俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

文字の大きさ
293 / 328
世界救済委員会

第292話 合流

しおりを挟む
 下界はだいぶ空気が和らいできたが山の上はまだ堅い。春を待ち焦がれる木々の間を縫っていく小道を三人で歩いて行く。
 ユリが言う通り天見を残しておけば時雨とのハイキングデートを満喫できたな。何気にユリは気を遣っていてくれたのか、ないない。
 こんな暢気なことを考えていられるくらい、今の所敵との遭遇はない。精々枯れ葉を踏み分ける音にときどき小動物が逃げ去っていく音が被さるくらいだ。
「あとどのくらいですか?」
 尋ねてくる天見は細身の体ながら鍛えているのか息一つ切れていない。自主的に先行して10メートルほど先にいる時雨は小鳥が羽ばたくように歩いて行くし、もしかしなくてもこの中で一番体力が無いのは俺かも知れないな。
「もう直ぐ着くはずだ」
 勾配は大分緩くなってきている。別荘地がある中腹が近い証拠だ。
 先行していた時雨が立ち止まり、片手で俺達を制した。
 俺と天見は散開して近くの木の陰に隠れて前方の時雨を見守る。
 やり過ごすか? それとも先制で倒すか?
 それにしても流石黒田、僅かな隙も無かったということか。いや早計か、まだ別荘地の住人が散策をしている可能性もある。
 だんだんと足音が俺でも聞こえるほど大きくなってきた。
 黒田の監視だったら本体に連絡される前に処理したいところだな。時雨に任せるしか無いのがもどかしいが駆け寄って足音を響かせては本末転倒。時雨なら上手く処理すると信じるしか無い。
 だんだんと時雨の緊張が高まっていくのが覗える。時雨はそっと小太刀を抜き放ち背中に構えて忍ばせる。
 踏み分ける音が大きく響き、時雨から視認できる距離になった。
 そして時雨から力が抜けるのが見て取れた。
「大丈夫だよ」
 時雨が声を出して俺達に伝える。
 一体誰だったんだと思いつつ時雨の所に駆け寄った。
「影狩か」
 黒田を監視していたはずの影狩がいた。一時も目を離さず黒田の監視をしていて欲しいところだが迎えに来て貰わなければ別荘地のどこに黒田がいるのか分からない。別荘地を不用意に歩けば見付ける前に見付けられるのが関の山。
 準備不足の人手不足だ、しょうがない。
「わざわざ迎えに来てやったんだぜ。もっと嬉しそうな顔してくれよ」
 俺が今一な顔をしているのを見られたのか影狩が言う。
 こんな顔指揮官として見せるべきでは無かったな、仕方ない。
「おおアミーゴ、グラッチェグラッチェ」
 俺は笑顔を作ると影狩に外人顔負けのオーバーアクションでハグした。
「オーケーオーケー、俺に会えて嬉しいのは分かったぜ」
「よし、案内してくれ」
 満足してくれたようなので俺は離れた。
「そっちのかわいこちゃんはしてくれないの」
「調子に乗るなよ。減棒にするぞ」
 俺は時雨の前に立って脅す。
「こわっジョークだろうが本気で怒るなよ。人の女には手を出さないよ」
「ちょと、人の女って・・・」
「いいから案内しろ」
 時雨が顔を真っ赤にして抗議し出すのを遮った。
「はいはい、こっちだぜ」
 こうして無事合流出来た俺達は黒田の元に向かうのであった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

都市街下奇譚

ホラー
とある都市。 人の溢れる街の下で起こる不可思議で、時に忌まわしい時に幸いな出来事の数々。 多くの人間が無意識に避けて通る筈の出来事に、間違って足を踏み入れてしまった時、その人間はどうするのだろうか? 多くの人間が気がつかずに過ぎる出来事に、気がついた時人間はどうするのだろうか?それが、どうしても避けられない時何が起こったのか。 忌憚は忌み嫌い避けて通る事。 奇譚は奇妙な出来事を綴ると言う事。 そんな話がとある喫茶店のマスターの元に集まるという。客足がフッと途絶えた時に居合わせると、彼は思い出したように口を開く。それは忌憚を語る奇譚の始まりだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...