4 / 31
竜人族の国の空気とは
しおりを挟む
「ん……」
ぱち、と目を覚ます。視界にはとある部屋の様子が映った。
……いやこれ私の部屋ね。何でこんな所で私は寝て……?
「起きましたか」
静かな……それでいて洗練されたような声が聞こえてきて、私はそっとそちらを見やった。
……美しい黒髪の男の人だ。眼鏡をかけている。
この人も竜人、かしら……?
「体調はいかがですか? 何か、苦しい所などはありませんか」
「え、っと……、はっ! そういえば、私、倒れちゃったんですよね?! 思い出した……!」
「ええ。使用人のララさんがすぐにご当主様に伝えてくれて、それで俺が来たんです」
俺が来た?
首を傾げた私に、彼は胸に手を当てながらゆっくりとお辞儀をした。
「初めまして、俺はエリック。ブレイアム公爵家に仕えている、医者です」
──お医者様!
私は目を見開くしかなかった。そして、頭の中ではある意味の納得が。
そうか、だからこの人がここに呼ばれたのね。私の体調を見に……。
「あの……、私はなぜ突然倒れたんでしょう? それまで体調がよくなかった。ということもありませんでしたし……」
そうだ。まずはそこだ、気になるのは。
私の質問に、エリック様は椅子に座り直しながら説明してくれる。
「簡単に言えば、マナの濃度のせいですね」
「マナ……? マナって……」
あの、空気中に流れている魔力の一部だったか。
「ここ、竜人族の国ではそのマナの濃度が特段高いんです。人間の国とは比べ物にならないくらい。その濃度の違いがあなたの体に負担になったのでしょう。普段とはまるきり違う濃度で空気を吸い続けたんですから」
なるほど。マナは濃度が濃すぎると人間の身体には毒となる……と。
「そうなんですか……? ということは、私はこの国に居る以上……」
ずっと苦しい状態が続くのではないか。そう思った私に、エリック様は「そこは安心してください」と笑顔で言ってくれた。
「人間が竜人国でも快適に暮らせていけるようにと作られた特効薬があるんです。それを飲めば、この国でも問題なく暮らしていけますよ」
「ほ、本当ですか? よかった……」
安堵の息を漏らした私に、エリック様が同調するように微笑んでくれる。
……落ち着いていて、優しげな風貌の方だ。まるでウィルフレッド様とは大違い。
そこまで考えて首を横に振った。いけないいけない、人を比較するようなこと言っちゃ!
「ただし、この薬を服用するのなら、定期的に俺の診断を受けなければなりません。何せ、まだ開発されてそんなに経ってない薬ですからね。経過観察は怠らないようにしなければ。……それは、大丈夫ですか?」
「は、はい! 大丈夫です!」
思わず元気のよい返事が出ると、エリック様は一度目を丸くした後、くすくすと楽し気に笑ってくださった。
綺麗なお顔の方にそんな笑みを向けられたものだから、私の心はきゅんっ、と少し跳ね上がる。
「では、本日からはこちらの飲み薬を。最初は副作用などに悩まされることがあるかもしれませんが、何かあればすぐ俺のところまで知らせに来てください。使用人の方にも、そうしていただけるようにお願いしてあります」
「何から何までありがとうございました……!」
「いえいえ。これが仕事なので」
すると、部屋の外からどたどたと誰かが走っている音が聞こえた。
何かと扉の方向を見た瞬間、それはバンッ!! と力強く開かれる。
「セルマちゃん、大丈夫かい?!」
「ご、ご当主様……?! それに、夫人まで……!」
心底慌てている様子の夫妻の登場にびっくりしてしまう。
そしてそのままベッドに来て、私の手を握ってくれた。公爵家の当主が私の手を……。考えただけでもくらっと来そうな光景である。
「アルヴィス様。オーレリア様も。セルマ様はようやく目を覚ましたところなのですから、あまりご無理をさせてはいけませんよ」
「あ、ああ、そうだな……。いやはや、君の冷静な判断にはいつも助けられているよ、エリック。おかげで未来のお嫁さんを失わずに済んだ」
「本当にそうね。あなた」
(未来のお嫁さん……)
それってまあ、多分、私とウィルフレッド様のことなんだろうけど。
どうしても、今の私にはそんな気が起きなかった。だって、ご当主様たちですら顔を見に来てくれているのに、彼はちっとも──。
「ほら、ウィルフレッド。そんな所に突っ立っていないでお前もこちらへ来なさい」
──えええ?! 来てたの、ここに?!
