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第二話

俺、性欲を持て余す

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 真っ暗な部屋の片隅。
 ベッドから足を下ろし座る俺の股の隙間には、聖女カタリナが裸で地べたに座っていた。
 桜桃のように頬を赤く染め、熱い吐息を漏らしながら顔を恐る恐る下半身に近付ける。
 そして、濡れた舌を出すとバキバキに勃起したチンポへ当てた。テイク18回目。

「こ、こぅでしゅか……?」
「……ん~」

 肉厚の舌が亀頭を包み込み、舐め回す。
 右手で根本を掴み、丹念に、優しく。
 カタリナの性格が出ているというか、本当に一生懸命してくれている。……のは、わかるんだけど。

「足りないかなぁ……」
「すみません、もっと頑張りますから……んッ」

 ペロペロペロペロ。犬が水を飲んでる時みたいだ。一応、簡単にフェラチオのやり方は教えた。
 第一に噛まないこと。第二に包み込むこと。第三にカリ裏に舌をそわせること。
 最低限のテクニック……徐々に音を鳴らすだとか、空気を口に含むとか、唾液とか、色々あるんだけど、後からかなーって考えてた。
 だが、このレベルでは──ダメだ。

「ごめん、カタリナ……滾らん」
「ふぇ!? ぁ……ああ……ぶ、不器用ですみません……」

 悲しい顔をするんじゃない。こっちまで、申し訳なくなるじゃないか。
 俺は立ち上がり、ズボンをあげたようとした時、カタリナがしがみ付いてきた。

「ぁ、あの! 口、開けてますんで……奥まで挿し込みませんか!? イラマチオ……でしたっけ? それならテクニックが無くても──」
「いや、趣味じゃないんだ。カタリナが望むならするけど……でも、今は仕方なく、だろ?」
「ぅぅ……そうですけど……」

 責める事に関しては非常に苦手みたいだな。
 趣向を変えて楽しもうかと思ったんだけど。

「も、もしかして……今日は無し、ですか? 私のオマンコ、これを挿れて欲しくて疼いてしかたありません」

 宝物でも触るように、大事そうに両手でチンポを包み込むと、うっとりと顔をすり寄せてくる。
 あぁ、そうだ、それだよ。俺の劣情を滾らせるのは。

「……そんなに、欲しいのか?」
「はい、見てください……ここを♡」

 カタリナは、自ら股をM字に開き、陰部を拡げ見せ付けてきた。
 とろっとろに熟したドスケベマンコ。ヒクつきながら、誘惑してくる。
 触ってもいないのに、既に愛汁が溢れていた。

「少し前までは清楚代表みたいな顔してた癖に、えらく淫乱になったもんだな」
「意地悪です……私を変えたのは貴方ではありませんか、リベールさん♡」
「……どうして欲しいか、しっかりと言ってみろ」
「はい……貴方様の凶根で、私の淫乱マンコをぐちゃぐちゃに犯して下さい♡」
「──ッ」
「ぁ、凄い……大きくなった……♡」

 やっぱりコイツは生粋の受けだ。
 もう、フェラチオとかどうでもいい。
 俺は、コイツを犯す。それだけだ。

「か、カタリナッ!!」
「───そこまでだ。リベールよ」
「ッ、ぅえ!?」

 彼女を襲おうとした瞬間、耳元に聞き覚えのある声で囁かれた。ピタッと体を止め、ゆーくりと横を向く。

「……い、いつからいたんっすか?」
「フェラチオの気持ち良さを熱く語っている時から、かな」
「最初っからじゃないか……」
「ツィオーネさん!? どど、どーしてここに!?」

 慌てて布団のシーツで裸体を隠し、驚き声を震わせた。
 そりゃあビックリだ。だって、全然気配を感じなかったもん。
 ツィオーネは腕を組みながら「ははッ」と大きく笑う。

「いやはや、お前たちが子を成そうとしているとはな。楽しみだ」
「こ、子供!? おいおい、ツィオーネ、それは気が早いぞ」
「へ……リベールさんとの……子供……はわわ」
「カルロッテ、交尾を続けてもいいぞ?」
「ぃ、いえ、大丈夫です! ね、リベールさん?」
「……あぁ……」

 正直、全然大丈夫じゃない。
 俺の息子はカタリナをアヘアヘ言わせる気満々で、先端からは我慢汁《なみだ》が溢れていた。
 しかも、散々舌で焦らされた後……だからな。尚更だ。
 でも、うん、仕方ないな……。

「ツィオーネさん……それで、どーされたんですか?」
「ん? リベールには伝えていたんだが、聞いてないのか?」
「え……リベールさん?」

 俺に伝えていた……? なんだっけ……ああ゛!

