ハラヘリヴィーナス

雅誅

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【47】2006年6月8日 時間・場所・天候不明。中年と青年②(レン視点)。

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「・・・すみません」

「すみませんじゃ、済まねぇだろぉがぁ!!!」

ダァン!!!

先輩と呼ばれる中年が思いきり机を叩くとタサキは萎縮して何も言い返せなくなってしまった。中年は萎縮したタサキをよそに慣れた手つきで煙草に火をつけ吸い始める。


《ヤニ臭い》



「でよーオマエ、2000万工面できるんだよなぁ?あぁ??」


「ちょ・・・!ちょっと待ってください!ボクが全額払うんですか!!?」


騙された2000万を肩代わりしろという無茶な話にタサキはたまらず結構な声量で聞き返した。


「当たり前だろぉがぁ!!ボクちゃんが払わないでいったい誰が払うんでちゅかよぉおお!!!」

ダァン!ダァン!!


思いのほか部下に声を荒らげられて腹を立てたのか、中年はくわえタバコをしながら今度は両手で机を叩く。


「「「 ギャ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ! ! ! 」」」

パーテーションの外から下卑た笑いと歓声が巻き起こりタサキは周りの雰囲気に呑まれてうつむいてしまった。


《しかし・・・、この中年や角刈りモアイもそうだけど、ある程度年齢を重ねた男というのは威嚇行為として机を叩くのがデフォルトな生き物なのかな?》



短絡的で実に嘆かわしい陳腐なプライドの保ち方に私は辟易(へきえき)する・・・。お祖父様は世間一般から外れてるとして私は一般男性というモノがよく分からなかった。これまでの人生で一般男性と接したことがほぼ皆無なので私の中で中年男性に対するイメージが底知らずで悪くなっていく。


若い護衛や執事はにいたが、お祖父様や丹加部さんの教育がしっかり行き届いているせいか、必要以上の会話はしてくれなかった。そもそも護衛は20代や30代が多くそこまで中年という感じはしない。



執事は40代以上が多いが声を荒げている姿なんて見たもことなかった。ただ、私が見ているのは仕事中の彼らなので、プライベートでどういう言動をしているのかまでは知らない。もしかしたら、この中年みたいなヤツも中にはいるのかもしれないと思うと少し悲しい。



《一般男性のもっと良いサンプルに出会ってみたい。・・・お??》



うつむいていたタサキは顔を上げ意を決したように口を開いた。


「そ、そもそもあれは先輩がボクに譲った案件ですよね?でしたら先輩もせめて半分ッ!いえ、1/3でも結構ですので用立ててもらえませんかッ!?」



「「「 ブーーーーブーーーー!ヒャ ハ ハ ハ ハ ハ ! ! 」」」

ピーー!ヒューイッ!!


パーテーションの外からブーンイングや煽りの指笛らしき音が聞こえてくる。


「おいおいおいおい、待て待て待て待て・・・俺のせいかよッ!?」

「当たり前じゃないですか!ボク1人だけが責任を負わされるなんて不公平ですよ!も、もし出してくれないのなら・・・社長に報告させてい・・・グァ!!??」

鈍い音と共にタサキが床に倒れ込んだ。中年がタサキの顔面を力の限り殴りつけたのだ。


タサキは床に倒れ込み鼻を抑えている。

「なぁおい。ちょっと落ち着けよ・・・な?」

「あ・・・・あ・・・鼻血が・・・」

中年視点から見下ろすタサキは出血が酷くて会話どころではなかった。しかし、殴った中年はそんなことお構いなしに喋り続ける。



「俺ぁ何つった?あ?『大口を譲ってやるからどうするかはお前が最終的に判断しろ』って言ったはずだよなぁ?だいたい俺ぁ、どうしておまえに大口案件譲ってやったんだっけか?ん?」


「ア・・・ガ、ングッ」

「誰かさんがノルマをこなせないって泣きついてきたからだよなぁ?ああぁ!!?」

「グフッ!・・・ウ゛ッ!?・・・ゲフッ」


タサキはポケットからティッシュを取り出そうとしたが中年は質問に答えないタサキに激昂し今度は腹に蹴りを入れ始めた。部下は為す術なく倒れ込んだまま片手を鼻、もう片方の手は腹にそえて身を守る。


「んでよぉ!?最終的に融資を決めたのはテメェの判断なんだよなぁ!?何か俺が間違ってんのかよぉお!!」


蹴られている間、パーテーション内に腹を蹴る鈍い音とタサキの身体が机や椅子に当たる音が響き渡る。


《金貸し屋のシステムってよく分からないけど、この闇金あがりの金融屋はそんな大口を平社員にやらせてるのかな?イヤ、そうか・・・。なるほど、これってたぶん》


中年の記憶のため私は為す術もなくタサキが蹴られるのを見続けていた。

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