慌ててそちらを見れば、確かにウィルフレッド様のお姿が。
私はひそかに感動していた。いえ、感心といった方がいいかしら。
あんなに頑なな態度だった彼が私の見舞いに来るだなんて。
両親に促され、ウィルフレッド様はずいと私の前に出てくる。
目と目が合う私たち。
「…………」
ウィルフレッド様は私の様子を見て……何だろう? なんだか、とても複雑そう~……な顔をして。
そんな時間を数秒、いえ数分? 続けていたところ。
彼の口から解き放たれたのは。
「──ふん。この程度のマナにも耐性がないなんて。所詮、弱弱しい民族である人間の娘だな」
まかり間違っても労りの台詞などではなく。
本当に、こんなことを言ってのけた。
目の前がくらりと遠くなる。
ああ……この方は、私の番と呼ばれるお人は……、人間だからといって、体調の悪い者を労わる仕草さえしないのね……。
「ウィルフレッド! お前、番になんてことを言うんだ!」
ご当主様からの厳しい叱責が入るが、彼はどこ吹く風。全く気にも留めていないようである。
「薬も飲んで、元気になったんでしょう? ならもう見舞いの必要はありませんね。僕は下がらせていただきます」
「まぁ! ウィルフレッド、あなたも彼女の番ならば、本当は心配でたまらないんでしょう?! せめて手を握ってあげたりとか……!」
「それは父上がやってらっしゃるではありませんか。それでは」
いつものように、私を置いて出ていくウィルフレッド様の背中。
なんだか彼とはあまりしっかりと顔を合わせた機会がないように思えるわ。気のせいかしら。
「……息子がすまない……」
ご当主様の申し訳なさそうな声が聞こえてくる。慌てて「お気になさらないでください」と言うが、彼の表情は晴れないままだ。
「しかし、ここまで頑なな姿勢になるのは……やはり、ヴィオラが原因なのか……?」
「……」
「……ウィルフレッドには私からまた改めて話をしよう。セルマ城、あなたは今は身体をどうか休めてくれ」
すっとご当主様がその場を立つ。夫人も並んで立った。
「ひとまずは、薬を使いながらこの国の空気に慣れること。いいね?」
「はい、ありがとうございます」
「エリック、あとは頼んだよ」
「はい」
「お大事に」とそう言いながら、お二人が部屋から出ていった。
少しの沈黙。
(あとは頼んだよ、と言われましても……! 何を話したらよいのか……)
「あの、セルマ様」
「はい?!」
びくう! と肩が跳ねる。いくらなんでもびっくりしすぎよ、私!
「セルマ様は……、ウィルフレッド様の「運命の番」なんですよね?」
言われた言葉にきょとんとする。
「ええ、そうですね」
私の答えに、エリック様は暫し何かを考えこんでいるかのような表情になる。
なんだか話しかけずらくて、その間、黙ったままでしたけれど。
「セルマ様」
「はいっ?」
ぎゅっと突然手を握られるからびっくりしてしまったわ。
困惑している私を他所に、エリック様が真剣な表情でこう言ってくる。
「困ったことがあれば、いつでも。俺のところに来てくださいね」
「は、……はぁ、……?」
どういう意図の言葉なのだろう……。
私は手を握られたまま、暫し固まることしかできなかった。
ぱち、と目を覚ます。視界にはとある部屋の様子が映った。
……いやこれ私の部屋ね。何でこんな所で私は寝て……?
「起きましたか」
静かな……それでいて洗練されたような声が聞こえてきて、私はそっとそちらを見やった。
……美しい黒髪の男の人だ。眼鏡をかけている。
この人も竜人、かしら……?
「体調はいかがですか? 何か、苦しい所などはありませんか」
「え、っと……、はっ! そういえば、私、倒れちゃったんですよね?! 思い出した……!」
「ええ。使用人のララさんがすぐにご当主様に伝えてくれて、それで俺が来たんです」
俺が来た?
首を傾げた私に、彼は胸に手を当てながらゆっくりとお辞儀をした。
「初めまして、俺はエリック。ブレイアム公爵家に仕えている、医者です」
──お医者様!
