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第十六話 完敗
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「お断りします」
睨み付けてくる瞳を真っ向から睨み返して宣言した。
それにしても、いきなり来たか。
早い話が俺の女に手を出すなって事だろ。二人は付き合ってはいないようだから、自分の女にはしないけど、他人に奪われるのは嫌ってことか。
それとも時雨さんが告白していないところを見ると、この男には本命は既にいる可能性が高い。その上で時雨さんはキープしておきたいってことか。
どっちにしろ身勝手な奴だ。だが、こういう嫌な奴の方がいい、時雨さんの恋路を邪魔しても心が痛まないで済む。
「即答か。
もう一度言うがこれは善意で言っている。
もう一度思い出せ、今日君はどんな目に合った?」
時雨さんとデートして、水族館で怪異に出会い美しく舞う時雨さんを再び観ることが出来た。多少待ち惚けを食らったり、多少死にかけたが、むしろそんなのは時雨さんの傍に立つ為の対価だと思っている。
払った対価に相応しい報酬を得られたかと言えば。
「素晴らしき日だったですね」
俺は卑屈でも皮肉でも無く素直な気持ちで胸を張って言った。
「はっは、そうかユガミに出会って一歩間違えば君は死んでいたかも知れないのに、素晴らしき日とはっきりと言えるか」
前埜はそれは愉快そうに笑った。笑われているのに、なぜか嫌な気持ちにならない。これがイケメンが持つ爽やかな笑いという奴か。
「そうか。君の決意は固いんだな。ならこれを渡しておく」
俺が何を出すのかと身構える中、前埜は懐から名刺を出した。
「これは?」
受け取った名刺を観ると、前埜法律事務所 弁護士 前埜 章 と携帯の番号 メールアドレスが記載されている。
此奴弁護士なのか。イケメンで頭もいいわけか。それによく見れば素人の俺でも分かるほどに仕立てのいいスーツを着ている。つまり金も持っている。
顔頭金、男が持つべき三種の神器を兼ね備えた男。
唯一の勝機は此奴が嫌な奴であることだけ。
「何か手に負えないトラブルが発生したときには、遠慮無く連絡してくれ。出来る限り力になる」
「えっ?」
力になる? 格の違いを見せ付けて諦めろと圧力を掛けるところだろ。
「時雨を支えてやってくれ」
前埜は俺に向かって頭を下げた。
その姿からは真摯な気持ちが伝わってくる。
こんな格下の学生にすら頭を下げられる。大人の男の度量と貫禄を感じてしまった。
イケメンでこれじゃ、俺の勝てる要素は皆無に限りなく近いじゃ無いか。
時雨さんの心は手に入らないと悟った瞬間であり。
それでも俺は時雨さんの傍にいたいと自覚した瞬間でもあった。
睨み付けてくる瞳を真っ向から睨み返して宣言した。
それにしても、いきなり来たか。
早い話が俺の女に手を出すなって事だろ。二人は付き合ってはいないようだから、自分の女にはしないけど、他人に奪われるのは嫌ってことか。
それとも時雨さんが告白していないところを見ると、この男には本命は既にいる可能性が高い。その上で時雨さんはキープしておきたいってことか。
どっちにしろ身勝手な奴だ。だが、こういう嫌な奴の方がいい、時雨さんの恋路を邪魔しても心が痛まないで済む。
「即答か。
もう一度言うがこれは善意で言っている。
もう一度思い出せ、今日君はどんな目に合った?」
時雨さんとデートして、水族館で怪異に出会い美しく舞う時雨さんを再び観ることが出来た。多少待ち惚けを食らったり、多少死にかけたが、むしろそんなのは時雨さんの傍に立つ為の対価だと思っている。
払った対価に相応しい報酬を得られたかと言えば。
「素晴らしき日だったですね」
俺は卑屈でも皮肉でも無く素直な気持ちで胸を張って言った。
「はっは、そうかユガミに出会って一歩間違えば君は死んでいたかも知れないのに、素晴らしき日とはっきりと言えるか」
前埜はそれは愉快そうに笑った。笑われているのに、なぜか嫌な気持ちにならない。これがイケメンが持つ爽やかな笑いという奴か。
「そうか。君の決意は固いんだな。ならこれを渡しておく」
俺が何を出すのかと身構える中、前埜は懐から名刺を出した。
「これは?」
受け取った名刺を観ると、前埜法律事務所 弁護士 前埜 章 と携帯の番号 メールアドレスが記載されている。
此奴弁護士なのか。イケメンで頭もいいわけか。それによく見れば素人の俺でも分かるほどに仕立てのいいスーツを着ている。つまり金も持っている。
顔頭金、男が持つべき三種の神器を兼ね備えた男。
唯一の勝機は此奴が嫌な奴であることだけ。
「何か手に負えないトラブルが発生したときには、遠慮無く連絡してくれ。出来る限り力になる」
「えっ?」
力になる? 格の違いを見せ付けて諦めろと圧力を掛けるところだろ。
「時雨を支えてやってくれ」
前埜は俺に向かって頭を下げた。
その姿からは真摯な気持ちが伝わってくる。
こんな格下の学生にすら頭を下げられる。大人の男の度量と貫禄を感じてしまった。
イケメンでこれじゃ、俺の勝てる要素は皆無に限りなく近いじゃ無いか。
時雨さんの心は手に入らないと悟った瞬間であり。
それでも俺は時雨さんの傍にいたいと自覚した瞬間でもあった。
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