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第三話
私、恋話をします
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♢♢♢
「とまぁ、これがリベールとの出会いだ」
「ひょ、ひょぇ~」
「……なんだその間抜け声は」
「ぃ、いえ、失礼しました……」
そうかぁ、あの時リベールさんはツィオーネさんと出会っていたのかぁ。
勇者様から戦線に出ると迷惑だって言われて、待機していただけの筈なのにボロボロで帰ってきたのは、そういった経緯が……。
お互い敵同士だった者が惹かれ合う、なんだかロマンチックで心を擽られてしまいます。
「それで、それでどうなったんですか!?」
「妾の軍に連れて帰り治療を施した。それから、裏で定期的に会うようになってな」
「うんうん! それで、それで?」
「周りの奴らも最初はリベールの事を敵視していた。だがまぁ、あの性格だからな……直ぐに打ち解けたよ」
「流石ですねぇ」
「その時に奴は我々に『遊び』と『創造』を教えたのだ」
「遊びと創造……」
「畑の作り方や人間界の遊び……娯楽だな。魔族には無かったものだ」
なるほど、なんとなく分かってきた。
「つまり、和平派の皆さんはリベールさんからそういった事を教わることで、殺戮衝動を抑えられたのですね?」
「正解だ。そして妾も和平を願うようになった。戦わなくてもよい可能性……もしかしたら、人間と分かり合えるのかもしれない、とな」
勇者パーティでは役立たず、臆病者、と蔑まれていたリベールさんが、実は裏では大きな影響を与えていたんだ。
戦いたくはないけど「仕方がないことだ」「必要な犠牲だ」と目を瞑り、諦めていた私とは大違い。凄い、本当に凄い……。
「リベールさんはツィオーネさんの夢を叶える為に奮闘しているけど、元はと言えば彼が願わせたことだったのですね」
「あぁ、そういうことになるな」
「ふふ……」
「ん? 何がおかしい?」
「いや、まるで恋人同士みたいだな……って」
「──ッ!! ば、馬鹿を言うな!!」
瞬間、ツィオーネさんの顔がリンゴのように赤く染まった。
「た、確かに、アイツは妾にとって大事な男だが! 感謝もしているし、アイツの為であれば、自身を犠牲にすることだって厭わぬ!! だ、だが、こ、恋人……か。ぃ、いや! リベールが一人の女を愛するわけないだろぅ!? そ、れに……妾は魔族、種族違いだ!」
「へぇ……へぇ、ほぉ~」
「ッ、カルロッテよ! その目をやめろ! ぐぬぬ~」
明らかにうろたえ、慌てふためく可愛らしい少女。乙女と呼ぶべきかな。
魔族も、女の子が抱く感情は同じなんだなぁ。
照れたり、恥ずかしがったり、こんなに一緒なのに分かり合えない筈がない。
「こ、コホンッ!」
ツィオーネさんはわざとらしく咳払いをすると、顔をキュと引き締めた。
「と、とにかく、以上がリベールが我々に齎らした物だ。だが……今まで必死に抑え、積み上げてきた物も、一瞬で崩れ去る可能性がある」
「……戦い、ですね」
「そうだ、小さな戦いであったとしても、一度本能が呼び覚まされると戻れなくなってしまう可能性もある」
だから私がここに来た時、魔族最強であろうツィオーネさんじゃなくて、リベールさんが止めに来たのかもしれない。
「それに加えて、一番心配なのはリベール……アイツだ」
「さっき言っていたことですね。ネジが外れるとか……」
「戦いとは、殺戮衝動とは力と共に青天井で上昇していくものだ。リベールは力を手に入れ、発揮した。これからも、アイツの力に頼る回数が増えるかも知れない。住民に戦わせることはできぬからな」
力の代償……勇者様が道を外した原因でもある。
「恐らく、より強くなっていくだろう。が、その分……今までの『戦いを嫌う』アイツは消えていく。妾はそれがなによりも嫌なのだ」
「ツィオーネさん……」
「しかし、妾では立場上リベールを止めきれない。だから、カルロッテ」
「は、はい!」
少し悲しそうな、だけど熱い眼差しで見つめられる。そして、感情を込めた声で魔王は呟いた。
「妾に何かあった時は、同種のカルロッテ。お前に任せるぞ」
「……」
私は素直に「はい」と答えられない。
何故、自分が信頼されているのだろう。という疑問の方が大きいからだ。
確かに、和平派でリベールさんと同族なのは私だけ。でも、もっと相応しい方はいる。
「ツィオーネさん、私は……」
「重い役割だ、即答は求めておらんよ。だが、妾は信じておる。リベールが信じたお前の事を、信じておるよ」
そんな言葉を掛けられたのは何年ぶりだろう。
私は、相応しくないかもしれない。
けど、精一杯彼女の期待に応えようと口を開く。
「わかりました。私は──」
ドゴォォォォンッ!!!