私は目を見開くしかなかった。そして、頭の中ではある意味の納得が。
そうか、だからこの人がここに呼ばれたのね。私の体調を見に……。
「あの……、私はなぜ突然倒れたんでしょう? それまで体調がよくなかった。ということもありませんでしたし……」
そうだ。まずはそこだ、気になるのは。
私の質問に、エリック様は椅子に座り直しながら説明してくれる。
「簡単に言えば、マナの濃度のせいですね」
「マナ……? マナって……」
あの、空気中に流れている魔力の一部だったか。
「ここ、竜人族の国ではそのマナの濃度が特段高いんです。人間の国とは比べ物にならないくらい。その濃度の違いがあなたの体に負担になったのでしょう。普段とはまるきり違う濃度で空気を吸い続けたんですから」
なるほど。マナは濃度が濃すぎると人間の身体には毒となる……と。
「そうなんですか……? ということは、私はこの国に居る以上……」
ずっと苦しい状態が続くのではないか。そう思った私に、エリック様は「そこは安心してください」と笑顔で言ってくれた。
「人間が竜人国でも快適に暮らせていけるようにと作られた特効薬があるんです。それを飲めば、この国でも問題なく暮らしていけますよ」
「ほ、本当ですか? よかった……」
安堵の息を漏らした私に、エリック様が同調するように微笑んでくれる。
……落ち着いていて、優しげな風貌の方だ。まるでウィルフレッド様とは大違い。
そこまで考えて首を横に振った。いけないいけない、人を比較するようなこと言っちゃ!
「ただし、この薬を服用するのなら、定期的に俺の診断を受けなければなりません。何せ、まだ開発されてそんなに経ってない薬ですからね。経過観察は怠らないようにしなければ。……それは、大丈夫ですか?」
「は、はい! 大丈夫です!」
思わず元気のよい返事が出ると、エリック様は一度目を丸くした後、くすくすと楽し気に笑ってくださった。
綺麗なお顔の方にそんな笑みを向けられたものだから、私の心はきゅんっ、と少し跳ね上がる。
「では、本日からはこちらの飲み薬を。最初は副作用などに悩まされることがあるかもしれませんが、何かあればすぐ俺のところまで知らせに来てください。使用人の方にも、そうしていただけるようにお願いしてあります」
「何から何までありがとうございました……!」
「いえいえ。これが仕事なので」
すると、部屋の外からどたどたと誰かが走っている音が聞こえた。
何かと扉の方向を見た瞬間、それはバンッ!! と力強く開かれる。
「セルマちゃん、大丈夫かい?!」
「ご、ご当主様……?! それに、夫人まで……!」
心底慌てている様子の夫妻の登場にびっくりしてしまう。
そしてそのままベッドに来て、私の手を握ってくれた。公爵家の当主が私の手を……。考えただけでもくらっと来そうな光景である。
「アルヴィス様。オーレリア様も。セルマ様はようやく目を覚ましたところなのですから、あまりご無理をさせてはいけませんよ」
「あ、ああ、そうだな……。いやはや、君の冷静な判断にはいつも助けられているよ、エリック。おかげで未来のお嫁さんを失わずに済んだ」
「本当にそうね。あなた」
(未来のお嫁さん……)
それってまあ、多分、私とウィルフレッド様のことなんだろうけど。
どうしても、今の私にはそんな気が起きなかった。だって、ご当主様たちですら顔を見に来てくれているのに、彼はちっとも──。
「ほら、ウィルフレッド。そんな所に突っ立っていないでお前もこちらへ来なさい」
──えええ?! 来てたの、ここに?!