「思い出したか? 間抜け野郎」
「……ブリーフィングの時間か」
「えぇ!? めちゃくちゃ大事なこと、忘れちゃってるじゃないですか!」
「コイツの頭には交尾しかないからな。ほら、さっさと準備しろ」
「は、はい、すみません! 急ぎますよ、リベールさん」

 すっかり忘れていた。全力で復興作業に勤しんだから、汗だくのカタリナと早く身体を合わせたくて……うむ、まぁ、エッチな聖女のせいだな。
 というか、やっぱ一回抜きたい。ツィオーネが部屋を去った事を確認した後、慌ただしく準備する彼女へ聞いてみた。

「カタリナ……やっぱ一回しない?」
「こ、こればっかりはダメですよ! ツィオーネさんに、殺されちゃいますよ!?」
「……」

 彼女は真面目だった。


☆☆☆


「では、現状の整理をしよう」

 いつもの丸テーブルに、今日はティーカップが3つ置かれ報告会が始まった。
 カタリナはガチガチに肩を強張らせながら、発言する。

「わ、私からでもいいですか?」
「うむ、カルロッテは勇者側の者であったのだ。彼方の事情には詳しいだろう。それを聞いた上で、今後の対策を思案しようではないか」

 俺とツィオーネでは、あくまで予測をすることしかできないのだ。
 こちら側も、戦力、防衛力ともに低い為、対策を行うにしても、なるべく最小限の範囲に収めたい。故に、情報はできる限り欲しい。
 そーすれば、より高度な予想を建てることができるし、より集中的に対策を打てる。
 彼女がどれほど勇者の情報を持っているか……かなり重要だ。

「頼むぞ、カタリナ。俺はあまり、勇者パーティの動向に詳しくはない。内情を知るのは、お前だけが頼りなんだ」
「その件なんですが……実のところ、私も勇者様が何をしたかったのか、理解できていないのです……」
「なに!? カルロッテ、お前はよくわからぬまま妾の街に攻め込んで来たのか!?」
「──ヒィ!」
「まぁまぁ、落ち着けってツィオーネ。淫紋の効果、分かってるだろ」
「むむ……」

 街や民の事となると、一瞬だが感情的になる。
 ツィオーネの僅かに残った子供っぽい部分だ。
 ……いや、当たり前の反応か。前魔王が無情過ぎただけで。

「しかし、理解できていないって……勇者からはどういう命令を受けて来たんだ?」
「はい、魔族を滅ぼすから協力して欲しい、と。力を授けるから、リベールさんを尾行して魔界への道筋を解き、潜入。後は出来る限り、魔族を殺すように言われました……後で増援が来るからと」
「その上で、第一討伐対象が俺だったのか」
「そうですね。なんというか、勇者様はリベールさんを恐れているように感じました」
「勇者は俺の力の正体を知らないが、自身の血縁に何の力も無いとは思わなかった。故に、まずは様子見を送った……という解釈でいいだろう」
「私はそもそも、反発派の存在すら知りませんでした。淫紋だって、勇者様の力を授かった証だと……」
「……わかった。ありがとう、カタリナ」
「いえ、お力添えできず申し訳ございません」

 やはり、俺が予想していた通りだった。
 ルイの奴……戦いの為に女を捨てるような外道に成り下がったか。
 ツィオーネは茶を啜ると頬杖を立て言う。

「リベール、お前は今後、勇者と反発派がどう動くと予見する?」
「……正直、的を得た予見はできない」
「今回はカタリナ襲撃という我々にとっては後手を取る形になってしまった。不利な状況だぞ」
「わかっている。だがな、カタリナを捨て駒として扱うこと自体、俺の想定外の行動なんだ」
「ならば、反発派との癒着は深刻かもしれぬ」
「あぁ、俺たちの存在が余程邪魔らしい。だが、俺たちが消えても、次に待っているのは反発派と勇者パーティの戦い。勇者もあまり戦力を消耗させたく無いはずだ」

