俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

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らぶこめ

第百四十二話 答え

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 人は幸せになるために生きている。
 幸せとは己が思うがままに生きること。
 自らに由って生きる。
 幸せに成るため。
 俺は差し出された菩薩の手、くせるの手を握った。
 ドクンッ鼓動が跳ね上がった。
「うごおおおおおおへぶへぶへぶ」
 俺に蓄積された毒素。
 妬み失意恨み辛み憎悪後悔。
 血液がいつもより強く体中を駆け巡り体中に沈殿する毒を掻き集めていく。
 デトックス効果。
 体中から汗を流して体から悪い毒素を流し出し、体を蘇らせる。
 それと同じだ。
 心の膿を全て吐き出し天に昇るのに相応しい穏やかな心に蘇らせる。

 心と体、肉体と精神は別では無い。
 肉体は精神に影響を与え、精神は肉体に影響を与える。
 肉体を象徴し精神の象徴ともされる生命の水であり貴き水、血。
 それが体中を高圧洗浄を行うように体中を駆け巡り、四苦八苦の生き地獄を廻り浮き出た心にこびり付いた毒を洗い流していく。
 心が生まれて感じたことが無いほどに浄化されていくのを感じる。
 子供じゃこの気持ち味わえない。
 平穏無事に生きてきた奴じゃこの気落ちは味わえない。
 落ちて汚れきった奴だからこそ味わえるこの浄化感。
 いってしまい、そのまま天にいってしまいそう。
 だが巡るだけじゃ何にもならない。
 後はあれと同じで吐き出したとき最高のエクスタシーを味わえる。
 体中の毒素が集まっていき、一点に溜まって昂ぶっていく吐き出すだけ。
 俺の場合は額の中央、そこからまるで若葉が芽吹くように盛り上がっていく。
 血に由って集められた心の澱が濃縮され膨れ上がっていく。
「うごご」
 破裂するまでもう少し。
 達するまでもう少し。
「へびゅぶん」
 浄改感。
 体中に澱った毒が吐き出される快感は精子を吐き出す何かとは比較にならない。
 処女膜をぶち破るかの如く血管を皮膚をぶち破って血が噴き出した。
 天に昇るため体の毒を全て吐き出し心清らかに、噴水のように吹き上がった血が開いて蓮華の華となる。
「それが貴方の華なのね。
 誰よりも黒く染まり、誰よりも赤が際立つ綺麗な華」
 くせるはこの時だけは菩薩で無く芸術を愛する者の顔でうっとりとする。
なあ、知ってるか?
 握られた手。
 掬い上げることも出来るなら。
地に引き摺り込むことも出来るんだぜ。
澱った全てを吐き出したかに思えて僅か極点の毒がくせるの顔を見て細く笑む。

「えっ!?」
 握りあった手と手。
 くせるが俺を天に救い上がるより早く、俺はくせるを地に引き墜とした。
 天におわす菩薩の如く全く隙のなかったくせるが見せた一瞬の隙を付いて俺が手を引き。
 くせるは俺に引き寄せられる。
 右手でくせるを引いて、左手で額に咲いた蓮華を引き抜き。
 くせるの柔らかそうな首筋に突き立てた。

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」
 今まで菩薩のような穏やかだったくせるの顔が醜く歪む。
「どうだ? 俺の人生を凝縮した毒の味は?」
 僅か十かそこらの人生では味わえない人生の苦さ。子供にゃ早い。
「どうしてなんで?
 私は助けようとしただけ。
 救おうとしただけなのに」
 くせるの顔が菩薩から年相応の少女の顔に戻って泣きじゃくる。
 その涙に濡れた顔で俺に問い掛ける。
 確かにくせるは紛う事なき俺を救世しようとしていた。
 この生き地獄から救い出そうとした。
 まさに菩薩の心。
 だが、
「鬼だからさ」
「鬼?」
「我執の鬼。
 世界中の誰もが俺を憎もうとも。
 俺だけは俺を見捨てない。
 天に還るより地獄で我に猛執する。
 この我、神だろうが悪魔だろうが奪わせない」
 虐められ世界中が敵になったと思い込み孤独に追い込まれた。
 みんなとは違う、俺は仲間外れなんだ。
 部屋に引き込まれ自問自答を深め自殺を決意したその瞬間。
 俺の中に超新星の如き爆発が広がった。
   死なないで。
 俺に呼び掛ける声が心の内から響いた。
 それは俺自身、我からの呼び掛け。
 世界の誰が敵に回ろうとも、我だけは見守っていてくれる。
 我だけは絶対に裏切らない味方。
 絶対に裏切らない味方を得て俺は強くなった。
 虐める連中全てに思い知らせ、俺は勝ちとった。
 この絶対の味方、なんで俺が裏切れよう。

 弾は残しておいた。
 俺はコンバットマグナムを引き抜くと。
 どこか超越していたくせるじゃない、年相応の泣き顔になったくせるに標準を合わせた。
 此奴は危険だ。交渉も取引も無い、倒せるときに倒す。
 それにこんな貧乏籤俺しか引けまい。
「地に落ちた菩薩、俺が天に送ってやろう」
 俺は引き金を引く。
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