは駅まで一緒だけど、乗る電車が違うんだ」
「そうなんだ……」
「大丈夫よ。私は未花と違って、痴漢被害になんて遭ったことが無いから」
「そっか」
雅乃の言葉に、秋永君は安心したように微笑んだ。
もしかして、……秋永君って、いつもへらへらしていて何考えているのか分からない胡散臭い人だと思ってたけど……。本当はそうじゃなくて、普通にただ優しい人なのかな。
「じゃあ、帰ろうか。あ、またなー 当麻」
「おう、明日な」
鞄を手に席を立って、三人で教室を出る時、背後から大勢の視線を浴びているような変な気持ちになった。
気のせいだろうかと、チラッと後ろに視線を向けると……、気のせいでは無かった。男子も女子も、なんだか訝しい表情でみんながこちらを見ている。どことなく女子の視線も厳しくて、私は小首を傾げた。
「未花ちゃん、どうかした?」
「あ、ううん。なんでもない」
……そう言えば。
「ねえ、秋永君」
「なに?」
「なんで私のこと、ちゃん付けしたがるの? 前に止めてって言っても聞いてくれなくて、そのままになってるよね」
「えっ?」
私の問いに、秋永君は目を見開いてバツの悪そうな顔になり頭を掻いた。隣では雅乃が苦笑いをしている。
……? 私なんか、変なこと聞いた?
首を傾げて秋永君の返事を待っていると、秋永君はしょうがないなと言った感じで口を開いた。その顔は、ほんのちょっぴり赤い。
「……俺の中で、一番未花ちゃんが可愛いと思うし特別だからだよ」
「は? ……え?」
……可愛い? 特別?
思いもよらない返答に、今度は私が絶句した。てっきり私が子供っぽいからとか、ちょっと揶揄いの気持ちからだとか、そんな答えが返ってくると思っていたのに。
「そう……、なんだ」
何て返事を返していいのか分からず、ありきたりの言葉になってしまった。しかもなんだか顔が熱い。そしてそんな私を、雅乃が笑いをかみ殺したような妙な表情で見ていた。
「今日はどうする? 真っ直ぐ帰るのか?」
「あ……」
そうだった。行きも帰りも送ってもらうって、そんな約束しちゃったんだった。
一緒に帰るのが当然という態度でにこにこ笑って傍に居る秋永君に、クラス中の視線が集まった。私が男子と一緒に帰ることを承諾しているような素振りが、然も不思議と言った表情で。
「そのつもりだけど……」
「長束さんも一緒なんだろ?」
「そだよー」
おどけたようにぴょこんと横から雅乃が顔を出した。
「じゃあ帰ろうか。長束さんは……?」
「あ、私は未花とは駅まで一緒だけど、乗る電車が違うんだ」
「そうなんだ……」
「大丈夫よ。私は未花と違って、痴漢被害になんて遭ったことが無いから」
「そっか」
雅乃の言葉に、秋永君は安心したように微笑んだ。
もしかして、……秋永君って、いつもへらへらしていて何考えているのか分からない胡散臭い人だと思ってたけど……。本当はそうじゃなくて、普通にただ優しい人なのかな。
「じゃあ、帰ろうか。あ、またなー 当麻」
「おう、明日な」
鞄を手に席を立って、三人で教室を出る時、背後から大勢の視線を浴びているような変な気持ちになった。
気のせいだろうかと、チラッと後ろに視線を向けると……、気のせいでは無かった。男子も女子も、なんだか訝しい表情でみんながこちらを見ている。どことなく女子の視線も厳しくて、私は小首を傾げた。
「未花ちゃん、どうかした?」
「あ、ううん。なんでもない」
……そう言えば。
「ねえ、秋永君」
「なに?」
「なんで私のこと、ちゃん付けしたがるの? 前に止めてって言っても聞いてくれなくて、そのままになってるよね」
「えっ?」
私の問いに、秋永君は目を見開いてバツの悪そうな顔になり頭を掻いた。隣では雅乃が苦笑いをしている。
……? 私なんか、変なこと聞いた?
首を傾げて秋永君の返事を待っていると、秋永君はしょうがないなと言った感じで口を開いた。その顔は、ほんのちょっぴり赤い。
「……俺の中で、一番未花ちゃんが可愛いと思うし特別だからだよ」
「は? ……え?」
……可愛い? 特別?
思いもよらない返答に、今度は私が絶句した。てっきり私が子供っぽいからとか、ちょっと揶揄いの気持ちからだとか、そんな答えが返ってくると思っていたのに。
「そう……、なんだ」
何て返事を返していいのか分からず、ありきたりの言葉になってしまった。しかもなんだか顔が熱い。そしてそんな私を、雅乃が笑いをかみ殺したような妙な表情で見ていた。
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