 反発派と勇者が組んではいるが、あくまで利害の一致による協定だ。
 三つ巴の状態に、変わりはない。

「そうとするならば、なぜカルロッテを尖兵に?」
「俺の存在を恐れた苦肉の策だろう。それに、カタリナは元々、和平を望んでいた……裏切りの可能性がある者を、早々に排除する意味もあったかもしれない」
「では、次は……」

 暫くは腹の探り合いが続きそうだな。
 なら、隠密に長けた者か? 情報戦……面倒だ。

「カタリナの生死の確認と、俺の能力の調査を目的とした者が来る可能性が高い」
「ふん、妾は眼中に無し、か」
「王は民がいなけりゃ意味をなさない。最悪、ツィオーネを殺さずとも、民を皆殺しにすればいいんだ。優先順位はまず、人間でありながら魔王に付き、脅威である俺になるだろう」
「……そもそも、何故魔界への侵入経路を確保したというのに、勇者は大々的に動かない? それこそ、魔族の生き残りがいたと騒ぎ立てればよいだろうに」
「あくまで『魔族が人間を襲う』構図にしたいんだよ」
「理解できんな。あくまで自分たちは正義で、魔族は悪、と言いたいのか」
「……正確に言えば、勇者の力自体、正義の名の下でしか発揮されない。人間側の民や、周囲の人間の信頼があってこそ、勇者は勇者になる」
「なるほど……信頼が虚栄となった時、勇者アンチとしてリベールが存在するのだな」
「その通りだ。流石、ツィオーネ」

 ルイにとって、今の立場は最も力を発揮できるだろう。
 民の信頼を失わず、魔族を殲滅し、自身の地位を更に上げる……ルイ、欲望に呑まれたか。

「それに、俺が使っていた魔界へ入る為のゲートは一人用、例え魔法陣を記録しようと宝玉は一つだけ……一人ずつしか魔界へは入れない」
「条件はこちらと同じ……か」
「ところで、ツィオーネの方はどうだ? 人間界へ漏れた魔族の正体、掴めたか?」
「あぁ、大方検討は、な。魔王城地下100階にある大型転移魔法陣の使用は行われていない」
「なら、少数、か」
「奴らも宝玉を一つ持ち合わせているようだからな、リベールと同じ方法で人間界に行ったのだろう。一度使うと、8時間は再転移不可能故、多人数で向かったとは考えにくい」

 条件は同じ。
 勇者にとっても、人間界に漏れた一体を倒したところで大した名声にもならず、魔族にとっても一体だけでは人間を滅ぼすことができず。
 様々な思惑の糸が絡み合ってるな……だが、中心点は間違いなく、この魔王城の大型転移魔法陣だろう。
 一気に1000体もの魔族を人間界に送ることができる大戦時の遺物。
 破壊することは叶わず、現在ではツィオーネが封印を施している。
 これが解除されれば……間違いなく大戦が勃発するだろうな。

「はぁ……たく、面倒だ。ルイの奴、おにーちゃんに迷惑ばかりかけやがって」
「クク、こんな不出来な兄では、反抗したくなる奴の気持ちもわからなくもない」
「んだと!? ツィオーネ、それは酷いんじゃね──ッ、あ、れ……?」

 勢いよく立ち上がった瞬間、視界がぐるぐると回り始めた。
 急に足が震えだし、その場に尻餅を付いてしまう。
 な、なんだこれ……? す、ごく、ぐにゃぐにゃだ。

「リベールさん!? どうしたんですか!?」
「ぇ……ぁ、あれ? ぅー、ぁ」
「あわわわわ、ツィオーネさん、リベールさんが!?」
「初めて使った力酔い、復興作業、作戦思案の疲れが同時に来たのだろう。仕方がない……今日のところはここまでだな」
「ま……て、大丈夫……だ」
「無理をするな。これから戦いは激しくなると予見する。今のうちに休んでおけ、人間」

 くぅ~人間は貧弱とでも言いたいのかぁ?
 大丈夫、できるできるやればできる絶対にできる気持ちのもんだ──ぁ。

「うぁぁぁ! リベールさーーーーん!」

 プツン、と糸が切れるように、俺の視界は真っ暗になった。
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