しかし、その声は強烈な爆音と振動に掻き消されてしまう。
「とまぁ、これがリベールとの出会いだ」
「ひょ、ひょぇ~」
「……なんだその間抜け声は」
「ぃ、いえ、失礼しました……」
そうかぁ、あの時リベールさんはツィオーネさんと出会っていたのかぁ。
勇者様から戦線に出ると迷惑だって言われて、待機していただけの筈なのにボロボロで帰ってきたのは、そういった経緯が……。
お互い敵同士だった者が惹かれ合う、なんだかロマンチックで心を擽られてしまいます。
「それで、それでどうなったんですか!?」
「妾の軍に連れて帰り治療を施した。それから、裏で定期的に会うようになってな」
「うんうん! それで、それで?」
「周りの奴らも最初はリベールの事を敵視していた。だがまぁ、あの性格だからな……直ぐに打ち解けたよ」
「流石ですねぇ」
「その時に奴は我々に『遊び』と『創造』を教えたのだ」
「遊びと創造……」
「畑の作り方や人間界の遊び……娯楽だな。魔族には無かったものだ」
なるほど、なんとなく分かってきた。
「つまり、和平派の皆さんはリベールさんからそういった事を教わることで、殺戮衝動を抑えられたのですね?」
「正解だ。そして妾も和平を願うようになった。戦わなくてもよい可能性……もしかしたら、人間と分かり合えるのかもしれない、とな」
勇者パーティでは役立たず、臆病者、と蔑まれていたリベールさんが、実は裏では大きな影響を与えていたんだ。
戦いたくはないけど「仕方がないことだ」「必要な犠牲だ」と目を瞑り、諦めていた私とは大違い。凄い、本当に凄い……。
「リベールさんはツィオーネさんの夢を叶える為に奮闘しているけど、元はと言えば彼が願わせたことだったのですね」
「あぁ、そういうことになるな」
「ふふ……」
「ん? 何がおかしい?」
「いや、まるで恋人同士みたいだな……って」
「──ッ!! ば、馬鹿を言うな!!」
瞬間、ツィオーネさんの顔がリンゴのように赤く染まった。
「た、確かに、アイツは妾にとって大事な男だが! 感謝もしているし、アイツの為であれば、自身を犠牲にすることだって厭わぬ!! だ、だが、こ、恋人……か。ぃ、いや! リベールが一人の女を愛するわけないだろぅ!? そ、れに……妾は魔族、種族違いだ!」
「へぇ……へぇ、ほぉ~」
「ッ、カルロッテよ! その目をやめろ! ぐぬぬ~」
明らかにうろたえ、慌てふためく可愛らしい少女。乙女と呼ぶべきかな。
魔族も、女の子が抱く感情は同じなんだなぁ。
照れたり、恥ずかしがったり、こんなに一緒なのに分かり合えない筈がない。
「こ、コホンッ!」
ツィオーネさんはわざとらしく咳払いをすると、顔をキュと引き締めた。
「と、とにかく、以上がリベールが我々に齎らした物だ。だが……今まで必死に抑え、積み上げてきた物も、一瞬で崩れ去る可能性がある」
「……戦い、ですね」
「そうだ、小さな戦いであったとしても、一度本能が呼び覚まされると戻れなくなってしまう可能性もある」
だから私がここに来た時、魔族最強であろうツィオーネさんじゃなくて、リベールさんが止めに来たのかもしれない。
「それに加えて、一番心配なのはリベール……アイツだ」
「さっき言っていたことですね。ネジが外れるとか……」
「戦いとは、殺戮衝動とは力と共に青天井で上昇していくものだ。リベールは力を手に入れ、発揮した。これからも、アイツの力に頼る回数が増えるかも知れない。住民に戦わせることはできぬからな」
力の代償……勇者様が道を外した原因でもある。
「恐らく、より強くなっていくだろう。が、その分……今までの『戦いを嫌う』アイツは消えていく。妾はそれがなによりも嫌なのだ」
「ツィオーネさん……」
「しかし、妾では立場上リベールを止めきれない。だから、カルロッテ」
「は、はい!」
少し悲しそうな、だけど熱い眼差しで見つめられる。そして、感情を込めた声で魔王は呟いた。
「妾に何かあった時は、同種のカルロッテ。お前に任せるぞ」
「……」
私は素直に「はい」と答えられない。
何故、自分が信頼されているのだろう。という疑問の方が大きいからだ。
確かに、和平派でリベールさんと同族なのは私だけ。でも、もっと相応しい方はいる。
「ツィオーネさん、私は……」
「重い役割だ、即答は求めておらんよ。だが、妾は信じておる。リベールが信じたお前の事を、信じておるよ」
そんな言葉を掛けられたのは何年ぶりだろう。
私は、相応しくないかもしれない。
けど、精一杯彼女の期待に応えようと口を開く。
「わかりました。私は──」
ドゴォォォォンッ!!!
しかし、その声は強烈な爆音と振動に掻き消されてしまう。
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