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第二話

俺、夢を叶える

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 この蜘蛛、クルアーンの蜘蛛じゃないか。どうしてこんなところに。
 今からお楽しみだって言うのに邪魔しやが──って、あれ?

「どうしたの、リベールちゃん?」

 濃い霧が晴れていくように、思考が鮮明になっていった。
 そうだ、俺はさっきまで目の前の女と戦っていたはずだ。体力切れになったところを押さえつけられて、それから──ッ、あぁ、夢か!

「……形勢逆転だ、サキュバス」
「──っ、な!? り、リベール!?」

 奴の両手首を掴み、ベッドに押さえつけニンマリと笑った。
 俺の覚醒に気が付き慌てて振り解こうとするも、そうは問屋がおろさねぇ。

「くッ、この……離せ!」
「残念だったな。淫夢といえど、ここは俺の夢ん中だ。意識さえハッキリしていれば、俺の為の世界になんだよ!」
「なぜだ……貴様は私の術中に嵌ったはず……」
「あぁ、ウチの優秀な幹部がなんとかしてくれたみてーでな」
「優秀な幹部……まさか!?」

 あっぶねぇ、マジで。淫夢に閉じ込められちまったら自力で脱出は不可能。
 クルアーンは俺の元に淫魔が来ることを予見し、予防線を張っておいてくれたのだ。
 流石、魔族一の知将と呼ばれるだけのことはあるな。
 んで、その知将様が状況を把握しているだろうに蜘蛛以外だーれも助けを寄越さない理由は、一つしかない。

「たく、でけー仕事押し付けやがって。さっさと倒して助けに来いってことか。全く、俺は魔族みてーに治癒能力高くねーぞ、少しは休ませろよ……って、今は寝てんのか。んん、休めてるのか??」
「一人でブツブツと……私もみくびられたもんね。反発派のリーダーをそう簡単に倒せると思わないことよ!」
「おっと、あぶねぇ」

 背中から翼を伸ばし、先端部で切り裂こうとしてくる。それをベッドから飛び降り紙一重で回避した。
 サキュバスの妖淫な雰囲気は、一気に張り詰めたものへと変わる。

「だったら実力行使でいかせてもらうわよ。夢の中で、永眠なさい」
「おいおい、こんな可愛らしい少年を虐めようって言うのか? 大人気《おとなげ》ないぜ」
「憎たらしいクソガキの間違いで──しょ」

 翼はネジのように螺旋を描き、細く長い漆黒の槍へと形を変える。
 槍を手に取ったサキュバスは、距離を取った俺に対し素早く距離を詰めてきた。

「堕とせぬなら殺すまで、覚悟ッ!」
「肉弾戦なら勝てると思ったか?」
「現実で格付けは済んでいるぞ!」
「おっと残念、ここは『俺』の夢の中さ」

 槍先をしっかりと見つめ、もう一度紙一重で躱す。

「ッ……このォ!!」

 何度繰り出される突き、突き、突き。
 一撃必殺の技が横を通り過ぎていった。
 これだけ正確に急所を狙えるとは、流石は反発派の女王といったところか。
 戦闘の経験値が段違い、そりゃあいくら弾劾の力があろうと圧倒される訳だ。
 今後はこの力に頼らず、戦いの訓練を積んだ方がよさそーだな……めんどくさ。

「ちッ! 何故だ、何故当たらんッ!」
「言ったろ、俺の夢なんだ、何もかも俺の思い通りなんだよ。時間だって、な」

 体感時間の変更。サキュバスには超高速に感じているだろうが、俺にとっては欠伸が出るほどスローだ。

「だ、だったらッ!」
「逃げることも許さないぜ? わざわざパーティ会場まで足を運んでもらったんだ。もっと楽しんでいけよ」

 それに、ここからが本番だしな。

「さぁ、特別ゲストの登場だ! 黄色い声で泣き喚け、サキュバス……サラドナイトさんよぉ!」
「──ッ!? な、なんだと!?」

 攻撃を続ける彼女の腕を突如地面から現れた紫色の触手が拘束する。
 一本では無い。二本、三本、四本と俺が願えば願うだけ大量の触手が出現。
 腕、足、胴体、首、粘膜質の触手が巻き付き自由を奪っていった。いいぞいいぞ。

「ぐ、ぁッ! 貴様……何をする気だ!」
「俺はな~触手プレイっつーやつをやるのが夢だったんだ」
「ま……まさか……」
「いやぁ~夢の中で夢が果たせるなんて、夢のような話だぜ」
「よ、よせッ! やめろ、離せッ!!」
「知ってるぜ? サキュバスは物理ダメージには強いが、精神ダメージには弱いってな。どーなっちゃうんだろうな、ワクワクするだろ?」
「……ただで済むと思うなよ……」

 ギッと髪色と同じピンクの瞳で睨まれる。
 おぉ、いーね。興奮する。
 さて、いつまで持つかな。

「大の字に拘束された状態で凄まれても怖くねーな。それにお前、まだ耐えれるなんて勘違いしてんじゃねーか?」
「はッ! 淫行で人間がサキュバスを堕とそうなど、自惚れるのもいい加減にし──ッ!!?!?」
「おっと、手が滑った」

 サラドナイトの言葉を遮るように、俺は薄い衣服の上から彼女の乳首をそっと撫でた。

 その瞬間────

「んひぃぃぃいいいい゛ッ!!♡♡♡」

 部屋全体に媚びた雌の声が響き渡る。
 ビクビクビクッと激しく身体を痙攣させ、股の隙間から愛汁を垂れ流す。思った以上の効果だ。

「にゃ……なんだ今の……ぉ、おかしい……おかしいぞ……はぁ、はぁ……」
「おやぁ~、おややぁ~、天下の淫魔様が、まるで生娘のような喘ぎ方ですなぁ」
「……そうか、くそッ……そういうことか……」
「あぁ、勿論感度も弄らせてもらいましたよ。ざっくり三千倍程度に」
「かッ……感度三千倍……!?」
「クク、楽しくなってきたろ? いい顔してんじゃねーか」

 剣幕の張ったキツイ表情は絶望の顔に。
 だが、その中にも僅かだが『期待』の色を感じ取れる。
 俺は舌舐めずりをし、最高に楽しい一時を愉しむことにした。
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