慌ててそちらを見れば、確かにウィルフレッド様のお姿が。
私はひそかに感動していた。いえ、感心といった方がいいかしら。
あんなに頑なな態度だった彼が私の見舞いに来るだなんて。
両親に促され、ウィルフレッド様はずいと私の前に出てくる。
目と目が合う私たち。
「…………」
ウィルフレッド様は私の様子を見て……何だろう? なんだか、とても複雑そう~……な顔をして。
そんな時間を数秒、いえ数分? 続けていたところ。
彼の口から解き放たれたのは。
「──ふん。この程度のマナにも耐性がないなんて。所詮、弱弱しい民族である人間の娘だな」
まかり間違っても労りの台詞などではなく。
本当に、こんなことを言ってのけた。
目の前がくらりと遠くなる。
ああ……この方は、私の番と呼ばれるお人は……、人間だからといって、体調の悪い者を労わる仕草さえしないのね……。
「ウィルフレッド! お前、番になんてことを言うんだ!」
ご当主様からの厳しい叱責が入るが、彼はどこ吹く風。全く気にも留めていないようである。
「薬も飲んで、元気になったんでしょう? ならもう見舞いの必要はありませんね。僕は下がらせていただきます」
「まぁ! ウィルフレッド、あなたも彼女の番ならば、本当は心配でたまらないんでしょう?! せめて手を握ってあげたりとか……!」
「それは父上がやってらっしゃるではありませんか。それでは」
いつものように、私を置いて出ていくウィルフレッド様の背中。
なんだか彼とはあまりしっかりと顔を合わせた機会がないように思えるわ。気のせいかしら。
「……息子がすまない……」
ご当主様の申し訳なさそうな声が聞こえてくる。慌てて「お気になさらないでください」と言うが、彼の表情は晴れないままだ。
「しかし、ここまで頑なな姿勢になるのは……やはり、ヴィオラが原因なのか……?」
「……」
「……ウィルフレッドには私からまた改めて話をしよう。セルマ城、あなたは今は身体をどうか休めてくれ」
すっとご当主様がその場を立つ。夫人も並んで立った。
「ひとまずは、薬を使いながらこの国の空気に慣れること。いいね?」
「はい、ありがとうございます」
「エリック、あとは頼んだよ」
「はい」
「お大事に」とそう言いながら、お二人が部屋から出ていった。
少しの沈黙。
(あとは頼んだよ、と言われましても……! 何を話したらよいのか……)
「あの、セルマ様」
「はい?!」
びくう! と肩が跳ねる。いくらなんでもびっくりしすぎよ、私!
「セルマ様は……、ウィルフレッド様の「運命の番」なんですよね?」
言われた言葉にきょとんとする。
「ええ、そうですね」
私の答えに、エリック様は暫し何かを考えこんでいるかのような表情になる。
なんだか話しかけずらくて、その間、黙ったままでしたけれど。
「セルマ様」
「はいっ?」
ぎゅっと突然手を握られるからびっくりしてしまったわ。
困惑している私を他所に、エリック様が真剣な表情でこう言ってくる。
「困ったことがあれば、いつでも。俺のところに来てくださいね」
「は、……はぁ、……?」
どういう意図の言葉なのだろう……。
私は手を握られたまま、暫し固まることしかできなかった。
1,669
あなたにおすすめの小説
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。
※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡
番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
かつて番に婚約者を奪われた公爵令嬢は『運命の番』なんてお断りです。なのに獣人国の王が『お前が運命の番だ』と求婚して来ます
神崎 ルナ
恋愛
「運命の番に出会ったからローズ、君との婚約は解消する」
ローズ・ファラント公爵令嬢は婚約者のエドモンド・ザックランド公爵令息にそう言われて婚約を解消されてしまう。
ローズの居るマトアニア王国は獣人国シュガルトと隣接しているため、数は少ないがそういった可能性はあった。
だが、今回の婚約は幼い頃から決められた政略結婚である。
当然契約違反をしたエドモンド側が違約金を支払うと思われたが――。
「違約金? 何のことだい? お互いのうちどちらかがもし『運命の番』に出会ったら円満に解消すること、って書いてあるじゃないか」
確かにエドモンドの言葉通りその文面はあったが、タイミングが良すぎた。
ここ数年、ザックランド公爵家の領地では不作が続き、ファラント公爵家が援助をしていたのである。
その領地が持ち直したところでこの『運命の番』騒動である。
だが、一応理には適っているため、ローズは婚約解消に応じることとなる。
そして――。
とあることを切っ掛けに、ローズはファラント公爵領の中でもまだ発展途上の領地の領地代理として忙しく日々を送っていた。
そして半年が過ぎようとしていた頃。
拙いところはあるが、少しずつ治める側としての知識や社交術を身に付けつつあったローズの前に一人の獣人が現れた。
その獣人はいきなりローズのことを『お前が運命の番だ』と言ってきて。
※『運命の番』に関する独自解釈がありますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる